AGAに育毛サプリメントは効果的?薄毛の改善が期待できる有効成分
育毛サプリはAGAの治療はできませんが、今ある髪の毛を健康に保ち抜け毛を予防する上で有効です。サプリは規定量を守り継続摂取することで髪と頭皮の栄養状態を整え、薄毛やボリュームダウンが生じにくい頭髪を作ります。
「AGAは育毛サプリで改善できるの?」
「育毛サプリって薄毛にどんな効果があるの?」
薄毛が気になる方の中には、このような疑問を持たれたことがある人もいるかと思います。
医薬品に比べて手軽に取り入れやすいサプリメントですが、複数ある有効成分から何を選べばよいか分からず困惑してしまうこともあるでしょう。育毛サプリの有効成分が髪や頭皮にどう働きかけるのかがわかれば、適切なサプリメントを選んで薄毛の改善を目指しやすくなるはずです。
そこで、今回は育毛サプリの薄毛への効果や各育毛成分の作用、サプリの効率の良い取り入れ方などを解説していきます。
■ 本記事のサマリ
- 育毛サプリでAGAを改善することは難しい
- ただし、AGA治療薬の補助的な役割としては有効
- AGA治療薬とサプリメントを併用する場合は医師に相談することを推奨
- サプリメントを使用する場合は、継続した適量での服用が効果発揮に繋がる
薄毛はサプリメントで改善できる?AGAへの効果とは
結論からお伝えすると、育毛サプリでAGAは改善できません。AGA(男性型脱毛症)の改善を目指すには、まずAGAのメカニズムから知っておくと良いでしょう。ここでは、AGAがサプリメントで治せない理由と治療方法を解説します。
AGAはサプリメントでは改善できない
AGAはサプリメントで改善できません。
なぜなら、多くのAGAの原因は遺伝的な要因から生じるためです。
そもそも、AGAの引き金となるのは、男性ホルモン「テストステロン」が酸化酵素と結合することで生じる男性ホルモン「ジヒドロテストステロン(DHT)」です。
このDHTは男性ホルモン受容体と結合すると脱毛因子を生成し、成長期にある健全な髪を退行期に向かわせます。
正常な髪の毛の成長期は2年から6年程ありますが、脱毛因子の影響で数ヶ月から1年程度に短縮され、抜け毛や髪のボリュームダウンが起こるのがAGAの症状です。
AGAの発症は酸化酵素の活性度・男性ホルモン受容体の感受性によって左右されますが、これらは遺伝で引き継がれる性質です。
いくら髪に良い栄養を育毛サプリで補給しても、遺伝的な要因が解決されなければAGAを根本から治せません。
AGAを発症している場合は適切な治療が必要
AGAを改善するには、クリニックで適切な治療を受ける必要があります。遺伝的な要因があるAGAは育毛サプリや生活習慣の改善、ヘアケアなどで治すことが困難ですが、医師による処方や療法で直接的なアプローチができます。
クリニックでの治療には以下の方法があります。
AGA治療の種類
これらの治療の中で、最も一般的なのが内服薬による治療です。
フィナステリドやデュタステリドはDHTを抑制して抜け毛を防ぐことから「守り系」、ミノキシジルは新たに髪を生やす作用から「攻め系」の成分と称されることがあります。
両者を併用することでAGAをピンポイントで治療できるのです。
育毛サプリに期待できる薄毛への有効性
髪と頭皮に効率的に栄養を補給できる育毛サプリですが、残念ながら発毛への効果は期待できません。
なぜなら育毛サプリはあくまで今ある髪の毛と頭皮の健康を保ち、切れ毛や毛痩せ、頭皮トラブルを抑えるものだからです。
このため、遺伝によって生じるAGAの進行をサプリの力だけで抑制したり改善したりするのは難しいといえます。
とはいえ、育毛サプリは頭皮環境を整えたり髪を作る毛母細胞の働きを手助けしたりする縁の下の力持ちのような存在です。
長い目で見てサプリを習慣的に取り入れていくことは、髪が生えやすい頭皮環境を作ったり抜け毛を予防したりする上で有効といえるでしょう。
薄毛・抜け毛に有効な育毛サプリの成分
