AGA(薄毛)治療薬ミノキシジルは体毛が濃くなる?原因や症状

「AGA治療薬のミノキシジルで体毛が増えるって本当?」と不安になっている方に向けて、この記事では体毛が増える原因や対処法、ミノキシジルで見られる副作用などについて詳しく解説しています。

目次

「ミノキシジルで体毛が濃くなるって本当?」
「ミノキシジルは体毛が濃くなるから、同時に脱毛もすべき?」

髪の毛が増えるのは嬉しいことですが、ヒゲや胸毛、腕や脚の毛まで増えるのは嫌だと感じる方が多いのではないでしょうか。実際にミノキシジルを使用することで、体毛が増えて困っているという方の声を耳にすることもあります。

今回は、AGA(男性型脱毛症)の治療薬であるミノキシジルで本当に体毛が濃くなるのか、その原因や症状について詳しく見ていきましょう。体毛を濃くしたくない方向けの解決策も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

■ 本記事のサマリ

  • ミノキシジルは「発毛を促進する」AGA治療薬
  • そのため、髪の毛だけでなく全身の毛が生えやすくなる可能性がある
  • ミノキシジルには、内服薬(飲む薬)と外用薬(塗る薬)があり、
    内服薬の方が全身に薬の成分が巡りやすいため効果が高く、副作用の可能性も高い
  • 副作用が心配な場合は、体毛が増加しにくいフィナステリドへの薬の切り替えや、脱毛をしながら治療継続することも1つの方法

ミノキシジルについてはこちらの記事でも詳しく説明しています。
AGA治療薬ミノキシジルとは?効果や副作用|外用薬と内服薬の違い
AGA治療薬ミノキシジルタブレットの発毛効果と正しい服用方法

ミノキシジルを使うと体毛が濃くなるのは本当?

ミノキシジルは、毛母細胞を活性化して乱れたヘアサイクルを正常化したり、血行をよくしたりすることで発毛効果を発揮する薬です。

使い続けることで髪の毛を増やすことができるのですが、実は体毛が濃くなるというデメリットがあります。

ミノキシジルは体毛を増加させる

ミノキシジルには内服薬と外用薬の2種類がありますが、このうち内服薬はとくに体毛の増加が見られやすいことで知られています。内服薬は外用薬と違って全身に薬の成分が巡りやすいため、髪の毛以外の毛も増えてしまうことがあるのです。

多毛症になる可能性もある

体毛が増えるだけではなく、多毛症の副作用が出る方もいます。多毛症とは、全身のあらゆる部位に毛が生えてくることです。もともと体毛があまりないような肩や顔などにも多毛症の症状は見られます。

産毛のようなものが生えてくることもあれば、太さと長さがしっかりした目立つ毛が生えてくることもあるため、症状の程度によっては気になることもあるでしょう。

なぜ体毛が濃くなる?ミノキシジル発毛メカニズム

再度になりますが、ミノキシジルは毛母細胞を活性化して、ヘアサイクルを整えたり血行をよくしたりすることで発毛を促す薬です。

髪の毛は、長く太く伸びていく成長期、成長が止まる退行期、抜けていく休止期をくり返しています。
AGAは、このサイクルが短くなることで発症します。健康な方なら2〜6年ほどある成長期が、AGAの方ではわずか数ヶ月にまで短くなってしまうのです。ミノキシジルはこれを元に戻す薬です。

そのほか、次のような働きがあることもわかっています。

  • 血管内皮増殖因子(VEGF)の発現を誘導する
  • 髪の成長を刺激する酵素を活性化する
  • アンドロゲン作用を抑える

血管内皮増殖因子とは、血管新生と呼ばれ、すでにある血管から新しい血管を作るために必要なタンパク質のことです。ミノキシジルは、血管内皮増殖因子の1つであるVEGFを増やすことで、毛母細胞の分裂や増殖をサポートします。

また、髪の毛の成長を刺激する酵素であるプロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼなどを活性化する効果や、AGAの進行と深い関わりがあるアンドロゲン(男性ホルモン)に働きかけることもわかっています。

ミノキシジルは、毛母細胞の活性化や血行促進効果があることはよく知られていますが、このように他にもさまざまな働きがあります。これらにより、毛髪だけでなく全身の体毛が濃くなる可能性があるのです。

ミノキシジル内服薬の方が効果が高いが体毛も濃くなりやすい

ミノキシジルには、内服薬と外用薬の2種類があります。どちらもAGAによる薄毛によく使用されている治療薬です。飲むのか塗るのか、というのが大きな違いですが、実はそれ以外にも違いがあります。

ミノキシジル内服薬

ミノキシジルの内服薬は、日本皮膚科学会が公表している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」では、推奨度D(行うべきではない)とされているものです。「行うべきではない」と言われると効果がないかのように思ってしまいますが、決してそのようなわけではありません。

