育毛剤と発毛剤の違いとは?薄毛・抜け毛への効果や成分について

育毛剤と発毛剤の違いは医薬成分「ミノキシジル」が配合されているかどうかです。医薬部外品である育毛剤にはミノキシジルが含まれておらず、あくまで現状維持・予防を目的としたものとなります。

目次

「育毛剤と発毛剤の違いって何?」
「自分に合っているのは育毛剤?それとも発毛剤?」

こんな疑問を持つ薄毛や抜け毛、毛痩せの悩みがある方は多いはずです。育毛剤と発毛剤の特徴や違いを詳しく理解すれば、自分に合った方法で健康的な髪の毛を目指せます。

そこで今回は、育毛剤と発毛剤の違いやそれぞれの効果的な使い方、副作用などについて解説していきます。これからご自身で薄毛の対策をされる方はぜひ参考にしてみてください。

■ 本記事のサマリ

  • 育毛剤髪を育ちやすくする効果、発毛剤直接的に髪を生やす効果がある
  • 発毛剤の方が育毛剤より効果が高い半面、副作用の可能性も高い
  • しかし、いずれも「抜け毛を抑える効果」はないため、AGAの人には効果不十分の可能性もある
  • 高い薄毛改善効果を得たい場合、「抜け毛を抑える効果」のある、クリニックの薬の使用を推奨

育毛剤と発毛剤はまったく別物!違いを解説

育毛剤と発毛剤は似ているようですが、全く働きの異なるものです。なぜなら、含まれている有効成分には大きな違いがあるためです。

育毛剤は髪の成長を促すもの

育毛剤とは、頭皮の血流を良くしたり清潔な状態を保ったりすることで頭皮環境を整え、髪の毛の成長を促したり抜け毛を防いだりするものです。

そもそも健康な髪の毛は、毛髪の生みの親である毛乳頭細胞が、毛細血管から栄養と酸素を受け取り、髪の毛の元となる毛母細胞を分裂させていくことで作られます。したがって、育毛には髪の毛を組成する栄養や正常な頭皮環境、良好な血の流れが必要となるのです。育毛剤には血行の促進や頭皮の潤いを保持することで、これらの環境を整える効果があります。

なお、育毛剤は医薬部外品(症状の予防を目的とするもの)に該当するため、治療のために使われる医薬品のような強い効果はありません。

発毛剤は新たに髪の毛を生やすもの

発毛剤とは、医薬成分である「ミノキシジル」が配合された医薬品のことです。元来ミノキシジルは高血圧の治療に用いられる成分でしたが、服用した患者が多毛となったことから発毛の効果が認められ、脱毛の治療薬として開発されました。

主な作用は血管の拡張による血流の改善や毛乳頭細胞・毛母細胞の活性の促進とされています。

ミノキシジルの効果は、髪の毛の成長期を延長したり休止期から成長期への移行を促したりすることで、乱れたヘアサイクルを正常に整えることです。この仕組みによって、髪の成長期が極端に短くなるAGA(男性型脱毛症)やその他脱毛症の進行を抑制します。

医薬部外品である育毛剤と違い発毛剤をドラッグストアで購入するには薬剤師による立ち会いが必要になります。育毛剤のように必要に応じて買える手軽さはありませんが、頭髪への顕著な効果を感じられるのは発毛剤です。

発毛剤の方が効果は高いが副作用も出やすい

育毛剤と発毛剤はどちらも使用した際に副作用が生じる場合がありますが、より副作用が起きやすいのは発毛剤です。発毛剤に含まれるミノキシジルには血管を拡張する強い作用がある反面、血流不足を招いてしまう恐れがあるためです。

そもそも、頭皮を走る血管のほとんどは毛細血管という細い血管です。ミノキシジルの働きによって毛細血管だけが拡張すると、そこに血が流れ込むことで逆に首やこめかみを走る太い血管の血流量が低下してしまい、頭痛やめまいを引き起こすことがあるのです。

育毛剤の副作用は、製品に含まれている防腐剤や乳化剤、着色料や香料などの添加物に対して起こる頭皮の赤みやかぶれが主です。発毛剤に比べると育毛剤の副作用は起きづらいものですが、敏感肌やアレルギー肌の方は注意が必要です。

育毛剤・発毛剤を塗布したあとに強い副作用が出た場合には、放置せずに医師に相談しましょう。

育毛剤と発毛剤は使うべき人が違う

育毛剤と発毛剤は頭皮・頭髪の状態によって使い分ける必要があります。もしも自分に合わない薬剤の使用を続けてしまうと、かえって髪の状態が悪くなってしまったり薄毛を進行させてしまったりする恐れがあるからです。

