生え際の産毛の増加はAGAが原因?髪の毛を太く改善する薄毛対策
生え際の産毛が増えるのはAGAによるヘアサイクルの乱れからかもしれません。AGAを改善するにはクリニックでの治療が必要です。生活習慣の改善を併せて行うと効率的に薄毛を改善できるでしょう。
「生え際に産毛が増えてきたけど、これって薄毛の前触れ?」
「生え際の薄毛を太くするにはどうすればいいの?」
以前まで正常な髪が生えていたところに細く短い産毛が増えると、ハゲてしまうのではないかと不安になってしまう方もいると思います。さらに、元の正常な髪の毛に戻すための具体的な方法が分からず途方に暮れてしまうこともあるでしょう。
しかし生え際に薄毛が増えるメカニズムが明確にわかれば、薄毛への対策を実践しやすくなるはずです。
そこで今回は、生え際に産毛が増える原因や産毛を正常な髪に戻すための方法、日常生活での注意点などを解説します。
■ 本記事のサマリ
- 生え際の産毛増加の主な要因としてAGA(男性型脱毛症)が挙げられる
- AGAの前兆として、他には抜け毛の増加や薄毛の進行、髪質の変化等が挙げられる
- AGAの改善には、クリニック等、医療機関での治療が必要
- 補助的に生活習慣の見直し等を行うと、治療効果を増大できる可能性がある
生え際の産毛の増加はヘアサイクルの乱れが原因
生え際の産毛が増える主な理由にヘアサイクルの乱れがあります。ヘアサイクルとは髪の毛が毛根にできてから自然に抜け落ちるまでの周期を指し、以下の3段階に分かれています。
ヘアサイクルごとの状態
産毛とは髪の毛が頭皮の表面に生え出たばかりの状態を指し、細く短い軟毛であることが特徴です。
産毛は通常2〜6年ある髪の成長期に太く長く伸びていくものですが、ヘアサイクルの乱れで成長期が大幅に短くなると、十分に成長しないまま退行期・休止期に突入します。
「最近生え際に産毛が増えたな」と感じる場合、ヘアサイクルの乱れによって未熟な髪が増えているのかもしれません。
ヘアサイクルの乱れはAGA(男性型脱毛症)が原因
ヘアサイクルの乱れが起きる原因の一つであるAGAは、男性ホルモン「テストステロン」の影響で起こる脱毛症です。
本来、筋量や骨量、性機能の増進に作用するテストステロンですが、体内の酸化酵素と結合することでAGAの引き金となる男性ホルモン「DHT」を生成します。このDHTが毛乳頭内で男性ホルモン受容体と結びつき生成されるのが、ヘアサイクルの乱れを引き起こす脱毛因子です。
脱毛因子は毛母細胞を攻撃し、成長期にある髪の毛を退行期に移行させます。
通常なら2年から6年程度ある髪の成長期が脱毛因子の作用で半年から1年程度となり、髪の軟毛化や脱毛が進行するのがAGAの症状です。
AGAのなりやすさは、酸化酵素の活性度や男性ホルモン受容体の感受性に左右され、これらの性質は遺伝によって引き継がれる傾向にあります。
親族にAGA罹患者がいる場合、自身もAGAの体質を引き継いでいる可能性があるでしょう。
生え際の産毛以外にもあるAGAの前兆
ヘアサイクルに乱れが生じるAGAの兆候として、生え際の産毛以外にも抜け毛の増加やAGAが生じやすい頭頂部の薄毛・毛痩せなどがあります。
以下ではそれぞれの兆候を具体的に解説します。
抜け毛の量が以前より増えた
AGAの前兆の一つである抜け毛の増加は目に見えてわかる症状であるため、比較的自分でも気づきやすいものです。
正常なヘアサイクルの髪の毛でも毎日50〜100本程度は気付かないうちに抜け落ちているものですが、AGAになると抜け毛が1日に200本以上にまで増えてしまいます。
1日に何本抜けたかを数えるのは困難ですが、頭皮や髪が摩擦にさらされやすいときの抜け毛に着目してみるとAGAかどうかを判断しやすくなります。
例えば、ブラッシングや洗髪のときに指に毛が絡みついたり起床時の枕に大量の抜け毛が付着していたりする場合は要注意です。