AGA治療薬としてのミノキシジル内服薬は、まだ国内で臨床試験が実施されていない等の背景から、安全性等を考慮して推奨度が決められていると考えられます。

しかし、過去の研究では、AGAの患者に1日5mgのミノキシジルを24週間にわたり服用してもらったところ、薬を服用したすべての方で改善が見られています。多毛症のリスクはあるものの、ミノキシジルの服用を止めなければいけないほど重い症状が出た方は確認されていません。海外では既にAGA治療薬として認可を受けている実績もあり、ミノキシジル内用薬の効果と安全性は比較的高いものと言えるでしょう。

外用薬ではかゆみの副作用が出ることも多いため、外用薬の使用が合わなかった方の次の選択肢として使用されています。

ミノキシジル外用薬

ミノキシジルの外用薬は、「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」で推奨度A(行うよう強く勧める)とされている治療薬です。市販でもミノキシジル配合の発毛剤が購入できます。市販だとミノキシジルの配合濃度が1%と5%のものがありますが、5%のほうが発毛効果は高めです。

国内で行われた試験では、24週間にわたりミノキシジルの外用薬を使ってもらったところ、1%を使用したグループでは髪の毛の本数がベースラインから平均15.4本、5%を使用したグループでは平均21.8本の増加が見られました*。クリニックではさらに濃度が高い7~15%のミノキシジルを扱っていることもあります。
*¹ 大正製薬『リアップX5プラスネオの発毛効果データ』参照

内服薬の方が効果が高いが体毛も増えやすい

ミノキシジルは、外用薬と内服薬で効果も副作用も違うことが特徴です。基本的に、外用薬よりも内服薬のほうが効果が出やすいと考えられています。内服薬のほうが血液中にしっかりと吸収されて毛母細胞へと働きかけやすいためです。

ただし、体毛が濃くなる副作用は内服薬のほうが出やすくなります。参考までに、市販されているミノキシジルの外用薬であるリアップX5プラスネオの説明書には、多毛については一切記載がありません。

しかし、内服薬であっても、クリニックで適切な治療を受け、副作用が出た場合は早めに医師や専門家に相談することで、リスクは最小限に抑えることができます。外用薬でも多毛症のリスクがまったくないというわけではないので、副作用や効果の高さを加味して自分に合った適切な治療を受けるようにしましょう。

ミノキシジルその他の副作用

ミノキシジルの副作用は、体毛が濃くなる以外にも報告されています。

〈ミノキシジルの内服薬の副作用〉

  • 頭痛
  • 皮膚の炎症
  • めまい
  • 胸痛
  • 心拍数の増加
  • 手足のむくみ

〈ミノキシジルの外用薬の副作用〉

  • 頭皮の発疹、発赤、かゆみ
  • 使用部位の灼熱感
  • 頭痛
  • めまい
  • 胸痛
  • 心拍数の増加
  • 手足のむくみ
  • 体重増加

ミノキシジルの外用薬では、塗布した部位のかゆみや発疹などがもっとも多い副作用で、6%程度の方に見られるといわれています。

フィナステリドは比較的体毛が濃くなりにくい

AGAの治療薬には、ミノキシジル以外にフィナステリドやデュタステリドなどの内服薬もあります。いずれもミノキシジルと同様に、AGA治療の第一線として使用されている治療薬です。これらの治療薬との違いについても確認しておきましょう。

フィナステリドとデュタステリドは脱毛予防剤

フィナステリドとデュタステリドは、ミノキシジルとは違う作用によってAGAを改善します。

AGAを発症する原因は、ジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンです。DHTはテストステロンに5αリダクターゼ(5α還元酵素)が働くことで作られます。

2種類ある5αリダクターゼのうち、フィナステリドはⅡ型を、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方を阻害することでジヒドロテストステロンが作られないようにします。。ミノキシジルと違って「発毛を促す」のではなく「脱毛を予防」する方向に働くため、服用しても体毛が濃くなることは基本的にありません。

フィナステリド(プロペシア)の副作用

フィナステリドは、プロペシアという商品名でもよく知られている内服薬です。副作用としては、おもに次のものが知られています。

  • かゆみ・蕁麻疹・発赤
  • 睾丸痛
  • 性機能障害
  • 肝機能障害
  • 抑うつ症状

ミノキシジルと大きく違うのは、体毛が濃くなる副作用がない代わりに、性機能障害が出やすいことです。フィナステリドを1日5mgを50~75歳の男性に2年間服用してもらったところ、射精障害や勃起機能不全などの副作用が10%の方で見られました。妊活中の方は注意して服用したい薬と言えるでしょう。

デュタステリド(ザガーロ)の副作用

デュタステリドは、ザガーロという商品名で処方されることもある治療薬です。副作用としては、次のようなものが知られています。

  • 蕁麻疹・アレルギー反応
  • 性機能障害
  • 浮動性めまい
  • 抑うつ気分
  • 多毛症
  • 肝機能障害

デュタステリドも、フィナステリドと同様に性機能障害が見られやすいことが特徴でしょう。臨床試験では、デュタステリドを使用した557例のうち95例(17.1%)で副作用が見られています。このうち勃起不全が4.3%、リビドー減退が3.9%、精液量減少が1.3%でした。

また、頻度不明ですが、多毛症の副作用も報告されています。約5人に1人で多毛症が見られるミノキシジルの内服薬と比べると頻度はかなり少ないものの、リスクがゼロではないことに注意しましょう。

女性もミノキシジルを使うと体毛が濃くなる?

