ヘアカラー(髪を染める)はハゲる原因になる?薄毛との関係と対策

髪を染めるとハゲるということはありませんが、ヘアカラーの成分は頭皮と髪にダメージを与え、薄毛を引き起こすことがあります。適切な知識を持ち、ヘアカラーで薄毛にならないための対策を行いましょう。

目次

「髪を染めるとハゲるって本当?」
「なぜヘアカラーをすると薄毛になるの?」

薄毛が気になる方の中にはこのような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。カラー剤が髪や頭皮にどのような影響を与えるのかが分かれば、薄毛の対策をご自身でもやりやすくなるでしょう。

本記事では、ヘアカラーに含まれる成分や髪が染まるメカニズム、薄毛にならないための対策などを解説していきます。

■ 本記事のサマリ

  • ヘアカラーは、AGA(男性型脱毛症)等の進行性の薄毛とは直接的関係はない
  • しかし、ヘアカラーが頭皮や毛髪へダメージを与えることで、薄毛になるリスクはある
  • ヘアカラーによる薄毛の対策として、カラー剤の選択や染髪頻度の調整等が挙げられる
  • 上記対策を行っても薄毛が進む場合、AGAなどヘアカラー以外の原因の可能性があるため、医師に相談することを推奨

ヘアカラー(髪を染める)とハゲに直接的な関係はない

結論からお伝えすると、髪を染めたからといって、すぐに脱毛が起きるわけではありません。特に、男性の薄毛の原因の大半を占める進行性の脱毛症とは直接的には関係がありません。しかし、カラーリング後に髪が薄くなった気がすると感じる方が多いのも事実です。では、実際のところカラー剤が髪にどのような影響を与えるのでしょうか。

ここでは、カラー剤と脱毛の関連性についてメカニズムを追いながら解説します。

髪を染めても直接的に薄毛の原因になるわけではない

カラーリングは脱毛の直接的な原因ではありません。
なぜなら、カラー剤を塗る部位はあくまで毛幹(頭皮から出ている部分)であり、毛髪が生まれ育つ毛根(頭皮の中にある組織)ではないからです。

そもそも、頭皮から出ている毛幹は毛根にある細胞が分裂と増殖を繰り返すことで、死滅した細胞が外へ押し出されるようにして伸びたものです。私たちが髪の毛と認識している部位は死んだ細胞の集まりにすぎず、カラー剤が有害であっても髪の毛を作り出す毛母細胞に直接ダメージを与えるわけではありません。

AGA(男性型脱毛症)の発症との関係はない

AGAは日本人男性の薄毛の原因の大半を占めるといわれていますが、上記でもお伝えした通り、髪を染めることでAGAが発症することはありません。
何故なら、AGAの原因は男性ホルモンによる作用にあり、ほとんどが遺伝によって引き継がれるものだからです。

ここで、AGAが起きるメカニズムをみていきましょう。AGA発症の過程には、筋肉量・骨量の維持に働く男性ホルモンの代表格「テストステロン」が関係しています。

男らしい体型に欠かせないテストステロンですが、酸化酵素である5aリダクターゼと結合することによって、脱毛因子の前駆体となる男性ホルモン、DHT(ジヒドロテストステロン)を生成します。このDHTがアンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)と結合すると脱毛因子が生じ、毛母細胞の活動を抑制してしまうのです。

AGAの原因となるアンドロゲンレセプターの感受性や5aリダクターゼの活性度は遺伝によって引き継がれることがほとんどです。つまり、髪を染めることとAGA発症には関係性がありません。

ヘアカラー(髪染め)のダメージがハゲにつながる場合も

ヘアカラーは脱毛を引き起こす直接的な原因ではありませんが、頭皮の環境を悪化させたり髪の毛にダメージを与えたりすることで薄毛を引き起こす恐れがあるものです。

そもそもカラー剤は髪の内部に強制的に入り込み、メラニン色素を生成する酵素を破壊したり染色したりすることで髪を脱色・発色させます。そのため、当然強い作用のある成分が含まれています。この成分が、頭皮や髪の毛にダメージを与えてしまうのです。

ここからは、カラー剤に含まれる成分がなぜ薄毛の原因となるかについて詳しく確認していきましょう。

薬剤が頭皮にダメージを与える

カラー剤に配合される成分は、頭皮に付着することで炎症を引き起こしやすいものです。炎症の原因となる成分には、過酸化水素やアンモニア、ジアミン(酸化染料)などの頭皮トラブルを引き起こす化学物質が挙げられます。