また、抜け毛量をセルフチェックする際は体調にも留意しましょう。例えば気圧の高低差や寒暖差のある時期は自律神経が乱れやすく、正常なヘアサイクルでも抜け毛が増える傾向にあります。体調に左右されないタイミングでセルフチェックを行うことが大切です。
抜け毛が細くて短い
AGAによってヘアサイクルが乱れると髪が太く伸びる前に抜け落ちるため、細く短い抜け毛が目立つようになります。
また、AGAでは髪の毛が成長途中で抜け落ちてしまうため、抜け毛の毛根も小さく未熟だったり毛根自体がなかったりすることがあります。
髪のボリュームダウンが気になり出したら、抜け毛の毛幹(頭皮から出ている部位)部分と毛根部分の両方に目を向けてみましょう。
抜け毛の形状でAGAかどうかを見分けるには、抜けた毛をまとめて1本1本の太さにムラがないかを確認することがおすすめです。
ヘアサイクルに乱れのない状態では抜け毛の太さが均一になりますが、AGAの場合細く短い抜け毛と太く長い抜け毛が混じり合うことが多いです。
生え際が後退してきた
生え際の後退もAGAの進行パターンの一つです。AGAによる生え際の後退は額の両サイドから生じるため、生え際の形が剃り込みのようなM字型になるのが特徴です。
生え際の後退が進行すると、同じくAGAの特徴である頭頂部の薄毛と連結し、隠しきれない大きなハゲにつながる恐れがあります。AGAによる生え際の後退を判断するには、指2本を使った下記のチェックがおすすめです。
- まず、目を大きく開け眉をあげます。
- 額にできた一番上のしわに指2本をあてます。
- しわから額の生え際までが指2本分よりも離れていないかを確認します。離れている場合、生え際が後退している可能性があります。
セルフチェックは鏡があればいつでも手軽にできるので、薄毛が気になる方はぜひ参考にしてみてください。
髪がセットしづらくなった
先にお伝えしたように、AGAでヘアサイクルが乱れると抜け毛が細く短くなりますが、頭皮に残っている髪の毛が軟毛・短毛化することもAGAの特徴です。
髪1本1本のハリがなくなると髪がボリュームダウンし、理想のヘアスタイルを作りづらくなります。ハード系のワックスやスプレーで固めても髪がすぐにペタンと寝てしまう場合、AGAの前兆かもしれません。
ここで、髪がすぐに寝てしまうからといって整髪剤を使いすぎるとかえって頭皮にダメージを与え、薄毛を進行させてしまう恐れがあります。
まずは冷静に髪質の変化を受け止め、抜け毛の形状や量、生え際・頭頂部の状態確認などから試みましょう。
頭頂部の地肌が透けて見える
AGAの進行には生え際から始まるM字型ハゲの他にも、頭頂部・つむじから薄毛が進行するO字型ハゲがあります。真上から見ると「O」の字にハゲるO字型ハゲは、正面から見ると頭頂部の地肌が透けて見えることが特徴です。
頭頂部は普段あまり気に留める部位ではないため、薄毛の進行を見逃してしまうこともあるでしょう。頭頂部の状態に意識を向けるには、合わせ鏡を用いたり家族や友人に頭頂部の状態を見てもらったりすることがおすすめです。
生え際の産毛を太くするにはAGA治療が必要
AGAを改善して生え際の産毛を太くするにはクリニックでの治療が必要です。
先にお伝えしたようにAGAには遺伝的要因があるため、生活習慣の改善やヘアケアなどだけでは改善を目指せません。そこで、AGA治療を始めるにあたって複数ある治療の種類や内容を理解しておく必要があります。
AGAの治療方法は主に3種類
AGAの治療は複数ありますが、主に次の方法がAGAに有効な治療法として用いられています。
AGA治療の種類
基本的には費用対効果などの面から投薬治療が第一選択になります。
ただし、これらの治療は費用や効果の現れ方、治療期間・回数などが異なるため、薄毛の症状に合わせて使い分けるものです。
ご自身に合った治療の進め方が分からない場合、クリニックでの無料相談を活用してみても良いでしょう。
