薄毛と肥満は関係ある?太るとハゲると言われる原因や改善方法

肥満は血行不良や過剰な皮脂分泌、睡眠の質の低下などの要因となりAGAを含む薄毛を悪化させます。薄毛の改善には適切な処置とともに生活習慣の改善による肥満の解消が必要です。

目次

「肥満は薄毛を引き起こすの?」
「なぜ太るとハゲると言われるの?」

薄毛と肥満の関係について、疑問に持っている方も多いはずです。肥満は薄毛に限らず、さまざまな不調の引き金になるといわれています。

そこで今回は、肥満が薄毛の原因になると言われる理由や肥満とAGAとの関係性、肥満の解消方法などを解説します。

■ 本記事のサマリ

  • 肥満は薄毛の要因となることがある
  • 肥満による血行不良や皮脂の過剰分泌が原因
  • ただし、肥満改善だけでは薄毛が改善されない場合もある
  • 特に男性の薄毛の原因のほとんどを占めるAGA(男性型脱毛症)は、肥満と直接的な関係はない
  • ただし、肥満がAGAの進行を加速させる可能性があるため、薄毛が気になる方は肥満の改善も同時に行うことを推奨

肥満が薄毛の原因になる4つの理由

肥満が薄毛の原因になる理由は下記の4つです。

  • 血行不良になる
  • 皮脂が過剰に分泌される
  • ストレスが溜まりやすくなる
  • 睡眠の質が低下する

肥満は健康を害することで広く認識されていますが、これらの理由から薄毛を引き起こすとされています。

肥満を解消して薄毛の改善を目指すのであれば、まずは肥満が薄毛につながる理由とメカニズムをしっかりと理解しておきましょう。ここでは、それぞれの理由を具体的に解説していきます。

血行不良になる

肥満は血行不良を引き起こし、頭髪に必要な栄養素が血液によって運ばれるのを阻害します。

肥満になる一般的な理由は「食べ過ぎ」ですが、過食が慢性的になると脂肪細胞に脂肪滴が蓄積します。

この脂肪滴は一定を超えると血中に遊離脂肪酸として解き放たれ、エネルギーの生成などに活用されます。

しかし、余剰の遊離脂肪酸は、肝臓での代謝を経て中性脂肪や悪玉コレステロールとなってしまうのです。

この一連の過程が繰り返され中性脂肪と悪玉コレステロールの血中濃度が上がると起きるのが、血液の粘度上昇による血行不良です。

髪の毛や頭皮は血液から酸素と栄養素を受け取ることで維持されていますが、血液がどろどろでは頭皮まで血が行き渡らなくなり、薄毛につながってしまうのです。

皮脂が過剰に分泌される

肥満になると皮脂が過剰に分泌され、頭皮の毛穴詰まりや炎症の引き金になります

これは肥満になると増加する男性ホルモン「テストステロン」や「DHT(ジヒドロテストステロン)」が皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を増やすためです。

テストステロンが増えるメカニズムは、インスリンと呼ばれるホルモン物質と関係しています。

そもそも体内のテストステロンの大半は、SHBG(性ホルモン結合グロブリン)やその他タンパク質と結合した状態で保たれています。
遊離した単体のテストステロンは、全体の1割から2割に過ぎません。しかし、遊離したものは活性度の高いテストステロンであり、DHTの前駆体にもなります。

肥満にありがちな高血糖状態はインスリンの血中濃度を慢性的に上げてしまい、増加したインスリンが肝臓でのSHBGの産生を抑制します。
これによりSHBGが減ることで、遊離したテストステロンが増加します。