育毛サプリに配合される成分は髪に栄養を与え頭皮の新陳代謝を高めます。しかし、種類が多すぎて自分に合った成分が分からないという方も多いはずです。そこでここからは、それぞれの育毛成分がもたらす髪と頭皮への作用を解説します。
育毛成分①亜鉛
亜鉛は髪の毛の主成分であるタンパク質「ケラチン」の合成やAGAを引き起こす酸化酵素の抑制に働くミネラルの一種です。健全な髪の毛の保持とAGAによる脱毛の防止、双方からアプローチできる亜鉛は、代表的な育毛成分として知られています。
育毛成分②ミネラル
亜鉛の他にも髪の形成には色々なミネラルが活躍しています。例えば、鉄分は髪の毛に必要な酸素が血液によって運ばれるのをサポートします。
私たちがよく耳にする「ヘモグロビン」という血中の成分は鉄(ヘム)とタンパク質(グロビン)が結びついたものです。また、ヨード(ヨウ素)は全身の細胞の新陳代謝に欠かせない甲状腺ホルモンを組成する成分で、毛母細胞の活性をサポートする作用があります。
ミネラルはさまざまな代謝に欠かせない栄養素ですが体内で合成ができないため、サプリで効率的に取り入れることをおすすめします。ミネラル類を手軽に満遍なく取り入れるにはマルチミネラルのサプリが良いでしょう。
育毛成分③ビタミン
ビタミン類もまた、髪の毛と頭皮の健康をサポートします。育毛成分として知られるビタミンの働きは次のとおりです。
育毛成分として知られるビタミン
血流の改善やケラチンの合成に働くビタミン類は、育毛に欠かせない成分です。またビタミン類はタンパク質や鉄分の吸収を手助けする作用があるので、肉や魚と相性の良い栄養素といえるでしょう。
育毛成分④ノコギリヤシ
ノコギリヤシにはAGAの原因となるDHTの生成を抑制する作用があると言われています。ある研究ではノコギリヤシの成分がAGAの引き金とされる酸化酵素を阻害し、DHTの生成を抑制することが認められました。
また、別の研究では2年間ノコギリヤシの服用を続けたAGA患者の4割弱に、薄毛の改善がみられたという結果が出ています。
*A Rossi, et al. Comparitive effectiveness of finasteride vs Serenoa repens in male androgenetic alopecia: a two-year study. Int J Immunopathol Pharmacol. 2012 Oct-Dec;25(4):1167-73.
ノコギリヤシはヨーロッパでは医薬品として認められており、日本国内においても薄毛への確かな効果が期待される成分なのです。
育毛成分⑤イソフラボン
大豆に含まれることで広く知られるイソフラボンはポリフェノールの1つで、男性と女性双方の育毛に効果的です。なぜなら、イソフラボンにはAGAの引き金となる酸化酵素を抑制する他、女性ホルモン「エストロゲン」の代替となる作用があるからです。
イソフラボンとエストロゲンは分子構造が類似しており、エストロゲンが足りないときはイソフラボンがエストロゲンの代役として働きます。したがって、エストロゲンの減少で生じる女性の薄毛にもイソフラボンは有効なのです。
育毛成分⑥L−リジン
リジンはケラチンを構成するアミノ酸の1つで、体内で合成できない「必須アミノ酸」にあたります。リジンの作用には以下に挙げる項目があります。
- タンパク質の合成
- 毛母細胞の活性
- カルシウムの吸収
- 頭皮のコラーゲンの生成
通常のアミノ酸と異なり自力で産生できないリジンは、サプリで効率的に取り入れることがおすすめです。また、プロテインやEAAにはリジン以外の必須アミノ酸もバランス良く含まれているので、薄毛の対策に取り入れてみても良いでしょう。
育毛成分⑦リコピン
リコピンはトマトやピンクグレープフルーツに含まれるカロテノイド色素の1つで、強い抗酸化作用のある成分です。
