白髪が多い人はハゲないのは真実なの?白髪と薄毛の関係性や対策方法
白髪だからハゲないという噂には根拠がありません。白髪と薄毛のメカニズムはそれぞれ異なります。白髪の対策が薄毛の予防に功を奏する場合がありますが、AGAの場合にはクリニックの受診が必要です。
「白髪が多いとハゲないって本当?」
「白髪はどうしてできるの?」
白髪と薄毛が気になる方でこんな疑問を持っている方は多いはずです。
巷では「白髪が多い人はハゲない」という説がささやかれていますが、果たして本当なのでしょうか。
この疑問を解消するには、白髪と薄毛それぞれの原因を理解しておくと良いでしょう。
そこで、今回は白髪のメカニズムや薄毛との関係、白髪の対策法などを解説します。
■ 本記事のサマリ
- 白髪とハゲには直接的な関係はない
- しかし、白髪とハゲに共通する原因は複数存在する
- バランスの良い食生活や睡眠不足解消等、生活習慣の改善は白髪とハゲ両方の対策になる
- しかし、男性の薄毛の原因のほとんどを占めるAGA(男性型脱毛症)は生活習慣だけでは改善されない
- AGAの改善にはクリニックでのAGA治療が必要
白髪とハゲに直接的な関係はない
白髪が多いとハゲない説は本当なのでしょうか。ここでは、噂の真偽を白髪のメカニズムを交えて解説します。
「白髪=ハゲない」に根拠はない
白髪とハゲに因果関係はありません。
なぜなら両者が起こるメカニズムは異なり、それぞれに違った原因を持つからです。
ハゲはホルモンバランスの乱れや栄養不良、血行不良などで髪を作る毛母細胞の活性が弱まり起きます。
一方、白髪は毛母細胞に黒色色素を渡す色素細胞に弱化や減少が見られたときに生じるものです。
髪がふさふさのまま白髪になる人がいれば、白髪と薄毛が同時に進行する人もいます。
したがって、「白髪だからハゲない」という噂は嘘といえるでしょう。
白髪になるメカニズムを解説
ここで白髪になるメカニズムを解説しましょう。
そもそも、髪は毛根に生まれた時点では色がなく、成長とともに徐々に黒くなっていきます。
髪が黒く色づくのは、毛根の色素細胞「メラノサイト」の生成する黒色色素「メラニン」が毛母細胞に移行するからです。
産毛の色が薄いのはメラニンが十分に行き渡る前の状態だからでしょう。
白髪は何らかの理由でメラニンが髪に行き渡らなくなってしまうことで生じます。
メラニン色素の供給が阻害される主な理由は下記です。
- メラノサイトの減少や機能低下
- メラニンの生成に働く酵素の機能低下
- メラニンの原料となる栄養素の枯渇
- メラニンの毛母細胞への移行の阻害
メラニン色素の働きが無くなった髪の毛は無色透明ですが、光が当たると白く目立つため白髪と呼ばれます。
白髪になってしまう原因
白髪が増える原因は生活習慣の乱れや加齢、遺伝などさまざまです。ここからは、それぞれの原因について解説していきます。
栄養が不足している
白髪の原因の一つに栄養不足があります。
特にタンパク質の不足は白髪につながりやすい問題です。
髪の主成分であるタンパク質「ケラチン」は18種類のアミノ酸から構成されています。
そして、メラニンの原料となる「チロシン」もケラチンを構成するアミノ酸の一つです。チロシンは優先的にケラチンの合成に使われ、余剰分がメラニンの合成に使われます。
したがって、タンパク質の不足があっては髪に十分なメラニンが行き届きません。
現代人に多いカップ麺や菓子パン、コンビニ弁当などには黒髪に必要な栄養素がほとんど含まれていない上、糖質や食品添加物、トランス脂肪酸など体に負担をかける成分が多く含まれています。
慢性的な食生活の乱れは白髪に直結する問題といえるでしょう。
睡眠が十分に取れていない
睡眠不足もまた白髪になりやすい頭皮環境につながります。
なぜなら、睡眠不足は頭皮の血行不良を招くからです。
本来、睡眠中は脳が休まる時間帯ですが、浅い睡眠や寝不足があっては脳が十分に休まらず正常な機能を維持できません。
脳の視床下部には自律神経の中枢がありますが、睡眠不足による脳機能の低下は自律神経の乱れを引き起こします。
自律神経は体内の不随意筋をコントロールして内臓の機能や血流の維持に24時間働き続けているところです。自律神経が乱れると血行不良が起き、頭皮への血流が低下してしまいます。
メラノサイトの活性に必要な栄養や酸素が血によって運ばれなくなると、白髪になりやすい状態を生み出してしまうでしょう。
ストレスが溜まっている
「ストレスで白髪が増えた」とはよく耳にするフレーズですが、ストレスの蓄積が白髪を進行させるのは本当です。
人はストレスに直面すると目前のトラブルを乗り越えるために交感神経を優位にさせ、血圧や心拍を上げて戦闘体制に入ります。
しかし慢性的なストレスで交感神経が働き続ける状態では血管が収縮し、血行不良につながりかねません。
また、交感神経が優位な状態で分泌が増える神経伝達物質「ノルアドレナリン」には白髪を加速させる作用があるといわれています。
ハーバード大学による研究ではノルアドレナリンにメラノサイトを枯渇させる作用がある*とわかりました。
*Bing Zhang, et al. Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells. Nature. 577: 676-681 (2020).