投薬治療から始めるのがおすすめ
AGA治療はミノキシジル、フィナステリド、デュタステリドなどの投薬治療をメインに進めることが一般的です。
内服薬のメリットはなんといっても手軽さや安全面、コスト面に優れているところです。
例えば、数十万円単位のコストが必要なメソセラピーや自毛植毛に比べると、投薬治療は月々5,000円から18,000円程度の費用で始められます。
また、内服薬の副作用リスクは低く、たとえ服用による不調が起きたとしても医師に相談して都度、量を減らしたり処方内容を変えたりできます。
先にお伝えしたように、内服薬ではAGAの引き金とされるDHTの生成を阻害する作用があるため、薄毛の度合いや速度によっては内服薬だけで対処できる場合も多いです。
費用面や安全性、効果面を考慮すると、AGA治療は投薬治療から始めるのがベストといえるでしょう。
薬は個人輸入ではなくクリニックで処方してもらうこと
副作用のリスクが低く、症状に合わせてフレキシブルな対応がしやすい投薬治療ではありますが、くれぐれも内服薬を個人輸入で取り入れることは控えましょう。
なぜなら、薬の個人輸入は以下のリスクがあるからです。
- 薬が本物である保証がない
- 服用の仕方を誤る可能性がある
- 万が一重い副作用が生じても救済制度が適用されない
低価格の薬は有効成分が含まれていない偽造医薬品である可能性があります。
また、独断での服用には併用禁忌の薬が分からなかったり量の調整が不適切であったりする問題が起きがちです。
なお、過度の服用によって重度の副作用が起きても、個人輸入で得た薬の場合は「医薬品副作用被害救済制度」を利用できません。
この制度は適切な服用をしたにもかかわらず副作用が生じた場合にのみ適用され、医療費や年金のサポートが受けられるものです。
リーズナブルな価格で薬が手に入る個人輸入ですが、場合によってはクリニックでの治療よりもコストの増大や薄毛の進行、副作用などのデメリットが多くなる可能性があるのです。
AGA治療と併せて行うべきこと
AGAを改善するためにはクリニックでの治療が必須ですが、補助療法として生活習慣の改善を併せて行うことで効率的にAGAの進行を食い止められます。以下では頭皮と髪に良いとされる習慣を見ていきましょう。
規則正しい生活を心がける
起床時間や就寝時間、食事時間が決まった規則正しい生活は健康な髪と頭皮環境の維持をサポートします。
なぜなら生活リズムが整うと睡眠の質が良くなるからです。
そもそも私達が夜寝ている間には、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠が交互に繰り返されています。毛母細胞や毛乳頭細胞を含むあらゆる細胞を活性させる成長ホルモンが分泌されるのは前者のノンレム睡眠時です。
特に、入眠してからの90分間は最も深く長いノンレム睡眠が訪れるタイミングで、成長ホルモンの分泌が盛んに行われます。
したがって髪に良いとされる良質な睡眠を得るには入眠時の睡眠の質を高める必要があるのです。
スムーズな入眠に重要な役割を果たすのが、自然な眠気を誘うホルモン「メラトニン」です。メラトニンは起床後朝日を浴びてから14時間から15時間程度で分泌される性質を持つため、起床時間が一定だと自ずと決まった時間に眠気が訪れ、睡眠の質が高まります。
また、消化活動は胃腸に血流が集中し脳の休息を妨げるため、就寝の3時間前までに食事を済ませておくことも大切です。
栄養バランスのとれた食事をする
髪は血液によって運ばれた栄養をもとに成長しますが、髪を作る栄養が不足すれば、当然抜け毛や毛痩せが起きやすくなります。
手軽なカップ麺やおにぎり、パンなど糖質単品で食事を済ませる習慣は薄毛を助長するものです。
髪と頭皮の健康には、まず優先的に摂取すべき栄養を考えることから始めましょう。