ここでは、育毛剤を使うべき人・発毛剤を使うべき人それぞれについてお伝えします。

育毛剤を選ぶべき人

育毛剤を選ぶべき人は、髪の毛の毛痩せや切れ毛、ハリ・ツヤ不足に悩んでいたり薄毛への予防を考えていたりする人です。

何故なら、育毛剤には直接的な発毛効果がなく、頭皮の環境を整えたり髪の毛に必要な栄養を補給したりすることで、健全な頭皮と髪を緩やかにサポートしていくものだからです。

また、育毛剤に限らず医薬部外品の目的は予防や現状の維持とされ、配合される有効成分の濃度は厚生労働省によって適切に定められています。

今ある髪の毛を元気にしたい、長期的な使用で徐々に頭皮の状態を整えていきたいという方は育毛剤が適しているでしょう。

発毛剤を選ぶべき人

発毛剤を選ぶべき人は、AGA(男性型脱毛症)の発症により、頭皮の地肌が目立ったり薄毛・抜け毛が進行していたりする人です。

医薬成分であるミノキシジルは、治療・予防の面で強い作用があると厚生労働省から認められています。既に薄毛の症状が出ている方は、育毛剤では毛量の著しい改善は難しいため、発毛剤を使ってヘアサイクルを整えていく必要があるのです。

なお、既に薄毛の症状が出ているかを判断するには、抜け落ちた髪の毛の形質のチェックがおすすめです。

AGAの薄毛症状チェック

  • 毛質が細く短い
  • 毛根がベタつく
  • 毛根が白い
  • 毛根の先から細い突起がある
  • 1日に200本以上の脱毛がある

以上のような抜け毛が多い場合、髪の毛が十分に成長しないまま脱毛してしまっている可能性があります。

育毛剤・発毛剤の効果を得る心がけ

育毛剤・発毛剤の効果をより実感できるようにするには、使い方やタイミングなどの心がけが重要です。ここでは、より効果を得るための心がけについて紹介します。

頭皮環境を良好に保つ

育毛剤・発毛剤の効果を感じやすくするには、普段から食生活や生活習慣、良質な睡眠などを心掛け、頭皮の環境を良好に保っておくことが大切です。

そもそも、髪の毛を組成するタンパク質「ケラチン」の合成にはビタミンやミネラル、各種アミノ酸が必要となり、毛母細胞の活性に必要な酸素は血中の鉄分によって運ばれます。したがって、肉や魚、野菜などがしっかりととれる栄養バランスの良い食事は健康な髪を育てる上で重要です。

また、良質な睡眠は自律神経を整え頭皮の良好な血流をサポートしてくれます。頭皮の血流が良くなると、酸素・栄養素が髪の毛に行き届きやすくなり、脱毛の抑制が期待できます。

また、血管の収縮を引き起こす喫煙やお酒の飲み過ぎ、ストレスの溜め込みにも注意が必要です。

お風呂上がりに使う

育毛剤・発毛剤を使用するタイミングとしておすすめなのがお風呂上がりです。洗髪後は頭皮が清潔かつ血流が良好な状態のため、有効成分が浸透しやすくなります。

せっかく育毛剤や発毛剤でケアをしても、土台となる頭皮に皮脂や毛穴汚れ、ほこりなどが付着していれば有効成分の効果は十分に得られません。また、洗髪後でもしっかりと髪を乾かしていない場合、頭皮に雑菌が繁殖してしまったり髪に残った水分で有効成分が流れてしまったりする恐れがあります。

育毛剤・発毛剤の効果を十分に得るためには、お風呂上がりにしっかりとドライヤーをかけてから塗布するように心掛けましょう。なお、洗髪時にマッサージを行うとより頭皮の血流が良くなり、有効成分を浸透させやすくなるのでおすすめです。

継続して忘れずに使う

育毛剤・発毛剤は続けて使うことで効果が得られます。すぐに効果が見られないと使うのをやめてしまう方もいますが、短くとも半年は根気強く続けて使用しましょう。

特に、発毛剤の使用により休止期の髪の毛が刺激され、一気に抜け落ちることがあります。一見脱毛が進行してしまっているように見えますが、これはミノキシジルによる好転反応で髪の毛が次の成長期に入るための準備段階です。ここで使用をやめてしまうと意味がありません。一時的な脱毛は数ヶ月で治まり、その後に発毛が期待できます。

育毛剤・発毛剤の効果の実感には個人差があるので、焦らず忘れずに使用を継続していきましょう。

育毛剤・発毛剤を使うときの注意点

育毛剤・発毛剤を正しく使用するには、用法用量を守ったり、合わないと感じた時点で使用を控えたりすることが重要です。ここからは、使用する上での注意点を解説します。

正しい用法や用量を必ず守る

育毛剤・発毛剤を正しく使用するには、パッケージや説明書に記載してある用法・用量を守ることが大切です。育毛剤・発毛剤は、多く使ったからといって効果が倍増するわけではなく、むしろ頭皮の環境を悪化させたり副作用を引き起こしたりする恐れがあるためです。

