AGAは完治できない?クリニックでの治療法や薄毛改善効果を解説

AGA治療を検討している方やすでに治療をはじめている方は、AGAは完治するのか、どのような状態を完治というのか、関心が高いはずです。この記事ではAGAの完治について解説します。

目次

AGA(男性型脱毛症)の治療をこれから始めようと考えている方や、すでに治療を始めている方の中には、そもそもAGAは完治できるのか?と疑問に思われる方も多いと思います。

完治できるのであれば何も問題はありませんが、もし完治できないとすれば、治療の目的やゴールがどこにあるのか、不安に感じたり、目標を見失ったりしてしまう方もいるでしょう。

そこで、この記事では、「AGAは完治できるのか?」というテーマを中心に、クリニックでの治療法や治療効果について詳しく解説します。

■ 本記事のサマリ

  • AGAは完治が難しい
  • しかし、治療継続で完治の状態に限りなく近づけられる
  • 効果が毛量に現れるまでには半年~1年かかる
  • 目標に達した後は、薬を減らすことができる可能性もある
  • AGA治療は早期治療の方が効果が高いといわれているため、早めの治療開始を推奨

AGAは完治しないが、治療で改善が可能

AGA治療は、年々めざましい進化を遂げています。有効性の高い治療薬の開発や、遺伝子検査を取り入れた診断法、自己毛髪再生治療など、さまざまな最新医療が取り入れられています。

しかし、こうした最新技術をもってしても、「AGAが完治した」という事例は聞きません。では、AGA治療における「完治」とはどのような状態を指すのか、AGAは完治が可能なのかを解説していきます。

AGAは完治できない

AGAは一般的な病気とは異なり、何をもって完治したといえるのか、明確な基準はありません。どういう状態を薄毛ととらえ、どういう状態になれば完治したといえるかは、人それぞれの考え方や価値観など、自己判断による部分も大きいといえます。

仮に薄毛や抜け毛の症状が改善し、AGA治療を止めても十分な毛量をキープできる状態を完治とするならば、AGA治療による症状の完治は、現実的には難しいといえます。

それは、AGA治療はあくまでも対処療法で、AGAの根本的な原因となる男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)の産生を完全に抑え、ヘアサイクルを正常な状態に保ち続けることには限界があるからです。

また、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律,旧薬事法)では、「効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止」という項目があり、「根治」、「全快する」等の表現を使い、効能効果が確実であることを保証する表現は認められない、と定められています。

これは医師法でも同様で、例えば、診断書を作成する場合、「全治〇〇日(〇〇ヶ月)の見込み」のように、あくまでも「見込み」であり、原則として将来の病気や疾患の状態を断定的に表記してはならないことになっています。

そのため、AGA治療による症状の改善は大いに「期待できる」とは言えますが、「完治できる」とまでは言い切れないのです。

AGAは完治しないが薄毛の改善は可能

AGAの治療によって、一般的な意味での完治という状態を実現するのは難しいとお伝えしてきましたが、AGA治療では、薄毛や抜け毛の症状を改善し、毛量をAGA発症前の状態に近づけ、限りなく完治の状態とすることは可能です。

実際に日本人の男性患者を対象としたAGA治療の試験で、1日あたり1mgのフィナステリドを2年間投与したグループでは68%、3年間投与したグループでは78%で薄毛の改善が認められました*¹。
また別の試験では、1日あたり1mgのフィナステリドを10年間続けて飲んでもらったところ、写真評価により99.1%の方で効果が認められています*²。
*¹ ORGANON PRO『プロペシア®錠 臨床成績
*² M. Yanagisawa et al. Long-term (10-year) efficacy of finasteride in 532 Japanese men with androgenetic alopecia. Jan 2019

また、個々のAGAクリニックなどが独自に調査した結果なども含めると、全体の7~8割近くの人が治療の効果を実感しているのは事実です。

実際にへアテクトで治療された患者様の薄毛改善率のデータを見ても、半年~1年後には85%の患者様で効果実感があったと報告されています。
また、治療期間が長いほど効果実感が上がることもわかっています。

薄毛改善のためのAGA基本解説

では、適切なAGA治療を受け、完治の状態に近づけるためにも、まずは、AGAの基本的な知識を理解しておきましょう。

AGA=男性型脱毛症

AGAとは「Androgenetic Alopecia」の略称で、男性型脱毛症を指します。直訳すると「Andro」はアンドロゲン(男性ホルモン)、「genetic」 は遺伝、「Alopecia」は脱毛となり、「男性ホルモンと遺伝によって生じる脱毛症」という意味になります。

