AGA治療薬の副作用でED(勃起不全)に?性欲低下の確率や原因

「AGA治療をするとEDになるって本当?」「EDになったらどうするべき?」とお悩みの方に向けて、この記事ではミノキシジルやフィナステリド、デュタステリドでEDになる可能性があるのか、なった場合はどう対処すべきなのかを解説しています。

目次

「AGA治療をするとEDになるって本当?」
「AGA治療でEDになっても対処できる?」

AGA治療を行いたいと思ってはいても、ED(勃起不全)の副作用が気になって治療に踏み出せない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、AGA治療薬で主に使われている3つの薬のうち、それぞれどれくらいの確率でEDの副作用が起こるのか、またEDになったときはどう対処したらよいのかなどを解説します。

■ 本記事のサマリ

  • AGA治療薬のうち、フィナステリドとデュタステリドはEDになる可能性がある
  • ただし、ED発症割合は1%以上程度
  • どうしてもEDが心配な場合は、EDの副作用がないミノキシジルの利用を推奨
  • EDが気になりだした場合、フィナステリド/デュタステリドとED治療薬は併用が可能
  • ただし、ミノキシジルはED治療薬と併用すると危険なため注意

AGAとEDは男性にとって深刻な悩み

AGAとEDは、ともに男性にとって悩みの種となりやすいものです。日本国内でAGAとEDに悩まされている方は、それぞれ約3人に1人いるといわれています。なかには、病院に行くことに抵抗があり、診察を受けられていない方もいるかもしれません。

AGAは見た目が変化するため人前に出るのが嫌になったり、薄毛になっているというストレスで気分が落ち込みがちになったりするでしょう。EDの場合は、パートナーから何か思われていないか、性欲がないと思われるのではないかといった心配を抱えたりしてしまうことがあります。

AGA(男性型脱毛症)とは

AGAとは、男性型脱毛症とも呼ばれており頭頂部や生え際の薄毛を特徴とする脱毛症のことです。20代では約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降になると40%以上の方がAGAを発症するといわれています。

AGAを発症する要因として深く関わっているのがジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンです。ジヒドロテストステロンは、テストステロンという別の男性ホルモンに5αリダクターゼ(5α還元酵素)が働くことで作られます。

ジヒドロテストステロンがアンドロゲンレセプターと呼ばれる受容体に結合すると、脱毛を促進する因子が分泌されるため、毛母細胞がうまく働かずに薄毛が進行してしまうのです。

髪の毛は長く太く成長していく成長期、成長が止まる退行期、抜ける準備をする休止期というヘアサイクルをくり返しています。毛母細胞の働きが弱まると成長期の期間が短くなるため、髪の毛は十分に育つことができません。

細くてコシのない髪の毛が増え、さらに通常よりも早く休止期に突入するため、すぐに抜けてしまい髪の毛のボリュームが減っていきます。

ED(勃起不全)とは

EDとは、満足な性行為を行うのに十分な勃起を得られない、もしくは勃起を維持できない状態のことです。患者数は年齢が上がるにつれ増えていく傾向があり、55~59歳の男性の約40%、70歳以降になると約70%がEDを患っているといわれています。

EDはAGAのように特定のものが原因で起こるものではなく、さまざまな要因により引き起こされるものです。たとえば、以下のような要因がEDのリスクを上げるものとして知られています。

  • 加齢
  • 糖尿病、肥満、高血圧
  • 運動不足、喫煙
  • テストステロンの低下
  • 心理的な要因
  • 薬の副作用

加齢はEDのリスクを上げるもっとも大きな要因です。男性は年齢を重ねることで自然とEDになりやすくなるといえます。また、疾患も影響すると言われており、糖尿病を発症している方の35〜90%でEDが見られることも報告されています。

AGA治療に使用される主な薬は3種類

AGA治療におもに使用されているのは、ミノキシジルとフィナステリド、デュタステリドの3つの薬です。日本皮膚科学会ガイドラインが公表している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」では、ミノキシジルの外用薬、フィナステリドやデュタステリドの内服薬はいずれも推奨度A(行うよう強く勧める)に分類されています。