例えば、薄毛の気になる部位だけに使用すべき発毛剤を頭皮全体に使用すると、発毛のムラが生じたり頭痛・めまいなどの副作用が起きたりする恐れがあります。また、頭皮全体に使用すべき育毛剤を局所的に塗り込んでも頭皮への効果は得られず、毛穴の詰まりを引き起こす可能性があります。

発毛剤・育毛剤は商品によっても推奨される使い方が異なるため、使用する前に説明書きをよく確認しておきましょう。

育毛剤と発毛剤を混ぜて使うのはNG

育毛剤と発毛剤の併用は原則として禁止されています。先に述べたように、育毛剤・発毛剤はそれぞれの用法・用量が決められています。

両方を混ぜて使用することによって、成分の割合・濃度のバランスが崩れてしまうと、髪への効果が妨げられてしまう他、副作用のリスクが高まる恐れがあるのです。
逆に頭皮環境を悪化させないためにも、自己判断で育毛剤と発毛剤を混ぜて使用することは控えましょう。

体に合わない場合は使用やめて医師へ相談

育毛剤・発毛剤を使用していて頭皮の赤みや痒み、発疹などが生じた場合、直ちに使用をやめて医師に相談しましょう。頭皮環境の悪化は髪の成長を妨げ、脱毛を進行させてしまう恐れがあるためです。

せっかく育毛剤・発毛剤の有効成分が働いても、その他の成分が頭皮のトラブルを引き起こしてしまっては本末転倒です。また、体に合わないからといって違うメーカーの商品に切り替えるのではなく、まずは頭皮環境を健康な状態に戻すために医師へ相談してください。

なお、使用していた育毛剤・発毛剤を医師に確認してもらえるように準備しておくと、スムーズな受診ができます。

発毛剤は外用薬以外に内服薬もある

ここまでは一般的にドラッグストアなどで購入できる市販の発毛剤について紹介してきました。しかし、残念ながら市販の発毛剤は「発毛効果」はあるものの「抜け毛を抑える効果」はありません。そのため、特にAGAに罹患している方は、薄毛の治療が不十分に終わる場合も少なくありません。

ここからは、市販薬に加え、より効果の高い発毛効果が期待できる医薬品について紹介していきます。

一般的にドラッグストアなどで購入できる発毛剤はミノキシジルの外用薬となりますが、クリニックではタブレットタイプのミノキシジル内服薬を処方してもらえます。ミノキシジルの内服薬は外用薬と比べるとより広範囲の血管にアプローチできるため、発毛への顕著な効果が感じやすくなるのが特徴です。

また、クリニックではAGAの治療を目的とした他の内服薬の取り扱いもあります。その中には「抜け毛を抑える効果」を持つ薬もあり、症状に応じて外用薬と内服薬を組み合わせたりサプリメントと併用したりすることで治療を進めます。

内服タイプの発毛剤の種類と特徴

ここで、クリニックで処方してもらえる内服タイプの発毛剤の種類や特徴を紹介します。

AGA治療薬の種類

フィナステリド・デュタステリドには抜け毛を抑える「守りの効果」があり、基本的にはクリニックで処方されることで使える薬です。

ミノキシジルは発毛を促す「攻めの効果」を持っているため、より高い発毛効果を期待して、フィナステリド・デュタステリドと併用して使われることも多いです。

確かな効果を求めるなら市販薬ではなくクリニックへ

薄毛が気になりだしたら、まずは市販の発毛剤から試してみるのも良いでしょう。しかし、数ヶ月使用しても効果が感じられない場合は、クリニックへの相談をおすすめします。

何故なら、薄毛治療は早い方が効果が高く、逆に進行しすぎてしまうと髪の毛が生えてくる毛根が死滅してしまい、治療効果が出なくなってしまう可能性もあるためです。

薄毛や抜け毛の原因がAGAである場合、発症の引き金となる男性ホルモンの抑制(抜け毛を抑える効果)も重要になります。この効果を持つAGA治療薬を安全かつ効果的に処方してもらうためにも、クリニックを受診することをお勧めします。

発毛剤と育毛剤の違いを理解して正しい薄毛対策をしよう

発毛剤と育毛剤は混同しがちですが、大きく作用が異なるものです。いずれかを選ぶには、まずそれぞれの特徴と違いを認識し、自身の頭髪の状態を見極める必要があります。

今ある髪のボリュームアップを目指したい方は育毛剤を、薄毛が進行してしまっている方は発毛剤を選びましょう。なお、市販の発毛剤では対応しきれないほど脱毛が進行している場合は、クリニックに足を運んでみることをおすすめします。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

  • 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
  • 本記事の内容は公開日時点の情報となります。 情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

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