5αリダクターゼは薄毛(AGA)の原因?抑制できる治療薬や食べ物

「5αリダクターゼって何?」「AGAとどのような関係があるの?」と疑問に思っている方に向けて、この記事では5αリダクターゼの役割やAGAとの関係性、5αリダクターゼを減らす方法などについて詳しく解説しています。

目次

「5αリダクターゼっていったい何?」
「AGAと5αリダクターゼにはどのような関係があるの?」

AGA(男性型脱毛症)について調べていると、5αリダクターゼという単語をよく目にするかと思います。

しかし、5αリダクターゼがどのような働きをしているのか、AGAとどういう関係性があるのか疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、5αリダクターゼの役割やAGAとの関係性について詳しく解説します。
5αリダクターゼを減らす方法も紹介しているので、ぜひ参考にご覧ください。

■ 本記事のサマリ

  • 5αリダクターゼはAGA発症の要因となる酵素
  • AGA治療薬の「フィナステリド」「デュタステリド」は5αリダクターゼのを働きを抑える
  • 食生活や生活習慣改善改善による5αリダクターゼ抑制はあくまで補助的な役割

5αリダクターゼとは?種類や役割について

5αリダクターゼは、私たちの体内にある酵素のことです。

別名、5α還元酵素とも呼ばれています。男性にも女性にも存在しますが、とくに男性の薄毛と深い関係があるものです。

5αリダクターゼは2種類ある

5αリダクターゼには、5αリダクターゼⅠ型と5αリダクターゼⅡ型の2種類があります。

このうち、AGAと大きな関わりがあるといわれているのは、5αリダクターゼⅡ型のほうです。

前頭部や頭頂部に多く存在していることから、いわゆるM字ハゲやO字ハゲを引き起こします。

少し前までは5αリダクターゼⅡ型のみがAGAの発症に関係していると考えられていました。
しかし現在は、5αリダクターゼⅠ型も関与していると考えられています。

5αリダクターゼの型と特徴

5αリダクターゼは男性的な身体づくりに重要

では、5αリダクターゼは具体的にどのような役割をしているのでしょうか。

AGAを引き起こす厄介な存在と思われている方もいるかもしれませんが、実は私たちの体にとって、5αリダクターゼは必要不可欠なものです。

ジヒドロテストステロン(DHT)の生成

5αリダクターゼは、ジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンを作るのに必要な成分です。
テストステロンと結びつくことで構造を変化させ、ジヒドロテストステロンを生成するのです。

ジヒドロテストステロンとテストステロンはどちらも男性ホルモンであることに変わりはありませんが、ジヒドロテストステロンのほうがより強力な活性をもっています。

男性的な身体をつくる

5αリダクターゼは、男性の身体を男性らしくするために必要です。

男性器の成長や筋肉の増大などにジヒドロテストステロンが関わっているため、5αリダクターゼがうまく働かなければ成長に影響が出てしまうこともあります。

5αリダクターゼは薄毛の原因の一つ

5αリダクターゼにより生成されるジヒドロテストステロンには発毛を抑制する働きがあります。

そのため、5αリダクターゼは薄毛の発症と大きな関係があるのです。

5αリダクターゼの活性度が高いと
AGA(男性型脱毛症)のリスクが高い

5αリダクターゼの量が多い方、働きが活発な方はAGAを発症するリスクが高いといえます。

ジヒドロテストステロンの量が増えるほど、発毛が抑制されやすくなるためです。

ただし、5αリダクターゼの活性だけでAGAの発症リスクが決まるわけではありません。

ジヒドロテストステロンは、アンドロゲンレセプターに結合しなければ働かないため、アンドロゲンレセプターの活性もAGAの発症に影響を与えると考えられています。

AGAのメカニズム

5αリダクターゼによって生成されるジヒドロテストステロンがアンドロゲンレセプターに結合すると、TGF-βやDKK1などの脱毛因子が分泌されます。

これらの脱毛因子は、毛母細胞の働きを抑制するため、AGAを引き起こしてしまうのです。

毛母細胞は、自身が細胞分裂をくり返すことで髪の毛を成長させていきます。
脱毛因子の影響で毛母細胞がうまく働かなくなると、成長期の期間が短くなりヘアサイクルが乱れ、結果としてAGAの発症につながるのです。

AGAを発症すると、通常なら2〜6年ある成長期がわずか数ヶ月程度にまで短縮されるため、髪の毛が十分に育つ前に成長が止まってしまいます。

抜け毛が増えたり、髪質が細くなるのはこのためです。

5αリダクターゼの活性度は遺伝の影響が大きい

「寝不足の日々が続いたから薄毛になったのかもしれない」、「生活習慣が悪かったせいかもしれない」など、過去を振り返ってあれこれとAGAの原因を探ろうとする方が少なくありません。

