亜鉛の摂取で髪の毛が健康に?AGA・薄毛への働きや効果的な吸収方法
「亜鉛は薄毛に効果があるの?」「なぜ亜鉛は髪の毛に良いといわれているの?」と疑問に思っている方に向けて、この記事では亜鉛がもつ効果や髪の毛への働きについて詳しく解説します。
「髪の毛を増やすには亜鉛がいいと聞いたけど本当?」
「なぜ亜鉛は髪の毛にいいといわれているの?」
薄毛が気になってくると、食生活や生活習慣を変えて何か対策しようと考える方が多いのではないでしょうか。
亜鉛は髪の毛に良いことで有名な栄養素のため、薄毛対策のために積極的に摂ろうと考えている方もいるでしょう。
しかし、なぜ亜鉛が髪の毛にいいのか、本当に効果があるのか気になっている方が多いはずです。
そこで今回は、髪の毛に対する亜鉛の効果や影響などについて詳しく解説します。
■ 本記事のサマリ
- 亜鉛は健康な髪の毛の構成に必要な栄養素
- 適量を摂取することで、健康的な髪の育毛効果が期待できる
- しかし、男性の薄毛の原因のほとんどを占めるAGA(男性型脱毛症)を直接改善するほどの効果はない
- AGAによる薄毛を改善したい場合は、クリニックでのAGA治療を推奨
亜鉛は細胞やタンパク質を作る重要な栄養素
亜鉛は、私たちの体にとってなくてはならない存在です。
さまざまな代謝機能に関わっているため、亜鉛がなければ生理機能がうまく働きません。
細胞の代謝に不可欠なミネラルの一種
亜鉛は、DNAポリメラーゼやRNAポリメラーゼ、アルコール脱水素酵素などの酵素に含まれているミネラルの一種です。
亜鉛がなければこれらの酵素が作られないため、細胞の代謝がうまく進みません。
DNAポリメラーゼはDNAを合成する酵素、RNAポリメラーゼはRNAを合成する酵素、アルコール脱水素酵素はアルコールをアセトアルデヒドに代謝する酵素です。
DNAを作るために必要なことから、乳幼児期の発育にも重要だといわれています。
新しい細胞を作ったり、タンパク質を合成したりするのにも必要です。
成人男性に必要な亜鉛の摂取量は約10~11mg
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、亜鉛の推奨量は約11mgと定められています。
通常の食事を摂っていれば、亜鉛が不足することはまずありません。
しかし、極端に偏りのある食生活を送っていたり、そもそも食事の摂取量が少なかったりすれば不足する可能性があります。
亜鉛不足は成長不足や脱毛、味覚障害などを引き起こす
亜鉛が不足することはほとんどありません。しかし、まれに亜鉛不足により、次のような症状をきたすことがあります。
- 成長や性的発達の遅れ
- ED(勃起機能不全)
- 脱毛
- 下痢
- 皮膚のただれ
- 傷の治りの遅れ
- 味覚の消失
- 認知機能の低下
成人男性がとくに気になるのは、EDや脱毛ではないでしょうか。
亜鉛が欠乏しやすい状況としては、不規則な食生活のほかに栄養失調や高カロリー輸液を続けているときなどが挙げられます。
まれに薬の副作用で亜鉛不足になることもあるため、薬を飲み始めてから気になる症状が出た場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
亜鉛は髪の毛の合成にも重要
亜鉛が不足すると脱毛が起こりますが、不足状態に陥ることはあまりないため亜鉛不足による脱毛はあまり気にする必要はないでしょう。
しかし、亜鉛が髪の毛の健康と大きく関わっているのは間違いありません。
亜鉛はケラチンの合成に必要
亜鉛は、ケラチンの合成に必要です。
ケラチンとは髪の毛を構成するタンパク質の一種として知られています。
髪の毛の80〜90%はタンパク質でできており、そのうち約90%をケラチンが占めているのです。
メチオニンというアミノ酸がシスチンに変化し、シスチンがさらに変化することでケラチンが作られます。
シスチンからケラチンを作る際に必要なのが亜鉛です。
ケラチンがうまく作られないと健康な髪の毛が構成されないため、亜鉛は髪の毛にとって欠かせない成分といえるでしょう。
正常なヘアサイクルを保つために必要
亜鉛は、ヘアサイクルを正常に保つためにも必要です。
ヘアサイクルとは、髪の毛が生えてきてから抜けるまでの一連の流れのことを指します。
髪の毛は、長く太く育つ成長期、抜ける準備をする退行期、抜け落ちていく休止期を繰り返しているのです。