ストレスには細胞に有害な活性酸素を大量に発生させる働きもあるため、白髪の大敵といっても過言ではないでしょう。
紫外線の影響
紫外線は白髪ができる原因のひとつです。
紫外線は頭皮を透過して細胞に有害な活性酸素を発生させます。
活性酸素によりメラノサイトの機能が弱まったり毛母細胞へのメラニン移行が上手くいかなくなったりすると、白髪になりやすくなります。
特に、頭頂部や分け目は強い紫外線を受けやすくなるため、注意が必要です。
また、紫外線による活性酸素はメラノサイトだけでなく、髪を作る毛母細胞や毛乳頭細胞、表皮細胞などあらゆる細胞にダメージを与えます。
強い紫外線に晒され続けると、白髪とともに抜け毛や頭皮の炎症なども生じる恐れがあるでしょう。
加齢によるもの
加齢にともなう白髪の進行は多くの人に見られることです。
年齢とともに白髪が徐々に増える理由は、色素幹細胞の異常にあります。
毛球部の上部にあるバルジ領域に位置する色素幹細胞は、分化することでメラノサイトを作り毛球部に供給する役割を持つ細胞です。
色素幹細胞がメラノサイトを供給し続けることで黒髪は保たれます。
色素幹細胞に起きる異常とは、本来毛球部で分化するはずの色素幹細胞が毛球部よりも上部のバルジ領域で分化してしまい、メラノサイトが毛球部に行き届かなくなってしまう状態です。
この異常が続くと色素幹細胞は枯渇し、毛母細胞へのメラニン供給源が無くなってしまいます。色素幹細胞の異常を引き起こす要因とされるのが、加齢による遺伝子の損傷です。
遺伝的要素
白髪のできやすさには遺伝的な要因もあります。
2016年に行われたロンドンカレッジ大学による研究では、髪色を左右する遺伝子「IRF4」が白髪の発症にも作用することがわかりました*。
*Kaustubh A, et al. A genome-wide association scan in admixed Latin Americans identifies loci influencing facial and scalp hair features. Nat Commun. 2016;7:10815.
メラニンの生成力にはIRF4による個人差があるため、生活習慣の乱れや加齢が無くても白髪を発症する可能性が大いにあります。
親族に白髪の人が多ければ自身も同じ要素を引き継いでいるかもしれません。
白髪と薄毛(ハゲ)に共通する原因も多い
白髪と薄毛には直接的な関係がありませんが、原因を共有している場合があります。
なぜなら、白髪も薄毛も頭皮の細胞や酵素、遺伝子がさまざまな原因で正常に働かなくなることで生じるからです。
例えば以下のような生活習慣は頭皮環境を乱し、薄毛と白髪の両方を引き起こします。
- 栄養の不足
- 寝不足や浅い睡眠
- ストレスの蓄積
- 紫外線の照射
これらの項目は細胞に有害な活性酸素を発生させたり細胞の代謝に必要な栄養・酸素が血によって運ばれるのを阻害したりするものです。
頭皮環境を悪化させる習慣は白髪だけでなく薄毛にもつながるリスクがあることを考慮しておきましょう。
白髪と薄毛(ハゲ)の対策方法
白髪と薄毛を改善するには頭皮環境を良好に保つ心がけが重要です。ここでは、それぞれの対策方法を解説します。
栄養バランスの取れた食事をする
白髪と薄毛の対策にはバランスの良い栄養を取り入れることが大切です。
以下に白髪と薄毛、両方の改善に役立つ栄養素を紹介します。
白髪と薄毛、両方の改善に役立つ栄養素
これ以外にもビタミンB群やイソフラボンの摂取も大切です。
アミノ酸バランスの良いタンパク質を中心に、ビタミンやミネラルを効率的に摂取できるメニューを心がけましょう。
睡眠不足を解消する
良質な睡眠は頭皮の健康をサポートし白髪や抜け毛を対策するものです。
細胞の再生や修復に働く成長ホルモンは睡眠中に分泌され、特に入眠後の3時間に盛んに分泌されます。
髪を黒くするメラノサイトや色素幹細胞、色素幹細胞のあるバルジ領域の正常化にはスムーズな入眠が大切です。
また、先にお伝えしたように十分な睡眠は自律神経を整え、血行も促進します。
睡眠の質を高めるには、寝る1時間前の入浴がおすすめです。
私たちの体には睡眠時に脳を休めるために、入眠とともに手先足先から放熱し深部体温を下げる働きがあります。
入浴後の放熱による体温低下を利用して布団に入ると、深い眠りにつきやすくなるでしょう。
ストレスを溜め込まない
白髪の大敵であるストレスの回避は、白髪の防止に役立ちます。
ストレスを解消するには歩行やサイクリング、ジョギングなどのリズム運動がおすすめです。
リズム運動には自律神経の調整に働くホルモン「セロトニン」を活性させ、ストレスで乱れた自律神経のバランスを整える作用があります。
