ヘアサイクル(毛周期)と薄毛の関係は?乱れる原因や正常化する対策

ヘアサイクルとは髪が毛根にできてから自然に抜け落ちるまでの周期を指します。ヘアサイクルの乱れの原因はAGAをはじめ、ストレスや生活習慣の乱れなどです。AGAによる脱毛は生活習慣の改善では治せないため、クリニックの受診が必要になります。

目次

薄毛や抜け毛について調べていると頻繁に目にするのが「ヘアサイクル」という言葉です。

ヘアサイクル(毛周期)とは毛髪の誕生から自然脱毛に至るまでの流れを指すもので、薄毛やAGAなどの脱毛症の改善を目指す方は理解を深めておく必要があるでしょう。

そこで今回は、ヘアサイクルの概要や周期が乱れる原因、薄毛の対策方法などを詳しく解説します。

■ 本記事のサマリ

  • ヘアサイクルとは髪の生え変わりサイクルで1周するのに2~6年程度かかる
  • ヘアサイクルが乱れて髪の成長期が短くなると、薄毛に繋がる可能性がある
  • ヘアサイクルの乱れはAGA(男性型脱毛症)や生活習慣の乱れが影響する
  • AGAが原因の場合、クリニックでの治療が必須となる
  • 原因の特定は難しい場合もあるため、軟毛化・短毛化が見られたらまずは医師に相談すること推奨

ヘアサイクル(毛周期)とは?仕組みを解説

ヘアサイクルとは髪の毛が毛根にできてから自然に抜け落ちるまでの周期を指し、次の3段階に分かれています。

  • 成長期
  • 退行期
  • 休止期

ここでは、それぞれの期間で起こる事象をお伝えしていきます。

成長期|髪が成長

毛細血管から運ばれた栄養と酸素を受け取り、毛乳頭で髪の毛が作られている状態が成長期です。

毛母細胞が分裂と増殖を繰り返すことで形成された髪は、毛球部から表皮へと押し上げられるように太く長く伸びていきます。私たちが髪の毛と認識している毛幹の部分は角化した毛母細胞の集まりです。

髪の成長期は正常な状態では2年から6年程度あります。

また、ヘアサイクルに乱れがない頭髪では全体の9割を占めるのが成長期にある髪です。

退行期|髪の細胞分裂が減少

毛母細胞の活動が弱まり、髪の毛の成長が次第に緩やかになっていくのが退行期です。

退行期は2週間から3週間程度あり、毛球部が毛乳頭から離れ、次第に表皮へと押し上げられていきます。

また、髪をメラニン色素で黒く色づける細胞「メラノサイト」の働きが弱まるのも退行期です。

正常なヘアサイクルで抜け落ちた髪の毛根が白い理由は、メラノサイトの寿命が尽きる点にあります。

正常な頭皮環境では退行期の髪の割合は全体の約1割ほどです。

休止期|髪が抜ける

休止期は退行期の延長にあり、髪を作る細胞分裂が完全に止まり、髪の毛の成長が休止する時期です。

3ヶ月程度ある休止期では、毛乳頭が新たな髪を作り始めると同時に、古い髪が頭皮へと押し上げられ、自然に抜け落ちます。

正常なヘアサイクルでは休止期にある髪の毛は全体の1割程度です。

ヘアサイクルについて知っておくべきこと

誰しもが持つヘアサイクルですが、脱毛に悩む方の多くにはずヘアサイクルの乱れがあるものです。ここでは、薄毛とヘアサイクルの関係性を具体的に解説しましょう。

髪が抜けるのは自然なこと

正常なヘアサイクルでも、髪が毎日抜け落ちるのは自然な現象です。

そもそも髪の毛一本一本にはそれぞれ違ったヘアサイクルがあり、抜け毛は一定の周期で一気に起きるものではありません。
一つひとつのヘアサイクルに応じて休止期を迎えた髪が毎日少しずつ抜け落ちているものです。