しかし実は、AGAを発症するかどうかを決める大きな要因は遺伝なのです。

5αリダクターゼの活性の強さは生まれ持った性質のため、日々の生活習慣がAGAの発症に大きく関与することはありません。
アンドロゲンレセプターの活性についても遺伝で決まることがわかっています。

ちなみに「母方の祖母が薄毛だと遺伝しやすい」といわれるのは、AGAに関係している遺伝子がX染色体上に存在するためです。

X染色体は女性からしか受け継げないため、母方の祖母が薄毛だと遺伝する可能性が高くなります。

喫煙・飲酒・ストレスも影響する

生活習慣が大きく関与することはないといいましたが、まったく関係ないわけではありません。

たとえば喫煙は、血管を収縮させることで髪の毛に栄養素を運ばれづらくしたり、DNAを損傷させたりすることでヘアサイクルに影響を与えることがわかっています。

飲酒は髪の毛に直接なにか影響を与えるわけではありませんが、睡眠の質が低下することで成長に影響が出る可能性がゼロではありません。

また、ストレスは自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮した状態が続きやすくなるため髪の毛の発育に影響を与える可能性があります。

5αリダクターゼの抑制にはAGA治療薬が効果的

AGAは、5αリダクターゼによって作られたジヒドロテストステロンの影響によって発症します。

つまり、5αリダクターゼの働きの抑制がAGAの治療になるのです。

フィナステリド(プロペシア)

フィナステリドは、5αリダクターゼⅡ型を阻害する働きをもちます。

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」でも使用が推奨されており、多くのクリニックで採用されているAGA治療薬です。

801名の日本人を対象に行った試験では、5年間にわたりフィナステリドを1日に1mg服用した方の99.4%で、写真評価によって発毛効果が確認されています*。
*吉竹 俊裕.「日本人の男性型脱毛症に対するフィナステリド長期投与の801例調査」

フィナステリドは、ジヒドロテストステロンにより乱れたヘアサイクル(正常な場合は2~6年)を戻すことでAGAを治療する薬であり、目に見えた即効性はないため、発毛を実感するまで少なくとも6ヶ月は服用を続けることが大切です。

1日に1回の服用で済むため、続けやすいでしょう。

また、フィナステリドによる治療は、AGAの発症から早い段階で開始する方がより効果的という研究が複数発表されています。

デュタステリド(ザガーロ)

デュタステリドには、5αリダクターゼⅠ型と5αリダクターゼⅡ型の両方を阻害する働きがあります。

2種類の5αリダクターゼを両方とも阻害することでジヒドロテストステロンの産生を強力に抑えられるため、フィナステリドよりも高い発毛効果が期待できることが特徴です。

デュタステリドとフィナステリドの効果の比較を行った試験では、デュタステリドのほうが髪の毛の直径を有意に改善させました*。
*Gubelin Harcha W, et al. A randomized, active- and placebo-controlled study of the efficacy and safety of different doses of dutasteride versus placebo and finasteride in the treatment of male subjects with androgenetic alopecia, J Am Acad Dermatol, 2014; 70: 489-498