例えば、髪も頭皮も主成分はタンパク質です。また、髪を構成するタンパク質ケラチンの合成にはビタミン類や亜鉛、アミノ酸などが必要となります。
以下では髪に必要とされる栄養素を含む食べ物を紹介します。
髪に良い栄養素とそれらを含む食材
良質なタンパク質やビタミン、ミネラルを効率的に食事で取り入れるには、一汁三菜の定食スタイルの食事がおすすめです。
ご飯は少なめにして、主菜・副菜でバランス良く栄養を取り入れましょう。
適切な頭髪ケアを行う
頭髪ケアは誤った方法で行えば薄毛の引き金になり得るものですが、適切に行えば頭皮の健康をサポートするものです。
例えば、育毛に良いシャンプーの仕方には下記のポイントがあります。
- アミノ酸系などの低刺激シャンプーを選ぶ
- 予洗い前にブラッシングでほこりを除去する
- 洗髪は38度程度のぬるま湯で行う
- 指の腹を使い優しく洗う
- 洗髪よりもすすぎを重視する
- 洗髪後は頭皮を下から上に持ち上げるように頭皮マッサージを行う
また頭皮も肌の一部であることを踏まえると、肌に良くないことを避けるのも頭髪ケアにつながります。
紫外線対策や禁煙、飲酒量の制限などを心がければ、徐々に頭皮環境の改善を目指せるでしょう。
適度にストレスを解消する
ストレスは交感神経を優位にさせ血流を低下させるため、髪に必要な栄養素の枯渇を引き起こすものです。髪の健康を維持するには適度にストレスを解消しておく必要があります。
ストレス解消におすすめなのが適度な運動です。
特に歩行やジョギング、サイクリングなどのリズム運動は自律神経の安定を図るホルモン「セロトニン」の活性を強めるため、ストレスに強い体作りに適しています。
無理な運動はストレスの元となりますが、15分から20分程度の軽快な運動では心をスッキリとさせたり血流を良くしたりできるのです。
生え際の産毛に関するQ&A
ここで、生え際の産毛が気になる方、薄毛の悩みがある方からよく挙がる疑問を紹介します。薄毛かどうかの判断に困ったり対応の仕方が分からなかったりする方はぜひ参考にしてみてください。
生え際の正常な形は?
生え際の形には個人差があり、正常な形の定義はありません。AGAかどうかの判断は生え際の形よりも生え際がどれだけ後退しているかによります。
先にお伝えした指2本を使ったセルフチェックでは、生え際が後退しているかどうかを確認できます。生え際の形に違和感がなくてもおでこのしわから生え際の間隔が空いている場合、ヘアサイクルに乱れが生じている可能性があるでしょう。
生え際の産毛は剃るべき?
生え際の産毛を剃る必要はありません。
なぜなら、剃ることによって頭皮にダメージが加わったり、紫外線の照射を直接受けたりするデメリットがあるからです。
紫外線を浴びた頭皮では細胞に有害な活性酸素が発生し、髪を作る毛母細胞や毛乳頭細胞などがダメージを受けます。
どうしても生え際の産毛を処理したい場合、シェービングクリームの塗布やアフターケア、紫外線対策などをしっかりと行いましょう。
生え際の産毛が増えたらAGAクリニックへ相談
生え際の産毛が増えた場合、ヘアサイクルの乱れによる生え際の後退や軟毛化があるかもしれません。ヘアサイクルが乱れる原因として考えられるのがAGAです。
AGAは遺伝的な要因で起こるため、自力で治そうとせずクリニックでの治療で改善を目指す必要があります。適切な治療とともに生活習慣の改善を行えば、AGAによる生え際の産毛は太く長い髪に戻すことも期待できるでしょう。
天野 方一 先生
ヘアテクト 顧問医師
日本抗加齢医学会専門医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
- 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
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