AGAは主に男性ホルモンの影響によって起こるのですが、同じ男性でも、AGAになる人もいれば、ならない人もいます。それはAGAには遺伝的な要素も大きく関係しているため、と考えられています。

AGAは5αリダクターゼとジヒドロテストステロンが原因

AGAは男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼ(5α還元酵素)の作用によって、ジヒドロテストステロン(DHT)という強力な男性ホルモンに変換されることが直接的な原因と考えられています。

DHTには毛髪のもとになる毛母細胞の分裂や成長を妨げ、ヘアサイクル(毛周期)を短くする作用があります。本来、2〜6年あるはずの成長期が、徐々に短縮され、最終的には数ヶ月から1年程度まで短くなります。

成長期の毛髪は、毛髪全体の約9割を占めるため、成長期の髪が十分に育つことなく抜け落ちると、少しずつ地肌が露出し、薄毛や抜け毛が目立つようになるのです。

知っておくべきAGA治療の基礎知識

それでは、AGAにはどのような治療法があり、どのようにして治療が行われるのか、解説していきます。

AGA治療の目的とは?

髪の毛の量をまったく気にしないという人なら、AGA治療を行う必要性はそれほど感じないでしょうが、薄毛や抜け毛に悩み、コンプレックスを持っている人は、自分の外見に自信をなくし、QOL(生活の質)が低下することが多いといわれています。

そのため、AGA治療の目的は、発毛を促進し、抜け毛、薄毛の進行を抑えることで、外見的に髪の毛の量を気にすることなく、自信を持って生き生きとした日常生活を送れるようにすることといえるでしょう。

AGA治療は投薬治療が一般的

AGAの治療法はいくつかありますが、主に、「フィナステリド」、「デュタステリド」、「ミノキシジル」などを使用する投薬治療が一般的です。

フィナステリド(内服薬)は、AGAの原因となるⅠリダクターゼのうち、Ⅱ型の5αリダクターゼの作用を阻害し、主に抜け毛を減らすことを目的に使用します。

デュタステリド(内服薬)は、フィナステリドの効果を高めたような治療薬です。Ⅰ型とⅡ型の2つの5αリダクターゼの働きを抑制し、抜け毛を減らすとともに、ヘアサイクルを正常に近づける効果によってAGAを改善します。

ミノキシジル(外用薬)には、毛母細胞を活性化し、発毛を促進したり、ヘアサイクルの成長期を長くしたりすることで薄毛や抜け毛を改善する効果があります。

投薬治療はクリニック受診を推奨

これらの3剤は、多くのクリニックや皮膚科医などで使用されているほか、最近では、ミノキシジルの内服薬を使い、体の内側からミノキシジルの成分を毛髪に届け、AGAを治療する方法を取り入れているクリニックも増えています。

また、実際の治療では、ミノキシジル、フィナステリド、デュタステリドを単剤で使用する場合もあれば、複数の薬剤を併用して治療を行う場合もあります。

特に、発毛を促進する「攻めの効果」のあるミノキシジルと、抜け毛を抑制する「守りの効果」のあるフィナステリド/デュタステリドの併用は高い効果が期待できるため、よく処方される組み合わせです。

しかし、フィナステリド・デュタステリド・ミノキシジル内服薬は、クリニックでのみ入手でき、基本的には市販では購入することができません。

このことから、まずは市販でも手に入るミノキシジルの外用薬を利用される方も多いと思います。しかし、ミノキシジルの外用剤は発毛促進効果のみで、抜け毛の抑制はできないため、結果的に効果不十分でクリニックを受診されるケースも少なくないようです。

少しでも早く毛量を改善するためにも、AGA治療を始める際は、まず適切な治療選択のできる医師や専門家へ相談してみることをお勧めします。

なお、どの治療法を選択するかは、薄毛や抜け毛の状態、患者様の髪質や体質、アレルギーの有無、年齢、病歴などを総合的に考慮して決められます。

最近では、数種類の治療薬を組み合わせたうえ、育毛剤(養毛剤)、ビタミン、ミネラルなどのサプリメントなども組み合わせ、一人ひとりに合った、きめ細やかなオーダーメイドの治療を行うクリニックも増えています。

また、医師だけでなく、栄養士やカウンセラーなどが、食生活のアドバイス、心理的な不安や悩みの相談を受けるなど、間接的な原因にもアプローチして治療をサポートするクリニックもあります。