デュタステリドはフィナステリドと同様にガイドラインで使用が推奨されていることから、定番のAGA治療薬として知られています。

AGA治療薬は必ずクリニックで処方してもらう

AGA治療薬を使用したいと考えている方は、必ずクリニックを受診して処方してもらうようにしてください。

まれに個人輸入を使って購入される方もいますが、健康被害の可能性を考えると個人輸入は決しておすすめできるものではありません。

実際、大手製薬会社による調査*では、インターネットで購入した個人輸入品の薬のうち約4割が偽造品という報告もありました。

表記とは違う成分が入っていたり、有効成分がまったく含まれていなかったりするものがいくつも見つかったのです。

不純物を含むものもあったことから、いつ健康被害が起きてもおかしくありません。

効かない薬、健康に害を与える薬にお金を使ってしまうことになるため、必ずクリニックを受診するようにしましょう。

* ファイザー株式会社, バイエル株式会社, 日本新薬株式会社, 日本イーライリリー株式会社『インターネットで入手したED治療薬の約4割が偽造品

生活習慣改善はAGA治療薬の補助的な役割として有効

5αリダクターゼの働きを抑えるためには、フィナステリドやデュタステリドを使った治療を行うことが基本です。

更に、AGA治療薬ほどの効果は見込めないですが、AGA治療薬の補助的な対策として取り入れられる方法に、食生活や生活習慣の見直しが挙げられます。

抑制に効果的な食べ物を摂る

亜鉛やイソフラボンは、5αリダクターゼの作用を抑制する可能性があるといわれている成分です。

試験管内での研究ではありますが、亜鉛が5αリダクターゼを強力に阻害したというデータがあります。

イソフラボン由来の成分であるエクオールが前立腺において5αリダクターゼを阻害したという研究データもあります。

亜鉛を多く含む食べ物

イソフラボンを多く含む食べ物

抑制に効果的な成分が配合されたサプリを飲む

以下のようなサプリメントを摂取するのもよいでしょう。

  • 亜鉛
  • イソフラボン
  • ノコギリヤシ

サプリメントを使えば、食生活を大きく変えることなく手軽に5αリダクターゼの抑制に効果的な成分を摂取できます。

ノコギリヤシも亜鉛やイソフラボンと同様に、5αリダクターゼを抑制する効果があるとして注目を集めている成分です。

泌尿器系の悩みをサポートする成分として有名ですが、5αリダクターゼにも働きかけることがわかってきています。

生活習慣を見直す

お酒を日頃から飲む習慣がある方は、できるだけ飲酒量を減らしましょう。
睡眠の質がよくなり、髪の毛の成長に必要なホルモンが分泌されやすくなります。

お酒にはジヒドロテストステロンを産生させる働きがあるともいわれているため、髪の毛のボリュームが気になる方は節酒を心がけるのがおすすめです。

厚生労働省の「健康日本21」では、1日あたり20g程度のアルコール摂取が推奨されているため、こちらの量を参考にしてみてください。
ビール中瓶1本、日本酒1合でおよそ20gとなります。

たばこを吸っている方は禁煙をし、運動習慣がない方は定期的に体を動かすようにしましょう。

運動をすることで5αリダクターゼの排出を促し、さらに血行がよくなることで髪の毛に栄養が行き渡りやすくなります。

ここまでいくつか食生活、生活習慣の見直しポイントを挙げましたが、前述の通り、5αリダクターゼの活性の強さなど、AGAの発症要因を大きく占めるのは遺伝です。

そのため、AGAの進行を止めるためには、直接的に5αリダクターゼを止めることのできるAGA薬による治療を行うことが基本といわれています。

まずは着手しやすい食生活や生活習慣改善から始められる方も多いですが、最終的にクリニックを受診される方が多い印象です。

AGA治療薬の効果が高いAGA早期の段階で、まずはクリニックに相談することも検討してみてください。

5αリダクターゼにまつわるQ&A

では、最後に5αリダクターゼについてよく聞かれる質問にお答えします。間違ったイメージをもたれている方も多いので、ここでしっかり正しい知識を身につけておきましょう。

5αリダクターゼは性行為で増える?

性行為で5αリダクターゼが増えることはありません。

精液に亜鉛が含まれることから5αリダクターゼの働きに影響が出るのではと考える方もいるようですが、まったく影響はないので安心してください。

もちろん、自慰行為によって5αリダクターゼが増えることもありません。

5αリダクターゼはニキビにも影響がある?

5αリダクターゼⅠ型の活性が高い方は、ニキビができやすい可能性があります。

これは、5αリダクターゼⅠ型に皮脂分泌量を増やす働きがあるためです。
ニキビが多い方は5αリダクターゼの量も多いというデータもあります。

5αリダクターゼは女性にもある?

女性にも5αリダクターゼは存在します。

ただし、男性と違って5αリダクターゼが多いからといって薄毛を発症するとは限りません。

女性が薄毛になる原因には自律神経の乱れやホルモンバランスの変化などいろいろあります。

5αリダクターゼはAGAとの関係が強い!薄毛治療はクリニックへ

5αリダクターゼはテストステロンからジヒドロテストステロンを作るために必要な酵素のことです。

ジヒドロテストステロンは毛母細胞に影響してヘアサイクルを乱す働きがあるため、AGAの発症と大きく関係しています。

そのため、AGAの治療をする場合は5αリダクターゼの働きを抑えることが大切です。
フィナステリドやデュタステリドが5αリダクターゼの働きを抑える治療薬として知られています。

亜鉛やイソフラボンなどにも5αリダクターゼを抑える働きがあるといわれていますが、毛髪のボリュームをしっかり改善したい方は、AGA治療薬を使って治療を進めていくようにしましょう。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

※本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。

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