例えば過酸化水素は酸化力が強い活性酸素と呼ばれるもので、頭皮の角質細胞にダメージを与えバリア機能を低下させます。また、ジアミンはアレルギーを引き起こしやすく、頭皮の炎症につながりやすい物質です。ジアミンアレルギーが重症化すると頭痛や嘔吐、アナフィラキシーショックなどを起こす恐れがあるため注意が必要です。

頻繁にカラーリングを行う場合、カラー剤が頭皮に残ったままになりやすく頭皮へのダメージが蓄積します。

頭皮環境の悪化は薄毛につながる大きな要因となってしまうのです。

薬剤が毛穴に詰まってしまう

カラー剤は頭皮に残留し毛穴詰まりを起こしやすい性質を持ちます。なぜなら、カラー剤に含まれる過酸化水素はタンパク質と結合しやすいからです。特に毛穴を詰まらせる皮脂の主成分はタンパク質であることから、カラー剤は皮脂に付着した状態で毛穴に残留しやすいのです。

毛穴の詰まりは頭皮の炎症や抜け毛を引き起こす要因となります。

また、過酸化水素は紫外線に当たることで毒性の強い活性酸素、ヒドロキシルラジカルを生み出し、頭皮の老化を促進します。このことが更なる脱毛を引き起こしてしまうのです。

髪の毛にダメージを与える

カラー剤は頭皮だけでなく、髪の毛にも大きなダメージを与えます。例えば、カラー剤に含まれるアンモニアは髪のキューティクルを無理に開き、ジアミンや過酸化水素の髪への浸透に作用します。

また、髪の内部に行き届いた過酸化水素はメラニン色素を破壊して髪を脱色する他、髪の主成分であるタンパク質、ケラチンも分解します。すると、毛痩せや切れ毛が生じ、髪全体のボリュームの低下につながります。

このように、カラーリングによって髪が傷んだり頭皮の地肌が目立ちやすくなったりすることで、脱毛していなくても髪が薄くなったように感じてしまうのです。

ヘアカラー(髪染め)で薄毛にならないための対策

髪や頭皮にダメージを与えるヘアカラーですが、下記に挙げるような方法で薄毛を避ける対策が可能です。ここでは、ダメージを最小限に止めつつカラーリングを行う方法について解説します。

市販のカラー剤を使わずに美容院へ行く

髪の毛へのダメージを抑えたいのであれば、市販のカラー剤は避けるべきです。市販のカラー剤は、発色を良くするためにジアミンや過酸化水素が多く配合されているからです。

ジアミン・過酸化水素の働きによって脱色の効果が強まると、鮮やかな発色となり仕上がりは美しくなるでしょう。しかし頭皮や髪の毛へのダメージは大きくなるため、徐々に毛痩せや切れ毛、頭皮トラブルが起きやすくなるのです。

天然成分のカラー剤を選ぶ

ボタニカルカラーやヘナ、イルミナカラーなどで知られる天然成分のカラー剤には過酸化水素が入っていません。

そのため、頭皮や毛髪に存在するアミノ酸やタンパク質、酵素が破壊されることなく、ダメージを最小限に抑えることができるのです。

ただし、天然成分のカラー剤にはカラーのバリエーションが少なかったり、一般的なカラーリングよりも色持ちが悪かったりするデメリットがあります。
また、体に優しい植物性とはいえ体質によってはアレルギー反応が生じることがあるため、事前にご自身の体質とカラー剤との相性を確認しておく必要があるでしょう。

髪を染める頻度を減らす

頻繁なカラーリングは髪の毛へのダメージを増大し、切れ毛や毛痩せを加速します。また、カラー剤による頭皮へのダメージが治りきらないうちに重ねてカラーリングをすると、頭皮のトラブルを引き起こしやすくなるのです。

髪の毛や頭皮へのダメージを最小限に止め薄毛を避けたいなら、髪の毛を染める間隔を3ヶ月程度とすることをおすすめします。

セルフケアを徹底する

カラーリングによるダメージを最小限にするには、セルフケアも重要です。

まず最低限注意したいことは、カラーリングをしてから24時間は洗髪を控えることです。
カラーリング直後の毛髪はキューティクルが開いている状態なので、ここで洗浄するとキューティクルの戻りが遅くなり髪の毛の傷みに繋がってしまいます。