リコピンは細胞に有害な活性酸素を除去する働きがあるため、血中の悪玉コレステロールの酸化を防ぎ血をサラサラにしたり正常な血管壁を維持したりする働きがあります。リコピンによる血流改善への作用によって、髪の毛に必要な栄養と酸素が毛根に届きやすくなります。
AGA治療薬と育毛サプリ併用時は医師に相談
基本的に育毛サプリとAGA治療薬は併用しても問題はありません。しかし、育毛サプリの種類によってはAGA治療薬との併用を控えたほうが良い場合もあります。
例えば、前述のノコギリヤシやイソフラボンのように酸化酵素の活性を阻害する作用のあるサプリメントはAGA治療薬の効果と重複するため、併用すると必要以上に効果を強めてしまう可能性があります。
AGA治療薬とサプリメントを併用したい場合は、担当医師に必ず相談するようにしましょう。
育毛サプリを有効に摂取するポイント
髪と頭皮の健康をサポートする育毛サプリメントですが、誤った摂り方をすると効果が半減する他、かえって体調を害してしまうこともあります。ここからは、育毛サプリの効果が最大限になる摂取方法を紹介します。
目安量を守って摂取する
健康な髪を目指すには、育毛サプリの規定量を守りましょう。量が少なすぎても多すぎても育毛への効果は出づらくなってしまいます。特に過剰摂取があると、胃の消化酵素が大量のサプリに対応しきれず吐き気や食欲の低下を引き起こす恐れがあります。
また、サプリの成分によっては過剰摂取することで慢性的な不調が生じる場合もあります。例えば、亜鉛は鉄分の吸収を阻害するため、過剰な摂取は貧血を引き起こしかねません。また、ノコギリヤシやイソフラボンは過剰に摂取するとホルモンバランスを乱し、自律神経の乱れにもつながることがあります。
頭髪の健康を目的としたサプリで体調を崩しては元も子もありません。用法・用量は必ず守るように注意しましょう。
継続して摂取する
髪の成長期が2年から6年であることを考慮すると、髪への栄養を補給してくれる育毛サプリは継続してこそ効果が得られるといえます。毛母細胞は絶えず分裂と増殖を繰り返していますが、途中で栄養が途絶えてしまうと細胞の活性が弱まり、毛痩せや切れ毛、抜け毛などにつながりかねません。毎食後に飲むなど、1日の服用タイミングを決め、飲み忘れのないように心掛けましょう。
水か白湯で飲む
サプリの吸収効率を高めるには、水や白湯で飲むことをおすすめします。なぜなら、飲料の成分によってはサプリの吸収を阻害することがあるからです。
例えば、茶葉のカテキンや牛乳のカルシウム、コーヒーのタンニンなどはサプリの有効成分と結合しやすく、体内への吸収を妨げることがあります。
水や白湯以外でサプリを飲むとまったく効果がなくなってしまうわけではありませんが、代謝を阻害する可能性のある余分なものは避けたほうが無難でしょう。
サプリ以外の薄毛・AGA対策3つ
基本的にAGAは、クリニック等で処方されるAGA治療薬でしか改善が期待できないものの、補助的な役割として生活習慣の改善や栄養バランス、適切なヘアケアなどに力を入れることも有効です。そこで、以下ではサプリ以外の薄毛対策を解説します。
規則正しい生活を心がける
起床時間や就寝時間、食事時間などが整った規則正しい生活は睡眠の質を高め、育毛をサポートします。
副交感神経が優位となる深い眠りは、髪や頭皮の細胞修復に働く成長ホルモンが分泌される時間帯です。特に入眠後90分間が最も眠りの深まるタイミングとなるので、スムーズな入眠が薄毛への対策につながるといえます。また、質の良い睡眠は脳の機能を高め自律神経のバランスを整えるので、ストレスによる薄毛を予防するのに役立ちます。
眠りの質を高めるためには、就寝前のリラックスタイムや寝る3時間前までの飲食・入浴がおすすめです。また、睡眠ホルモン「メラトニン」は朝日を浴びてから15時間程度で分泌が始まるため、起床時に朝日を浴びておくと夜には自然な眠気が訪れやすくなります。
食生活を見直す