効果が実感までは最短4~6ヶ月掛かる

AGA治療の効果が実感できるのは、個人差があるため一概にはいえませんが、早くても4ヶ月、通常は6ヶ月程度、人によっては1年くらいかかる場合もあります。

しかし、仮に効果が目に見える形で感じられないとしても、毛母細胞の分裂は促進されており、毛根部はしっかりと成長しているため、AGAは改善に向かっているケースが多いです。そのためAGA治療では、根気強い治療継続が重要といえます。

AGA治療の注意点

AGAは治療を続ければ、個人差はあるものの、何らかの改善が十分に期待できます。しかし、治療において注意しなければならないこともあります。ここでは、AGA治療の注意点について説明します。

治療の目標を明確に設定する

AGAは一般的な病気とは異なり、治療の目標をどこに置くかは、医師が一定の基準を示しはするものの、最終的にはそれぞれの患者様が、どういう毛髪の状態にしたいのか、自分の頭髪に対する満足度によって決まるといえます。

「これ以上薄毛や抜け毛が進行しなければ良い」という人もいれば、「若い頃のようにフサフサとした毛量に近づけたい」という人もいます。

 まずは、患者様ご自身が、治療によって自分の毛髪の状態をどのようにしたいのか、理想のヘアスタイルや頭髪の生え具合などの明確な目標設定が必要です。医師はその要望を踏まえ、最適な治療法や治療期間などを専門的に判断して治療を行います。

AGA治療は継続が必要|勝手に中断しない

前述の通り、AGAの治療効果を感じるには、早くても4ヶ月、平均的には6ヶ月程度の長期間を要します。風邪のように薬を服用し、4〜5日安静にしていれば治る、というような短期間で治癒する病気とは異なります。

 そのため、「治療効果がすぐに現れない」、「期待したほどの効果が実感できない」などと早合点し、治療をやめてしまうと、もとのAGAの状態に戻り、薄毛や抜け毛が再び進行するのは確実です。

効果を実感するには、治療を始めた時点から、一定の間隔で頭髪の写真を撮り、時系列的に毛髪の状態を確認したり、マイクロスコープなどで頭皮の画像を拡大して髪の生え具合を目で見たりして、たとえわずかであっても、治療の効果を感じられるような工夫が必要です。

また、ご自身でも昔の写真と比較したり、家族や友人などに頭髪の写真を撮ってもらったり、経過を確認するなど、頭髪の状態を定期的に確認するのも良い方法です。特にAGAの症状が起こりやすい頭頂部や前頭部を中心に比較してみると良いでしょう。 

治療の状況によって薬の量は減らせる

治療を続け、効果が実感できるようになれば、その後の薬の量を減らすことも可能です。単剤での治療であれば、用量を減らしたり、多剤での治療であれば、治療薬の数を減らしたり、別の治療薬に変えたりします。

しかし、急に薬の量を減らすと、再び薄毛が進行して元のAGAの状態に戻ってしまう危険性があるため、どのくらいの効果が現れた時にどの程度の減薬を行うかは、医師のアドバイスを受けた上で選択するようにしましょう。基本的には、患者様が望まれる毛髪の状態になった段階で、その状態を維持するために必要な最小限の治療に変更されることが多いです。

また、AGA治療は原則として自由診療のため、保険適用されません。治療効果に満足でき、薬の量を減らすことができれば、経済的な負担も軽くなるでしょう。

AGA治療を成功させるために必要なこと

AGA治療の効果を上げ、治療を成功させるためには、いくつか考慮すべきポイントがあります。ここでは治療を成功させる実践的な方法を解説します。

AGA治療は必ずクリニックで行う

現在では、薬局やドラッグストアなどでミノキシジル製品を購入できるほか、ネット販売や個人輸入などさまざまな方法で治療薬を手に入れることができます。

市販のミノキシジル製剤は第1類医薬品に指定されており、基本的には、薬剤師が使用する人の年齢や他の医薬品の使用状況などについて、確認したうえで販売することになっています。

しかし、現実には、これらのルールを守らず、店頭やネット通販などで安易に商品を購入し、正しい使い方をしなかったり、禁忌事項を守らず使用したりして、十分な効果が得られないどころか、逆に副作用などの健康被害が生じるケースも少なくありません。

また、日本国内では医師の処方が必要な医療用医薬品を、個人輸入などで手に入れて使用するなど、重篤な健康被害につながりかねない違法な行為をする人もいるようです。個人輸入は、治療の効果が出ないだけでなく、重篤な副作用が生じる恐れや、場合によっては命の危険もあるため、決して行ってはいけません。