また、ミノキシジルの内服薬も、ガイドライン上では推奨度が下がるものの、海外を中心に安全性や有効性が認められていることから、クリニックでは広く用いられている薬です。

ミノキシジルの服用でEDにはならない

ミノキシジルの内服薬はクリニックでしか処方されませんが、外用薬は薬局やドラッグストアでも気軽に購入できます。AGA治療の一歩目として利用される方も多いミノキシジルは使用するとEDになる可能性があるのでしょうか。

ミノキシジルとは

ミノキシジルとは、血行を促進したり乱れたヘアサイクルを正常に戻したりすることで発毛を促す治療薬です。もともとは血圧を下げる薬として開発されていましたが、服用した方の多くで発毛が見られたことから、現在は降圧薬ではなくAGAの治療薬として認可を受けて使用されています。

世界初の発毛薬であり、日本だけでなく世界中でAGAの治療に使われている成分です。外用薬と内服薬の2種類があるため、生活スタイルに合わせて治療法を選ぶことができます。

ミノキシジルの副作用でEDになることはない

ミノキシジルの副作用にEDはありません。そのため、EDが気になる方でも安心して服用を続けられます。ただし、ED以外に次のような副作用が報告されています。

  • 頭皮の発疹・発赤
  • ふけ
  • 塗布部位の灼熱感
  • 頭痛
  • めまい
  • 手足のむくみ
  • 多毛症

厚生労働省が行ったミノキシジル5%外用薬の副作用調査に関する報告では、ミノキシジル外用薬を使用した3,072例中271例(8.82%)で378件の副作用が見られました*。
そのうちもっとも多かったのが、皮膚トラブルに関する副作用です。378件中275件はかゆみや発疹などが占めています。
*厚生労働省「ミノキシジルのリスク区分について

内服薬の場合、副作用の正確な発現頻度については不明ですが、外用薬と比べて多毛症の副作用の頻度が上がりますが、EDは副作用に挙がっていません。

フィナステリドは1%未満でEDになる可能性がある

フィナステリドは、ミノキシジルとはまた違った角度からアプローチすることで発毛を促します。プロペシアという商品名でも有名です。

フィナステリドとは

フィナステリドは、AGAの原因となるジヒドロテストステロンの産生を阻害することで抜け毛の進行を食い止めます。

ジヒドロテストステロンが作られるためには、5αリダクターゼという酵素が必要です。5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型の2種類があり、フィナステリドはそのうちⅡ型の5αリダクターゼを阻害します。

1日に1回の服用で済むため、飲み忘れやすい方や職場や家族には内緒で治療したい方にも向いているでしょう。市販はされておらず、購入するためにはクリニックの受診が必要です。

フィナステリドは副作用にEDがあるものの、その確率は低い

フィナステリドは、副作用でEDになる可能性があります。

ただし、確率としてはかなり低いのが現状です。
プロペシア錠を製造販売しているオルガノン株式会社によると、EDの副作用は服用した方の1%未満でしか確認されていません。そのため、EDの副作用を過度に心配する必要はないでしょう。

EDのほかには、次のような副作用も報告されています。

  • 射精障害
  • 精液量減少、精液の質低下
  • 性欲減退
  • じんましん
  • めまい
  • 抑うつ症状

射精障害や精液量減少はEDと同じく1%未満の方で見られています。性欲減退は1~5%以上、そのほかの副作用については頻度不明となっています。

デュタステリドも低確率でEDになる可能性がある

デュタステリドは、日本では2016年から販売が開始された比較的新しいAGA治療薬です。フィナステリドよりも高い効果が出るとして期待されています。

デュタステリドとは

デュタステリドもフィナステリドと同じく、AGAの原因となるジヒドロテストステロンの産生を阻害する治療薬です。ジヒドロテストステロンを作るのに必要な5αリダクターゼが作られないようにすることでAGAの進行を抑えます。

フィナステリドと違うのは、Ⅱ型だけでなくⅠ型の5αリダクターゼも阻害してくれる点です。より確実に5αリダクターゼの働きを抑えるため、フィナステリドよりも高い効果が得られると期待されています。