通常、1日に50本から100本程度の自然脱毛があります。
また、抜け毛は季節の変わり目や体調不良時に増えるものです。

したがって、ブラッシングやシャンプーなどで多少の抜け毛があるからといって、必ずしもヘアサイクルが乱れているわけではありません。

ヘアサイクルの乱れが成長期を短くする

血行不良や栄養不足などの理由でヘアサイクルに乱れが起きると、本来なら2年から6年程度ある髪の成長期が大幅に短くなり、相対的に休止期が長くなってしまいます。

成長を続けられず休止期に突入してしまった髪の特徴は、短く弱々しい点です。

産毛のような未熟な抜け毛が増えたり今ある髪にボリュームダウンが見られたりする場合、何らかの理由で頭皮環境が悪化し、ヘアサイクルに乱れが起きているのかもしれません。

ヘアサイクルの乱れを放置すると薄毛に

ヘアサイクルの乱れが続くと薄毛につながる可能性があります。

なぜなら、成長期の短縮によって髪の毛の寿命が短くなると、大量の抜け毛が起きるからです。

また、髪の短毛化・軟毛化によるボリュームダウンは頭皮の地肌を目立たせる要因になります。

ヘアサイクルの乱れを示す症状である抜け毛の増加や抜けた毛の短毛化、今ある髪のボリュームダウンがあれば、早急に原因を突き止め、薄毛の対策を検討する必要があるでしょう。

ヘアサイクルが乱れる原因

ヘアサイクルの乱れには栄養の不足や血行不良、ストレスなどさまざまな要因があります。ここではヘアサイクルを乱す生活習慣を解説していきましょう。

偏った食生活が続いている

食生活の乱れはヘアサイクルが乱れる要因の一つです。

先にお伝えしたように、髪の毛の形成は血液によって運ばれる栄養素や酸素を材料に毛母細胞が分裂を繰り返すことで行われます。
この毛母細胞の活動は絶えず行われているため、多くの栄養素を要しています。

偏った食生活は髪の毛の材料となる栄養素の枯渇を招き、髪の成長期を大幅に短縮させるものです。

体に取り込まれた栄養素は生命の維持に必要な部位から使われ、髪や爪などの無くても困らない部位には栄養の供給が後回しになります。日常的な栄養不足がある場合、髪に必要な栄養素が運ばれなくなってしまい、薄毛につながりやすくなるのです。

不規則な生活を送っている

起床時間や就寝時間、食事時間にばらつきのある不規則な生活はヘアサイクルの乱れにつながります。

そもそも私たちの体には体内時計が存在し、常に1日を概ね24時間としたリズムを刻んでいます。体内時計を司るのは脳の視床下部であり、全身の細胞は視床下部と連動することで末梢時計としてリズムを刻んでいます。

この体内時計に則って、分泌されるのが睡眠物質「メラトニン」です。メラトニンには起床してから14〜16時間後に分泌が始まる規則性があります。シフト勤務や夜勤、夜ふかしなどによる体内時計にそぐわない不規則な生活リズムは、自然な眠りを妨げ睡眠の質を低下させるものです。

睡眠の質の低下は脳の働きを弱め、自律神経の乱れを引き起こします。

交感神経と副交感神経がアンバランスな状態は血行不良やストレスの蓄積、食欲の低下など頭皮環境の悪化につながる問題に直結するものです。

ストレスが溜まっている

ストレスの蓄積は血行不良や栄養不足、細胞に有害な活性酸素の発生を引き起こし、ヘアサイクルの乱れの要因となるものです。

ストレスが発生すると私たちの体はストレッサーに抵抗するために副腎皮質から抗ストレスホルモンが生成され、血圧や血糖、体温が上昇します。

血糖を上昇させるために分解されブドウ糖へと変えられるのがタンパク質であり、抗ストレスホルモンの生成過程で使われるのがビタミンCやビタミンEです。

これらの栄養素はいずれも頭皮環境の維持や髪の形成に欠かせません。

また、血圧を上昇させるために血管が収縮された状態が続けば血行不良が起きます。
頭皮の血管はほとんどが毛細血管であるため、血行不良になりやすい部位です。

さらに、ストレス過多の状態では不安定な血流や抗ストレスホルモンの合成により活性酸素が発生します。
体内に活性酸素が増えると起こるのが、毛母細胞や毛乳頭細胞の弱化と活性酸素の除去に使われるアミノ酸やビタミン、ミネラルなどの消耗です。