また、自分にとってのストレッサーが何であるのかを知ることも大切です。
ストレスを引き起こすのは心労だけではなく、身体的な疲労や気温・気圧の変化、農薬や食品添加物の摂取などさまざまにあり、いずれも抗ストレスホルモンの分泌を促し栄養素の消耗や活性酸素の発生をともないます。
ストレスとなる事象を意識的に回避できればストレスを溜め込まずに済むでしょう。
紫外線対策をする
白髪の進行を加速させる紫外線を防ぐには、普段から帽子や日傘を用いたり日陰を通ったりする心がけが有効です。
また、日焼け止めスプレーを頭皮に使ってみても良いでしょう。
日焼け止めスプレーにはスプレータイプとミストタイプがあります。
SPFの高さを重視したいのであればスプレータイプ、頭皮への優しさを重視したいのであればミストタイプがおすすめです。
また、紫外線による頭皮へのダメージを減らすには、頭皮を保湿してバリア機能を高めておく必要があります。
頭皮用のローションなどでケアしておくと良いでしょう。
薄毛の原因がAGA(男性型脱毛症)の場合は治療が必要
白髪の防止にも有効な薄毛対策を先に紹介しましたが、実のところ男性の薄毛の原因のほとんどはAGAが占めると言われています。
薄毛の原因がAGAである場合は自力での改善が困難なため、クリニックでの治療が必要です。
ここで、AGAが発症する過程を確認しましょう。
- 男性ホルモン「テストステロン」と体内の酸化酵素が結合し、男性ホルモン「DHT」が生まれる。
- DHTと男性ホルモン受容体が結合し、脱毛因子が発生する。
- 脱毛因子の影響で髪の軟毛化や短毛化、抜け毛の増加が起きる。
以上の過程を経てAGAによる脱毛は起きます。
AGAには遺伝的な要因があるため、生活習慣の改善などで進行を食い止めるのは困難です。
そもそも薄毛の原因がAGAかどうかの判断が難しい場合もあるため、薄毛を改善したい、と思った段階で、クリニック等医療機関へ相談してみることをお勧めします。
また、クリニックでのAGA治療でおすすめなのは投薬治療です。
内服薬は抜け毛の防止や発毛に確かな効果が期待できる上、ダウンタイムの心配がなく、万が一副作用が生じても薬の減量や中断をすぐに医師に相談できます。
また、運営コストのかからないオンラインクリニックを選べば薬にかかる費用を大幅に減らせるのも大きなメリットです。
白髪や薄毛(ハゲ)にまつわるQ&A
ここで、白髪や薄毛が気になる方に多い疑問を紹介しましょう。
白髪を抜くと増えてしまうのは本当?
白髪を抜くとかえって白髪が増えてしまうことがあります。
なぜなら髪の毛を無理に抜くと、毛根周辺の組織にダメージが加わり、メラニンの減少や毛母細胞へのメラニン供給の低下が起こり得るからです。
また、通常一つの毛穴から2,3本の髪が生え出ていますが、白髪を抜くと同じ毛穴から生えている他の髪にもダメージが及ぶ恐れがあります。
白髪を減らす処置がしたい場合、白髪の根元付近で切断することがおすすめです。
白髪を抜くと薄毛になってしまうの?
白髪を抜くことは薄毛の直接的な原因にはなりません。
しかし、白髪を無理に抜いたり何度も抜き続けたりすることで薄毛に繋がる恐れがあります。
髪を作る毛母細胞は血によって運ばれる栄養素や酸素を毛乳頭を通して受け取り、分裂と増殖を繰り返しています。
しかし髪を抜いた際に毛乳頭が傷つくと髪に必要な成分を血から受け取れなくなり、髪が2度と生えなくなってしまいかねません。
また、何度も白髪を抜き続けることで次第に毛穴が消失していくケースもあります。
「白髪はハゲない」には根拠がない!薄毛治療はクリニックへ
「白髪の人はハゲない」という巷の噂には明確な根拠がありません。
なぜなら、白髪と薄毛が起きる原因やメカニズムはそれぞれで異なるからです。
しかし、白髪と薄毛には共通する原因もあり、白髪にともなって薄毛も起こる場合があります。
生活習慣による頭皮環境の悪化が起因している場合、良質な睡眠やバランスの良い栄養を心がけることで白髪と薄毛の双方を改善できるでしょう。
なお、AGAは自力での改善が難しいため、クリニックでの治療が必須です。
「最近抜け毛が増えたな」と感じ始めたら、AGAクリニックの無料相談を活用してみましょう。
天野 方一 先生
ヘアテクト 顧問医師
日本抗加齢医学会専門医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
- 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
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