健康な方では成長期の期間が2〜6年ほどあります。
しかし、薄毛の方では数ヶ月程度にまで短くなっていることが特徴です。
亜鉛には、短くなった成長期を元に戻す働きが期待されています。
つまり、髪の毛が十分に育たないまま抜けてしまうのを防げる可能性があるのです。
亜鉛はAGA治療の「補助的」な役割を果たす
男性の薄毛は、ほとんどがAGA(男性型脱毛症)によるものです。
AGAはジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンの影響で起こります。
亜鉛はAGAの進行抑制が期待できる
AGAを進行させる直接的な原因となるのは、ジヒドロテストステロンです。
ジヒドロテストステロンは、テストステロンに5αリダクターゼ(5α還元酵素)が働くことで作られます。
亜鉛にはこの5αリダクターゼの働きを抑える効果があるといわれているため、AGAの進行を抑制できるのではと期待されているのです。
実際にAGAの治療では、5αリダクターゼの働きを抑えるフィナステリドやデュタステリドなどが使用されています。
これらはAGA治療薬の代表格です。
亜鉛の摂取により治療薬を服用したときと同等の効果が出るとは言えませんが、AGA治療薬の補助的に手軽にできる薄毛対策として知られています。
亜鉛で薄毛が劇的に改善されるわけではない
亜鉛には5αリダクターゼの働きを抑制する効果が期待されていますが、薄毛を改善できるほど効果があるのかについてはまだ不明な状態です。
日常的に亜鉛が不足する方がほとんどいないにもかかわらず、約3人に1人がAGAに悩んでいることを考えると、効果はないと言ったほうが良いのかもしれません。
1つ言えるのは、亜鉛だけでAGAの改善はできないということです。
AGAを本気で治したいのなら、亜鉛ばかりを摂る生活を続けるよりも、フィナステリドやデュタステリドなどを使ったAGA治療を行ったほうが確実なのです。
AGAは適切な治療が必要
AGAを改善する一番の近道は、AGA治療薬を使用することです。
亜鉛のように「効果があるかもしれない」というものではなく、治療ガイドラインにも記載されるほど発毛効果と安全性が確認されている成分がAGA治療に用いられています。
代表例がフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルです。
フィナステリドやデュタステリドは、5αリダクターゼの働きを阻害することでジヒドロテストステロンが作られないようにします。
ミノキシジルは、ヘアサイクルを正常に戻したり血行をよくしたりする成分です。
亜鉛をいくら積極的に摂ってもAGAは改善されないため、薄毛が気になる方は適切な治療を始めましょう。
亜鉛による髪の毛以外への効果
亜鉛には、髪の毛を健康に保つ効果以外にもいくつか働きがあります。
そのため、亜鉛のサプリメントは薄毛が気になる方だけでなく、幅広い層に人気です。
骨や皮膚などの健康を維持する
亜鉛は皮膚の健康維持にも必要になります。
亜鉛不足により皮膚潰瘍ができることも知られているほどです。
また、骨の健康維持にも必要になります。
骨の多くはカルシウムでできていますが、実は亜鉛も30%ほど含まれているのです。
亜鉛が不足すると骨密度が低下して骨粗鬆症になることもあります。
通常の骨粗鬆症の治療に加えて亜鉛も追加することで治療効果が上がる例もあるようです。
免疫力を向上させる
亜鉛には、免疫細胞を活性化させたり抗体の量を調節したりする働きがあります。
亜鉛の摂取量が少ない地域では、感染症にかかるリスクが高くなることが明らかになっているのです。
体内に侵入してきた異物が害をもっているか認識するB細胞の働きに関与しているため、亜鉛不足は免疫力の低下を招きます。
味覚機能を正常に保つ
亜鉛が味覚機能に関わっているのは、ご存知の方が多いかもしれません。
舌には味覚を感知する味蕾(みらい)という器官が存在します。味蕾のなかにある味細胞の再生に亜鉛が必要です。
味覚障害はさまざまな原因で起こりますが、半数以上は亜鉛不足によるものだといわれています。
生殖機能を改善する
ドラッグストアで亜鉛のサプリメントを手に摂る方が多いのは、薄毛対策をしたい方が多いからではありません。
生殖機能の改善を期待して購入される方も多くいます。
亜鉛が不足するとED(勃起不全)になることがわかっているのです。