このように、インスリンの上昇は遊離テストステロンやDHTの増加につながり、皮脂の分泌を促してしまうのです。

皮脂は本来頭皮を保護する役割を持ちますが、過剰になると頭皮環境を悪化させてしまいます。

抜け毛や毛痩せ、切れ毛、そのほかの頭皮の炎症は、薄毛の進行を早めてしまう恐れがあるのです。

ストレスが溜まりやすい

肥満になると疲れやすくなったり、空腹を感じやすくなったりとストレスが溜まりがちです。そしてこのストレスが、薄毛につながってしまいます。

ストレスを感じると、それに抗うために抗ストレスホルモン「コルチゾール」が分泌されます。

コルチゾールを生産するためには、大量のビタミンが必要です。そのため、体内のビタミンが不足してしまうのです。

髪の生成に不可欠な栄養素であるビタミンが不足することで、薄毛につながってしまいます。

また、過度なストレス状態が続くと、交感神経系が優位な状態が続きます。
すると、交感神経と副交感神経とのバランスが崩れ、自律神経が乱れてしまうのです。

自律神経が乱れると、血流が低下し、摂取した栄養素や酸素が体内に行き渡りにくくなります。

そのため、髪の成長に必要な栄養が頭皮に届きにくくなり、抜け毛が増えてしまうのです。

睡眠の質が低下する

肥満の方は睡眠時の無呼吸やいびきが生じやすく睡眠の質が低下しがちです。睡眠の質の低下も薄毛の要因となります。

睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠があります。
髪の主成分であるケラチンを合成するために必要な成長ホルモンが分泌されるのは、ノンレム睡眠のタイミングです。

睡眠の質の低下は、ノンレム睡眠の割合を減らしてしまいます。

つまり、睡眠の質が低下すると、成長ホルモンが分泌されず髪に必要なケラチンが不足してしまうのです。その結果、健康的な髪が育たなくなってしまいます。

肥満はAGA(男性型脱毛症)を加速させる危険がある

肥満と薄毛は密接に紐付いていることがわかりましたが、男性の薄毛の原因としてもっとも多いAGAは、肥満によって引き起こるのでしょうか。

ここでは、AGAと肥満の関連性について解説します。

AGA発症と肥満には直接的な関係はない

肥満は薄毛を引き起こす要因にはなりますが、AGAを引き起こす直接的な原因にはなりません。

なぜなら、AGAは男性ホルモン「テストステロン」の影響で発症するからです。

テストステロンが還元酵素の一種「5αリダクターゼ」と結合することで、「DHT(ジヒドロテストステロン)」を生成します。そして、このDHTが男性ホルモン受容体と結合することで、毛母細胞を攻撃する脱毛因子を合成します。

毛乳頭内に脱毛因子が増えて起こるのが、ヘアサイクル(髪が生まれてから抜け落ちるまでの周期)の大幅な短縮です。このヘアサイクルの乱れによる抜け毛や毛痩せなどが、AGAの症状なのです。

AGA発症の原因となる5αリダクターゼの活性度や男性ホルモン受容体の感受性は、遺伝によって引き継がれることがわかっています。そのため、肥満を解消してもAGAの根本的な解決にはなりません。

AGAを発症した場合は、クリニックで適切な治療を受けるのが薄毛改善に向けた最善の方法です。

肥満はAGAを進行させる可能性がある

肥満はAGAの直接的な要因ではありませんが、AGAの進行を加速させることがあります。

先ほどお伝えしたように、肥満の状態は遊離テストステロンを増加させ、脱毛因子の前駆体となるDHTの生成も増やしてしまうからです。

つまり、肥満体型の人がAGAを発症すると通常よりも脱毛の進行が早まる可能性が高くなるのです。

AGAによる薄毛や抜け毛をより早く改善するには、適切な治療と合わせて、肥満の解消に努める必要があります。

薄毛の改善・予防のための肥満基礎知識

ここまで、肥満と薄毛・AGAの関係についてお伝えしてきました。では、そもそも肥満とはどのような状態のことを指すのでしょうか。薄毛の改善や予防のためにも、肥満について正しく理解しておきましょう。

そもそも肥満の状態とは

自分が肥満状態であるかのセルフチェックに活用できるのがBMIの計測です。BMIとは肥満度指数を指し、以下の計算で得られます。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

BMIは25以上で肥満、35以上で高度の肥満とされます。高度の肥満状態では糖尿病や心疾患、高血圧などの疾病のリスクが懸念されるため、早急に生活習慣の改善が必要です。