治療効果を確実なものとし、安全に治療を行うには、AGAクリニックや皮膚科医など専門の医療機関を受診することを強くおすすめします。

また、医師が治療前に治療法や効果、副作用などの情報をしっかりと説明し、患者さんが治療に納得し、同意した上で治療を始めることを「インフォームドコンセント」(Informed consent)といいます。

インフォームドコンセントをしっかり行っている医師やクリニックほど、患者様と同じ目線に立ち、良心的で安心して治療が受けられるといえますので、クリニックを選択する際の参考にしてみてください。

また、最近では、無料カウンセリングやオンライン診療で相談できるクリニックも増えています。相談しやすさや信頼性を確認する意味でも、複数のクリニックや皮膚科医などに問い合わせてみることをお勧めします。

できるだけ早くAGA治療をはじめる

AGAが疑われる場合は、できるだけ早く治療をはじめることが大切です。これは髪のもととなる毛母細胞の数や分裂回数に限りがあるためです。

ヘアサイクルの回数は、一生のうち15〜20回といわれています。
正常な毛髪は、生えてから抜けるまで約2年半〜6年半程度で1回のヘアサイクルを終えます。しかし、AGAの場合、成長期のヘアサイクルが短くなるため、1回のヘアサイクルの期間が正常な髪に比べ、かなり早く終わってしまいます。

ヘアサイクルが15〜20回に達し、髪の寿命が尽きてしまえば、その後、髪が生えてくることはありません。毛包が完全に消滅して、いわゆる禿げ頭(つるつる、ピカピカ)の状態になります。

この状態になると、自発的な発毛は期待できないため、植毛を行うか、カツラなどで頭を隠すなどの方法でしか対処できなくなります。

できるだけ早い段階でAGA治療を行うことは、1回のヘアサイクルの期間を伸ばすことにつながり、その分、毛髪を地肌に長くとどめておくことができます。さらに一生を通して、薄毛や抜け毛の進行を改善でき、いわゆる禿げ頭になる時期を遅らせることもできるのです。

治療の補助的なケアとして日常生活でも薄毛対策を

AGA治療の補助的な役割程度の効果にはなりますが、AGA改善のためには、治療と合わせて、次のようなことを心がけると良いでしょう。

頭皮を清潔に保つ

ヘアケアの第一歩は、頭皮を健康、清潔に保つことです。AGAの人は頭皮が脂っぽい人が多いので、できるだけ毎日、しっかりと洗髪しましょう。洗髪による抜け毛を心配して、髪を洗うことをためらうのは逆効果です。

頭皮のマッサージをする

頭皮の血行を良くすることも、髪の発育のためには大切です。頭皮のマッサージによって、髪の毛のつけ根にある毛乳頭へ栄養が送られ、毛母細胞の働きが活発になります。

また、マッサージブラシや、スカルプローラーなど、市販のマッサージグッズなどを利用するのも良いでしょう。

生活のリズムを整えて正しい食生活を送る

規則正しい生活習慣を送らなければ、どんな治療を行ったとしても効果は半減します。十分な睡眠をとることや、動物性脂肪の摂りすぎに注意し、髪が育つ栄養の素となるタンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランスよく摂りましょう。インスタント食品の食べすぎも要注意です。

ストレスを溜めない

ストレスは自律神経を緊張させ、頭皮の毛細血管を収縮させるため、毛母細胞へ酸素や栄養が十分に届けられなくなります。またストレス状態が長く続くと、神経が高ぶり、睡眠が浅くなったり、不眠症を引き起こしたりして、生活リズムの乱れにもつながります。

AGA治療は完治が目的ではない!まずは目標設定から

AGAは完治の基準が明確に定義されているわけではなく、治療を受ける人(患者様)の考え方や価値観、どのような髪の状態にしたいのか、などの要望も踏まえて、総合的に治療の方向性が決められるものです。

そのため、完治を目標に置き換える必要があるといえるでしょう。AGA治療で大切なことは、絶対的な頭髪の基準を追及するのではなく、それぞれの人に合った目標を設定し、その状態に近づけるための治療を行うことです。

また、AGA治療は効果を実感するまで、比較的長い期間を要します。そのため、継続して治療を行うことが大事です。治療を途中で断念したり、ブランクを空けたりすると目標達成は難しいといえます。人それぞれの明確な目標を設定し、適切な治療を継続して行うことで、はじめて治療の効果に満足できるといえるのです。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

※本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。

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