亜鉛はテストステロンという男性ホルモンの合成に必要になります。
テストステロンは生殖機能の維持に必要なため、亜鉛はEDや精力などとも関係があることが特徴です。
髪に良い亜鉛を効率的に摂取する方法
亜鉛を効率よく摂取する方法としては、「亜鉛が多い食品を摂る」と「サプリメントを活用する」の2つの方法があります。
亜鉛が多く含まれる食品を食べる
日頃の食事に、亜鉛が多く含まれているものを取り入れてみましょう。とくに亜鉛の量が多い食品としては次のものが知られています。
牡蠣は亜鉛を多く含む代表的な食品です。とはいえ、毎日食べられるものではないかと思いますので、ほかの食品もうまく取り入れながら亜鉛を摂取していきましょう。
亜鉛を多く含む食材
サプリメントから摂取する
サプリメントを使えば、簡単に亜鉛の摂取量を増やせます。
安いものだと1ヶ月分が500円を切っているものもあるので、手軽に摂取したい方におすすめです。
数粒飲むだけで牡蠣を100g食べるのとほぼ同量の亜鉛を摂れるものもあります。
たとえばDHCの亜鉛のサプリメントでは、1日の推奨量を摂取することで15mgの亜鉛を摂ることが可能です。
ただし、摂取したサプリメントがどれだけ体内に吸収されるかはわからない部分も多くあります。
余裕がある方はできれば食品から摂取するように心がけましょう。
亜鉛の過剰摂取には注意が必要
- 吐き気
- 嘔吐
- 食欲不振
- 胃痙攣
- 下痢
- 頭痛
亜鉛の毒性はとても低いといわれていますが、過剰摂取には注意しましょう。
過剰摂取を長期にわたり続けると、上記のような症状が出る可能性があります。
アメリカ人のデータにはなりますが、副作用が出る最低限の量は1日60mg程度です。
サプリメントを過量に飲むと簡単に60mgを超えてしまうため、1日の目安量を超えては使わないようにしてください。
亜鉛と髪の毛にまつわるQ&A
では、最後に亜鉛と髪の毛に関する質問にお答えします。
亜鉛の吸収率が高くなる食べ合わせはある?
亜鉛は、ビタミンCやクエン酸と一緒に摂取すると吸収率が高くなります。
亜鉛の吸収率は、そもそもあまり高くありません。
吸収率を考慮してビタミンCやクエン酸が配合されたサプリメントもあるので、うまく活用してみましょう。
このほか、動物性のタンパク質や牛乳も吸収率を上げるといわれています。
亜鉛と食べ合わせが悪い食品はある?
フィチン酸や食物繊維、リン酸などは亜鉛の吸収率を下げる可能性があるので注意してください。
フィチン酸はとうもろこしやゴマ、食物繊維はキャベツやこんにゃく、リン酸は玄米や魚卵などに多く配合されています。
亜鉛サプリを飲むタイミングはいつがいい?
亜鉛のサプリメントは、いつ飲んでも問題ありません。
朝昼晩いつでもOKです。
食前や食後なども気にする必要はありません。
毎日続けて摂取することが大切ですので、飲み忘れにくいタイミングを見つけて継続していきましょう。
亜鉛は女性の薄毛に良い影響がある?
亜鉛は女性の薄毛にも良い影響をもたらす可能性があります。
これは、女性の薄毛にもジヒドロテストステロンが関係しているためです。
しかし、女性の場合は男性とは違いさまざまな要因が絡み合って薄毛を発症します。男性にもいえることですが、亜鉛のみで薄毛を改善するのは難しいでしょう。
健康的な髪のために亜鉛は積極的に摂ろう
亜鉛にはケラチンの合成をサポートしたり、ジヒドロテストステロンの産生を抑制したりする働きがあるといわれています。
そのため、薄毛の改善に役立てることができるでしょう。
しかし、男性が薄毛になる原因であるAGAを改善するほどの効果を亜鉛が発揮することはありません。
亜鉛だけで薄毛を改善することは難しいので、本格的な治療を行いたい場合は、AGA治療を検討してください。
とはいえ、亜鉛の摂取は髪の毛の健康を保つために手軽にできるものです。健康的な髪の毛を維持するために、亜鉛を積極的に摂りましょう。
天野 方一 先生
ヘアテクト 顧問医師
日本抗加齢医学会専門医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
- 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
- 本記事の内容は公開日時点の情報となります。 情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。