また、カラーリング後数日間は、紫外線の対策を徹底する必要があります。
頭皮に残った薬剤が紫外線によって酸化すると、頭皮に更なるダメージが発生してしまうからです。そして、頭皮環境の悪化が薄毛を引き起こしてしまう恐れがあります。

カラーリング後の習慣として取り入れたいセルフケアには、ぬるま湯での洗髪やトリートメントの塗布、アミノ酸系シャンプーの使用などがあります。

特にアミノ酸系のシャンプーは髪を組成する成分と似ている性質を持ち、保湿力が高いので傷んだ髪に最適です。セルフケアを継続して髪や頭皮を保護するように心掛けましょう。

ブリーチよりはヘアマニキュアの方が髪や頭皮に優しい

髪は染め方を変えるだけで髪や頭皮へのダメージを大幅に減らせます。ここでは、カラーリングの手法が異なる「ブリーチ」と「ヘアマニキュア」について説明します。

ブリーチは髪や頭皮へのダメージが大きい

髪色を明るくする過程で取り入れられるのがブリーチとカラーです。過酸化水素の働きで髪を脱色するブリーチは髪の発色を良くする一方、髪や頭皮へのダメージが強いデメリットがあります。

また、頻繁なブリーチはメラノサイトの活動を弱め白髪を増やす可能性があることも事実です。2009年に行われたアメリカ実験生物学会連盟の調べでは過酸化水素の蓄積が白髪の原因であることがわかりました。

アミノ酸や酵素、タンパク質を破壊するブリーチは頭皮と髪にとって多大な負担をかける施術なのです。

ヘアマニキュアは髪や頭皮に優しい

髪や頭皮に優しいカラーリングを選びたいのであれば、ヘアマニキュアがおすすめです。なぜなら、ヘアマニキュアではブリーチと違って髪の内部まで薬剤を浸透させず、髪の表面のみに色味を入れるからです。

また、ヘアマニキュアには、髪の表面がコーティングされることで艶やかに仕上げられるメリットもあります。ブリーチのように髪色を明るくすることはできませんが、髪の毛を綺麗に保ちたい方に適した施術といえます。

白髪染めも髪へのダメージでハゲ(薄毛)の原因になる場合が

白髪染めの原理も一般的なヘアカラーと同様のため、髪の毛や頭皮にダメージを与えることには変わりありません。施術後のアフターケアを怠ったり頻繁に染め直したりすることで薄毛につながってしまう恐れがあります。

白髪を染めたあとは開いたキューティクルが閉じるようにトリートメントで保護したり紫外線の対策を徹底したりする必要があるでしょう。

ヘアカラー以外の薄毛の原因

ヘアカラーの回数や施術後のアフターケアにも気を配っているのに薄毛が気になってきた、という場合は、ヘアカラー以外の原因で薄毛が進んでいる可能性があります。

特に男性の場合、薄毛の原因の多くを占める原因がAGA(男性型脱毛症)です。

AGA(男性型脱毛症)の特徴としては、

  • 抜け毛の量が増える
  • 髪の毛が細くなり、ハリ・コシが無くなってくる

等が挙げられます。

ヘアカラーによる薄毛の場合にも似たような傾向が見られる場合がありますが、AGAの場合はヘアカラーの実施有無に関わらず薄毛が進行していく点になります。

薄毛の原因がAGAの場合、上記に挙げたような対策では薄毛を改善することができず、クリニック等でのAGA治療が必要となります。

しかし、ヘアカラーによる薄毛とAGAによる薄毛の区別は自分では難しい場合が多いです。
もしかしてAGAかも?と思った場合は、薄毛が更に進行してしまわない内に、クリニックでの無料相談等を受けてみることをお勧めします。

ヘアカラーについて正しく理解して薄毛対策をしよう

ヘアカラーは脱毛の直接的な原因ではありませんが、頭皮の環境を乱し髪の毛にダメージを与えることから薄毛の原因になり得るものです。カラーリングによる薄毛を避けるためには、天然成分のカラー剤を選んだり髪を染めた後のセルフケアを継続したりすることが重要です。

また、髪を染める場合には、髪の表面のみをカラー剤でコーティングして染色するヘアマニキュアを選ぶと、髪や頭皮へのダメージを抑えられます。

髪や頭皮へのダメージを最小限に抑えられるヘアカラーを正しく理解して、正しい薄毛対策を行いましょう。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

  • 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
  • 本記事の内容は公開日時点の情報となります。 情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

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