日本肥満学会による発表では、以下を肥満度分類としています。

BMIと肥満度分類

*日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』より作成

日本における肥満の割合

あらゆる疾患のリスクを高める肥満ですが、日本ではどれくらいの人が肥満状態なのでしょうか。厚生労働省による「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」では、日本における肥満(BMI25以上)の割合は以下のように示されています。

日本における肥満の割合

*厚生労働省『令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要』より作成

肥満は女性よりも男性に多く、特に働き盛りの40代で有意に高い傾向にあります。

働き盛りで生活習慣が乱れやすく、代謝も低下してくる40代の方はとくに注意が必要です。

肥満が引き起こすリスク

肥満は全身の健康を害する恐れのある危険な状態です。

日本肥満学会による発表では、肥満が引き起こす健康被害として、以下の疾患を挙げています。

  • 2型糖尿病、脂質異常症、高血圧、痛風
  • 心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患
  • 脳梗塞・脳血栓症・一過性脳虚血発作
  • 脂肪肝
  • 月経異常・不妊
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 変形性関節症(膝、股関節)や変形性脊椎症などの運動器疾患
  • 腎臓病

*日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022

なかでも冠動脈疾患や脳梗塞などは、重度の障害や突然死をもたらす可能性のあるものです。

BMIが25以上あり、これらの疾患に心当たりがある場合は、肥満外来を受診し適切な処置のもと減量に取り組む必要があるでしょう。

肥満の主な原因

肥満の主な要因には以下の3つがあります。

  • 食生活の乱れ
  • 運動不足
  • 自律神経の乱れ

それぞれ詳しく解説していきます。

食生活の乱れ

食生活が乱れると糖質よりの食事になりがちですが、血糖値の慢性的な上昇は中性脂肪の血中濃度を上げ、肥満の要因となります。

血糖値を下げるために分泌されるインスリンが糖を脂肪に変える作用があるためです。

また、タンパク質が足りないとインスリンの分泌は抑制されますが、こうした状況下ではインスリンが糖を脂肪に変える働きがかえって強まってしまうのです。

カップ麺や菓子パン、ファストフードなどは手軽で便利ですが、糖質が多くそれ以外の栄養素が少ない傾向にあるため注意が必要です。

運動不足

運動不足もまた肥満の要因です。体を動かすとエネルギーが発生しますが、このエネルギーに消費されるのが血中の脂肪細胞にある脂肪滴です。

脂肪滴は分解されることでエネルギーを生み出す役割を果たしているので、運動不足だと血中に脂肪が余り、肥満になりやすくなります。

また、運動不足は筋力の低下や筋量の減少、関節可動域の減少などの要因となり、さらなる運動不足を引き起こします。普段運動する習慣がない人ほど体を動かすことが面倒に感じがちなのは、運動不足による悪循環です。

自律神経の乱れ

自律神経の乱れは肥満を引き起こします。自律神経は脂肪の燃焼に働くホルモンの調整を司っているからです。

人の身体は日中交感神経が優位になり、夜になると副交感神経が優位になるリズムを維持しています。
そして脂肪を燃焼する作用があるホルモン「アドレナリン」は、交感神経によって分泌されます。