デュタステリドも副作用にEDがあり、確率は1%程度

デュタステリドは副作用でEDが起こる可能性がある治療薬です。

ザガーロを製造販売しているグラクソ・スミスクライン株式会社によると、1%以上の方でEDが見られたと報告されています。性欲減退も1%以上の方で見られました。

フィナステリドと同様に、EDになる可能性はあるものの頻度としては高くありません。そのため、EDの副作用を恐れすぎる必要はないと考えられます。

EDが心配な場合はミノキシジルのみで治療

AGA治療によく用いられる薬のうち、フィナステリドとデュタステリドではEDの副作用が報告されています。確率としては1%前後ですので、めったに起こるものではありません。

実際、ヘアテクトで治療された2,452人の患者様のうち、性機能障害に関する副作用を訴えたのは6名(0.2%)という結果も出ています。

しかし、EDは心理的な要因でも起こりうるものです。
「もしかしたらEDになるかもしれない」と心配しながら服用することが引き金となってフィナステリドやデュタステリドの副作用とは関係なくEDを発症してしまう可能性もゼロではありません。

また、フィナステリドやデュタステリドの副作用としてEDになった場合、服用を中止した後も症状が持続したという報告もあります。どうしてもEDの副作用が心配な方は、ミノキシジルでの治療を行うと安心です。

フィナステリド/デュタステリドとED治療薬の併用は可能

では、もしもAGA治療を行うことでEDが気になり始めたらどうしたらよいのでしょうか。

結論としてはED治療も同時に進めていくことになります。しかし、AGA治療で使用している薬の種類によってはED治療薬との飲み合わせが悪いことがあるので注意してください。

ED治療薬について

EDの治療は、薬の服用やカウンセリングなどによって行っていきます。薬を使用する場合は、ホスホジエステラーゼ5阻害薬という種類のものを使うことが一般的です。勃起は、海綿体に血液が大量に集まることで起こります。

ホスホジエステラーゼ5阻害薬は血流を悪くする原因となる物質の働きを抑えることで海綿体への血液流入量を増やし、勃起しやすくするものです。おもに次の3つの薬が知られています。

ED治療薬とその特徴

フィナステリド・デュタステリドは併用が可能

フィナステリドやデュタステリドは、ED治療薬との併用が可能です。そのため、もしAGA治療中にEDが気になるようになってきたとしても、シルデナフィルやバルデナフィルなどを使った治療を行うことで、AGA治療を断念することなく継続できます。

また、もともとED治療を行っている方であっても、フィナステリドやデュタステリドなら併用して問題ありません。ただし、フィナステリドやデュタステリドの効果が出るまでにはED治療薬の併用有無に関わらず、およそ6ヶ月かかります。

その後も継続した服用が必要になることも少なくありません。ED治療薬と併用できるとはいえ、ED治療薬と長年の付き合いになる可能性もあることは頭に入れておきましょう。

ミノキシジルとの併用は注意が必要

ミノキシジルとED治療薬は併用に注意が必要です。併用によって血圧が下がりやすくなり、めまいや頭痛などの副作用が起こりやすくなる可能性があります。これは、ミノキシジルにもED治療薬にも血管を拡張する働きがあるためです。

併用によって過度に血圧が下がる可能性があるので、併用は控えるようにしてください。もしミノキシジルを使用している方で、同時にEDが気になっている場合は、ミノキシジルを使用していることを必ず医師に伝えるようにしましょう。

ED(勃起不全)との関係を理解してAGA治療を始めよう

AGA治療薬としてよく用いられている薬のうち、フィナステリドとデュタステリドではEDの副作用が報告されています。フィナステリドやデュタステリドでEDになった場合、人によっては服用を中止しても症状が継続することもあるようです。

1%前後の方でしか見られない副作用ですが、気になる方はEDの副作用が報告されていないミノキシジルの使用を検討するとよいでしょう。ED治療薬とAGA治療薬には飲み合わせが悪いものもありますので、EDを診療しているクリニックで現在使用している薬の名前を必ず伝えるようにしてください。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

※本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。

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