女性でもミノキシジルによって体毛が濃くなる可能性があります。ただし、男性と同様に外用薬で体毛が濃くなることはめったにありません。内服薬の場合は効果が出やすいこともあり、外用薬と比べると副作用が出やすいと考えられます。

外用薬であれば、使用する際に注意すればある程度は副作用を緩和できるでしょう。頭皮に塗る際は液がたれてこない程度の適量を塗布するよう、気をつけてください。顔や腕など頭皮以外にミノキシジルがついた場合は、すぐに拭き取りましょう。

どうしても体毛が気になる場合は、内服薬から外用薬に変えたり、ほかの治療法への変更を医師に相談してみることをお勧めします。

体毛を濃くせずに髪だけを増やす方法

抜け毛を減らしたい気持ちはあっても、体毛が濃くなる可能性があると聞くと、治療をためらってしまうこともあるでしょう。体毛が濃くなることで、外出しづらくなったり自己処理にお金がかかったりしてしまいます。人によっては、脱毛に通うことを検討される方もいるかもしれません。

AGA治療薬で髪の毛だけを増やすことは難しい

体毛が濃くなるリスクを完全にゼロにすることは、残念ながら難しいものです。人によって体毛に変化がないこともありますが、ミノキシジルを服用している限りリスクはどうしてもつきまといます。

しかし、体毛の増加が見られた場合、服用を中止すれば次第に落ち着いてくるため、過度な心配は必要ありません。どうしても副作用が心配な方は、体毛の増加が出にくいフィナステリドやデュタステリドなどの内服薬に切り替えるのも1つの方法です。医師と相談しながら、自分にとって最善の治療を進めていきましょう。

メソセラピーや植毛を選ぶ

メソセラピーとは、髪の毛の成長に必要な成分を注射で頭皮に直接注射する治療方法です。男女問わず治療を受けることができ、副作用がほとんどないことで知られています。

ミノキシジルやフィナステリド、デュタステリドなどは効果を実感できるまでに4〜6ヶ月かかりますが、メソセラピーはこれらの治療と比べると早く効果が出やすいことも特徴です。

このほかに、植毛を行うのもよいでしょう。植毛は施術を受けた部分しか髪の毛が増えないため、体毛が増える心配は一切ありません。

しかし、いずれも外用薬・内服薬と比較すると、費用面では高くなったり、注射や施術など侵襲性(体に大きな負担をかける可能性)がやや高くなる点も特徴です。まずは開始しやすいAGA治療薬で治療開始し、副作用が気になる場合は医師と相談して治療法を変えていく順番をお勧めします。

体毛の処理をしながら治療を続ける

ミノキシジルで体毛が濃くなってきた場合、自分で剃ったり脱毛に通ったりして治療を続けている方もいます。体毛の処理を行うのは面倒かもしれませんが、ミノキシジルで発毛効果が出ているのに服用を止めたくないという方にはよい方法です。

脱毛に通う場合は、脱毛サロンよりもクリニックで受けられる医療脱毛のほうが効果は高くなります。医療脱毛のほうが費用はかかりますが、毛根を破壊できるため短期間で体毛を減らすことも可能です。うまく体毛の増加と付き合いながら治療を続けられると、ストレスを感じることなく治療を続けられるでしょう。

副作用を必要以上に怖がらないことも大切

ミノキシジルで体毛が濃くなる可能性はありますが、すべての方が濃くなるわけではありません。多毛症の副作用が出る確率は、内服薬を使用した場合約5人に1人です。副作用が気になる場合は服用を止めれば体毛も落ち着いてきます。

フィナステリドやデュタステリドなどほかの内服薬もありますが、発毛を促進させる効果があるのはミノキシジルのみです。副作用を恐いと感じるのは仕方のないことですが、過度に心配せずに医師と相談しながら治療を進めていきましょう。

もし副作用を恐れて治療を始めないままでいれば、髪の毛が増えることはありません。AGAは発症すると止まることなく症状が進んでいき、発症から時間が経てば経つほど治療効果が出づらくなるものです。もしヘアボリュームをキープしたい、増量したいと思われている場合は、早めに医師の診察を受けて、治療の一歩を踏み出してみてください。

ミノキシジルは発毛効果のあるAGA治療薬

ミノキシジルには発毛を促す働きがあるため、頭皮以外にも働きかけて体毛を増やしてしまう可能性があります。ただし、外用薬ではあまり見られず、内服薬の副作用として見られることがほとんどです。

体毛の副作用が気になる方は、医師と相談しながら内服薬から外用薬に変えたり、フィナステリドやデュタステリドなどほかの治療薬に変えたりしてみてください。

体毛が濃くなると聞くと、治療を躊躇してしまうこともあるでしょう。しかし、AGAは治療をしなければ症状が進む一方です。明るい未来を手に入れるためにも、副作用を恐れすぎずにまずは医師へご相談ください。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

※本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。

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