しかし、自律神経の乱れから昼夜のリズムが狂うと、アドレナリンの分泌が減少し、脂肪を蓄えやすくなるのです。

アドレナリン不足から体重が増加傾向に陥る状態は「モナリザ症候群」と呼ばれ、肥満の要因となる疾患とされています。

また、脂肪細胞から分泌されるホルモン「レプチン」は交感神経にあたる満腹中枢を刺激することで食欲の抑制に働きます。

自律神経はホルモンの調整をしたり、ホルモンからの伝達を受け取ったりすることで体内の代謝を管理する重要な器官なのです。

そのため、自律神経が乱れると、過食がなくても太りやすい体質になってしまいます。

薄毛の原因となる肥満の解消方法

薄毛につながる肥満を解消するには、先ほどお伝えした3つの原因に対処する必要があります。効果的な方法は以下の3つです。

  • 食生活の見直し
  • 適度な運動を習慣化する
  • ストレスを溜めない規則正しい生活

それぞれの方法を具体的に解説します。

食生活の見直し

肥満を解消するには、まずは糖質を控え、タンパク質やビタミン、ミネラルをバランス良く摂る必要があります。

タンパク質はインスリンの正常な分泌をサポートする他、ホルモンや血管、内臓などあらゆる器官の原料として必要不可欠なものです。

また、ビタミン類はタンパク質とともにコラーゲン・エラスチンの合成をサポートし血管壁を丈夫にしたり、血中の脂質に働きかけ血液の粘度を下げたりする作用があります。

そしてミネラルもタンパク質やビタミンの代謝に欠かせません。

肥満の解消をサポートする食事の摂り方は、一汁三菜の定食スタイルがおすすめです。
肉や魚、大豆製品、野菜などを副菜で効率的に取り入れましょう。

また、間食は極力控え、規則正しく食べることが大切です。

適度な運動を習慣化する

運動に使われるエネルギーは、血中の脂肪を分解することで生成されるので、運動を習慣化すれば、脂肪は溜まりにくくなります。

脂肪がエネルギーに変換される過程で多くの酸素が必要なため、特に有酸素運動が効果的です。

有酸素運動を20分以上続けると、糖や脂肪が酸素を使って分解されていきます。

また、歩行やジョギング、水泳などのリズム運動は、自律神経の調整に働くホルモン「セロトニン」の分泌を促し、ストレスの解消にもつながるとされています。

有酸素運動とリズム運動を上手く取り入れて、肥満になりづらい体を目指しましょう。

ストレスを溜めない規則正しい生活

肥満の要因となるストレスを溜めないためにも、規則正しい生活を送り十分な睡眠をとる必要があります。

特に睡眠の質の向上には意識して取り組む必要があります。

良質な睡眠は自律神経の中枢である視床下部の機能を高め、ストレスに負けない体をサポートしてくれます。また、深い眠りのときに分泌される成長ホルモンは、細胞の修復を手助けするほか、脂肪の分解にも働きます。

ストレスを溜めないためには、定時刻の起床と就寝を心掛けたり起床時には朝日を浴びたりする習慣を心掛けましょう。

眠気を誘うホルモン「メラトニン」は、朝日を浴びてから14時間から16時間後に分泌されるとされています。決まった時間に朝日を浴び、体内時計が整うと規則正しい生活を維持しやすくなるでしょう。

過剰なダイエットは髪や頭皮に悪影響を与える

肥満解消のためにダイエットに取り組む方も多いでしょう。しかし、食事制限による過剰なダイエットは、ストレスや栄養不良を引き起こすため、髪や頭皮にとってよくありません

栄養はまず生命を維持する上で優先度の高い臓器の維持に使われ、生命活動に直結しない髪の毛や頭皮への補填は後回しになってしまうものです。

ダイエットで摂取する栄養量自体が不足すると髪の毛や頭皮に栄養が運ばれず、薄毛や頭皮トラブルが起こりやすくなります。

また、栄養不足はホルモンバランスの乱れにもつながります。
ホルモン自体がタンパク質でできていたり、ホルモンが代謝する上でビタミンやミネラルを必要としたりするからです。

ホルモンバランスが乱れるとストレスを溜め込みやすくなったり、睡眠の質が低下したりするので髪にとっても良くありません。ダイエットは、適切な運動と食事を心掛けてください。

肥満を解消して薄毛・抜け毛の改善を目指そう

肥満が薄毛を引き起こす理由や肥満のメカニズム、肥満の解消方法などを解説してきました。肥満は血行不良や皮脂の過剰分泌、ストレスの蓄積などの要因となり、薄毛だけでなくあらゆる疾患を引き起こすリスクのあるものです。

また、肥満はAGA発症の直接的な原因にはなりませんが、進行を加速させる恐れがあります。そのため、AGA治療をより効果的に行うには、肥満の解消にも努める必要があるでしょう。

食生活の改善や適度な運動で、薄毛や抜け毛の原因となる肥満の解消を目指してください。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

※本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。

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