ストレスはヘアサイクルの大敵といえるでしょう。

ヘアサイクルの乱れを正常化させる方法

ヘアサイクルを整えるには、頭髪に悪影響となる習慣を一つずつ改善していく必要があります。ここからはヘアサイクルの正常化に有効な対策とその理由を見ていきましょう。

食生活を改善する

髪の毛の材料となる栄養素で最も重要なのが良質なタンパク質です。

そもそも髪の8割から9割はケラチンというタンパク質で構成されています。ケラチンは18種類のアミノ酸からできており、どれか一つのアミノ酸が欠けていればケラチンは成り立たなくなります。したがって、アミノ酸バランスの良いタンパク質が髪にとって必要です。

また、ビタミンB群ビタミンC亜鉛などもケラチンの合成や毛母細胞の活性、頭皮環境の維持をサポートする栄養素です。

ヘアサイクルを正常化するにはタンパク質を中心とした定食スタイルの食事がおすすめです。主菜・副菜をバランス良く取り入れたり、不足分をプロテインやサプリメントで補ったりすると良いでしょう。

生活習慣を改める

乱れたヘアサイクルを整えるには生活習慣の改善がおすすめです。

まずは睡眠の質を高めるために起床時間と就寝時間を決めた規則正しい生活を送りましょう。

睡眠中は細胞の修復や再生、活性をサポートする成長ホルモンが分泌される時間帯です。特に寝入りの3時間は最も成長ホルモンが分泌されるタイミングとなるため、体内時計に沿った自然な入眠を意識することが大切です。

また、喫煙や飲酒の習慣も控えることをおすすめします。

タバコに含まれるニコチンやアルコールの代謝過程でできるアセトアルデヒドなどは体内で分解される際に活性酸素を発生させ、毛母細胞の弱化や栄養素の消耗を引き起こすものです。

頭皮環境にとって悪影響となる習慣を改善することで、ヘアサイクルの正常化を目指せるでしょう。

適度にストレスを発散する

頭皮環境の大敵であるストレスを無くせば、ヘアサイクルが整っていく可能性が高まります。

ストレス時には交感神経が優位になりがちなため、ストレスの発散には自律神経を安定させたり副交感神経が優位になったりする試みがおすすめです。

例えば、歩行やサイクリング、深呼吸などのリズム運動は自律神経を調整する作用のあるホルモン「セロトニン」の分泌を促します。また、ぬるま湯での入浴やリラックスタイム、軽いストレッチなどは副交感神経を優位にする試みとしておすすめです。

生活スタイルに取り入れやすいストレスの発散方法を見つけ、無理のない範囲で継続してみましょう。

ヘアサイクルが乱れる原因の多くはAGA

ここまで、ヘアサイクルを乱す生活習慣についてお伝えしてきました。

しかし、実はヘアサイクルの乱れを起こして薄毛を引き起こす多くの原因はAGA(男性型脱毛症)と言われています。

ヘアサイクルの乱れがAGAによるものである場合、自力で治すのは困難です。

以下ではAGAのメカニズムや治療法を解説します。

ヘアサイクルの乱れの原因の多くがAGA

ヘアサイクルの乱れを引き起こす生活習慣を先にお伝えしましたが、男性に起こる薄毛の主な原因はAGAにあります。

日本皮膚科学会ガイドラインでは、20代で約10%、30代で 20%、40代で30%、50代以降で40数%の男性がAGAを発症するとされています。

AGAとは男性ホルモンの「テストステロン」が体内の酸化酵素と結びつくことで脱毛の引き金となる男性ホルモン「ジヒドロテストステロン」が生成され、起こる脱毛症です。

ジヒドロテストステロンは毛乳頭内で男性ホルモン受容体と結合することで脱毛因子を生成し、毛母細胞にダメージを与えます。
毛母細胞が活動をやめてしまうことでヘアサイクルに乱れが生じ、髪の軟毛化・短毛化や抜け毛が起こるのがAGAの症状です。