髪の毛は日々の食事から取り入れる栄養で出来ています。毛髪の元となる毛母細胞に、栄養素をしっかりと届けることが健康的な髪の毛の発育に繋がるのです。
例えば髪の主成分であるケラチンがタンパク質であることから、良質なタンパク質は髪にとって必要不可欠な存在。また、ビタミンB群やビタミンC、亜鉛などはケラチンの合成に欠かせない栄養素です。
おにぎりやパスタ、パンなど糖質一品のみの食事では、毎食きちんと食べていたとしても薄毛につながってしまう可能性があります。サプリメントで補うだけでなく、食事を取る際にも副菜でバランス良く肉や野菜を摂取するように心がけましょう。
誤ったヘアケアをしない
ヘアケアは方法を誤ると薄毛の原因となります。例えば、界面活性剤入りのシャンプーの使用や頻繁な洗髪、長時間洗い続けることは必要以上に皮脂を洗い流し、頭皮のバリア機能を低下させてしまいます。また、頭皮から至近距離でドライヤーをあてると頭皮の乾燥を招き、炎症を引き起こす恐れがあるのです。
健全な髪を保つためには正しいヘアケアの知識を身につけておきましょう。以下に挙げるヘアケアは育毛を手助けするものとしておすすめです。
- アミノ酸系シャンプーの使用(保湿性が高く頭皮と同じ弱酸性)
- ドライヤーを頭皮から30cmほど離す
- 頭皮マッサージを取り入れる
- 頭皮に整髪剤をつけない、もしくはすぐに洗い流す
育毛サプリにまつわるQ&A
ここで育毛サプリを使用するにあたってよく挙がる疑問を紹介します。薄毛が気になる方は参考にされてみてください。
サプリメントでも副作用は起こる?
食品に分類されるサプリメントは医薬品とは異なり強い効果がない一方、副作用のリスクはほぼありません。しかし、サプリメントの過剰な摂取は胃腸に負担をかけ、かえって栄養の吸収を低下させてしまう恐れがあります。
育毛サプリの規定量を超えた服用は、以下に挙げる症状を引き起こすことがあります。
- 吐き気
- 食欲の低下
- 下痢
- 便秘
また、成分によっては過剰に摂取することで他の栄養素の吸収率を低下させてしまう恐れがあるため、くれぐれも飲み過ぎには注意しましょう。
サプリと育毛剤の併用は可能?
AGA治療薬の場合とは異なり、サプリと育毛剤の併用は基本的に問題ありません。
育毛剤は医薬品に該当せず、AGA治療薬のような強い効果はありません。このため、サプリと併用しても副作用のリスクはなく、安心して取り入れられます。サプリメントで体の内側から栄養状態を整えておくと、育毛剤の効きが良くなり薄毛を改善しやすくなるでしょう。
女性でも育毛サプリは摂取できる?
育毛サプリは女性でも摂取できますが、男性とは異なる有効成分を選ぶと良いでしょう。
例えば、DHTの抑制に働くノコギリヤシは男性に適したサプリですが女性の薄毛には効果が実証されていません。女性が取り入れるなら、エストラジオール様の働きをするイソフラボンのサプリ等がおすすめです。
サプリは薄毛対策の補助!AGA治療はクリニックへ
育毛サプリは薄毛の進行を緩和させ健全な頭皮と髪の毛をサポートしてくれますが、あくまで薄毛対策の補助的な役割を担うもので、発毛を促すものではありません。
本格的に薄毛の改善を目指すのであれば、クリニックの受診や生活習慣の改善、適切なヘアケアなども同時に行う必要があるでしょう。特に薄毛の原因がAGAである場合、症状の改善には医師による適切な治療が必須となります。
「最近抜け毛が増えてきたな」と感じる方は、クリニックの無料相談の活用がおすすめです。
天野 方一 先生
ヘアテクト 顧問医師
日本抗加齢医学会専門医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
- 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
- 本記事の内容は公開日時点の情報となります。 情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。