AGAが原因の場合は治療が不可欠

AGAは先にお伝えした生活習慣の改善では治せません。

なぜなら、AGAには遺伝的な要因があるからです。AGAの発症を左右する酸化酵素の活性度や男性ホルモン受容体の感受性は、遺伝によって引き継がれる性質です。

AGAは遺伝の関与度が大きいこともわかっており、その遺伝率は 81%とも言われています。

遺伝的な要因は自力での改善が難しいため、クリニックでの治療が必要不可欠です。

AGAは進行性の脱毛症であるため、放置しておくと生え際やつむじ周りからハゲが進行していきます。

重症化する前に医師による適切な治療を検討することをおすすめします。

AGAは投薬治療からが一般的

AGA治療には次の方法があります。

AGA治療の種類

AGA治療の中で最も広く用いられているのが内服薬による治療です。

内服薬ではAGAの引き金となる酸化酵素を抑えられる他、施術後のダウンタイムや高額なコストもありません。

AGAの状態によっては内服薬だけで薄毛の進行を食い止められるケースもあることから、内服薬での治療を中心に必要に応じてその他の治療を検討する流れが一般的です。

なお、AGA治療を行う上で注意すべき点として、治療が遅くなるほど効果が出にくくなると言われており、この理由にもヘアサイクルが関係しています。

髪の毛の元となる毛母細胞は、ヘアサイクルが何周かしたタイミングで寿命を迎えます。
寿命を迎えた毛母細胞からは髪の毛が生えてきません。

AGAの場合、ヘアサイクル自体が短くなっているため、治療が遅くなると多くの毛母細胞が寿命を迎えてしまい、どんなに髪を生やそうとしても生えてくる髪の絶対量が減ってしまうのです。

もし今のヘアボリュームを維持したい、改善したいと考えている場合は、早めのクリニックへの相談をおすすめします。

ヘアサイクルにまつわるQ&A

最後に薄毛やAGAが気になる方によく挙がるヘアサイクルに関する疑問にお答えしていきましょう。

ヘアサイクルは一生のうち何回行われる?

ヘアサイクルは一生のうち15回から20回程度繰り返され、男性が35年、女性が46年続くといわれています。

前述の通り、毛根が寿命を迎えるとヘアサイクルの営みは終わり、新たに髪の毛が生えることはありません。

一生のうちに行われるヘアサイクル数は個人によって異なりますが、限度があることを踏まえるとヘアサイクルを乱すAGAは早期での対策が必要といえるでしょう。

ヘアサイクルの乱れは何歳でも改善できる?

ヘアサイクルの乱れは対応が遅ければ改善できない可能性があります。なぜなら、毛母細胞の分裂回数には限度があるといわれているためです。

アメリカの生物学者、レナード・ヘイフリックが唱えた「ヘイフリックの法則」では、ヒトの細胞は一生のうち50回程度の分裂を繰り返したのち、アポトーシス(細胞の自死)によって消滅するとされています。

ヘイフリックの法則に当てはめると、毛母細胞の分裂回数も50回程度と考えられ、寿命を迎えた毛母細胞にはAGA治療を施しても再び活性を取り戻せないでしょう。

女性に有効な治療薬はあるの?

女性の薄毛に有効な治療薬として用いられるのは「ミノキシジル」と「スピロノラクトン」です。

ミノキシジルには血管拡張による発毛作用があり、スピロノラクトンには男性ホルモンを抑制する作用があります。

女性の薄毛は加齢や閉経、ストレスの蓄積などから女性ホルモンが減少し、相対的に男性ホルモンが多くなることで起こります。

スピロノラクトンで男性ホルモンを抑えつつミノキシジルで発毛を促す治療は、女性もヘアサイクルの正常化を目指せるものです。

ヘアサイクルの乱れが心配な方はAGAクリニックへ

髪が毛根にできてから抜け落ちるまでのヘアサイクルは誰にでもあるものです。しかしヘアサイクルが乱れると髪の寿命は大幅に短くなり、太く長く伸びる前に抜け落ちてしまいます。

AGAはヘアサイクルの乱れの代表的な要因です。AGAには遺伝的な要因があるため、生活習慣を改善するだけでは治せません。さらにAGAは進行性の脱毛症であるため、放置しておくと重度のハゲにつながってしまう恐れがあります。

抜け毛の急激な増加や髪のボリュームダウンなどがある場合、AGAによるヘアサイクルの乱れが起きているのかもしれません。薄毛が気になり始めたら、早い段階でクリニックの受診を検討しましょう。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

※本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。

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