性欲が強いとハゲる原因になる?男性ホルモンと薄毛の関係を徹底解説
「性欲が強いとハゲやすいの?」「禁欲したらハゲは改善される?」と疑問に思っている方に向けて、この記事では性欲とハゲやすさの関係性や薄毛の正しい改善方法について詳しく解説しています。
「性欲が強い男性はハゲやすいって本当?」
「禁欲すれば薄毛は改善できるの?」
性欲が強いほどハゲやすいという考え方が一般的に広まっています。薄毛を改善するために禁欲している方もいるかもしれません。
しかし、この考え方は事実なのでしょうか?事実だとすれば、ハゲている方の多くは性欲が強いことになります。
今回は、性欲とハゲの関係について詳しく見ていきましょう。効果的な薄毛対策についても紹介しているので、こちらも参考にしてみてください。
■ 本記事のサマリ
- 性欲とハゲには直接的な関係はない
- そのため、禁欲をしても薄毛対策や薄毛改善には繋がらない
- 特にAGA(男性型脱毛症)の原因となるジヒドロテストステロンは、性欲に関係するテストステロンの増加だけでは影響を受けない
- AGAの改善にはクリニックでのAGA治療が必要
- AGA治療は放置すると効果が出にくくなるため早めの受診を推奨
「性欲が強い=ハゲる」に根拠はない
結論からお伝えすると、性欲の強さとハゲやすさに関係はありません。
そもそも、ハゲる原因のほとんどにはAGA(男性型脱毛症)が関係しています。
AGAはジヒドロテストステロン(DHT)が脱毛因子を促進することで起こるものです。
性欲が強いからといってジヒドロテストステロンの分泌量が増えることはないため、ハゲが促進されることもありません。
「性欲が強い=ハゲる」は根拠のないデマだといえます。
「性欲が強いとハゲる」とデマが広がった理由
では、なぜ性欲が強いとハゲるという話がここまで広まったのでしょうか。その理由としては、おもに次の3つが考えられます。
男性ホルモンについての誤認識
男性がハゲる原因の多くを占めるAGA(男性型脱毛症)は、男性ホルモンの一つであるジヒドロテストステロン(DHT)が関与しています。
性欲が強い方は男性ホルモンの量が多いというイメージがあるためか、性欲が強い=ハゲるにつながったのでしょう。
たしかに、性欲には男性ホルモンが深く関係しています。しかし、AGAの原因となるDHTは性欲とは関係ありません。
男性ホルモンにはいくつか種類があり、そのうちテストステロンと呼ばれるものが性欲に関係しています。
テストステロンは5αリダクターゼ(5α還元酵素)の働きによりDHTに変換されますが、この変換はテストステロンの量に依存しておらず、いくらテストステロンの量が多くてもDHTの量には関係がありません。
DHTの量には、5αリダクターゼの量や、DHTが結合するアンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)の数なども関係しているため、テストステロンだけが増えてもハゲることはないのです。
AGAについて正しく理解しよう
性欲に関係しているテストステロンは、AGAとは直接的な関係性はありません。
テストステロンが変換されて作られるDHTがAGAの発症や進行と関係しているため、いくら性欲が高くてもAGAには関係しないのです。
しかし、テストステロンがAGAの原因だと思われている方が少なくありません。
DHTはテストステロンから作られるため、そう考えたくなるのもわかります。
しかし、テストステロンがいくら増えてもそれだけでDHTの量が増えることはありません。
AGAに関係しているのはDHT、性欲に関係しているのはテストステロンです。
どちらも男性ホルモンの一種ではありますが、まったくの別物なので性欲が高いことがAGAを発症させたりハゲを進行させたりすることはまずありません。
射精に対する誤認識
射精するとハゲが進行すると思われている方も多いのではないでしょうか。
精液を出すことで亜鉛が消費されたり、射精すると男性ホルモンが増えたりすると思われている方が少なくありません。
たしかに亜鉛は、髪の毛の大部分を構成するケラチンを作る材料になります。亜鉛が不足すれば、髪の毛のボリュームが少なくなったり、副作用で脱毛が見られたりすることもあるでしょう。
しかし、髪の毛に影響が出るほど射精で亜鉛が失われることはまずありません。
また、射精により増加する男性ホルモンはテストステロンです。ハゲの原因になるジヒドロテストステロンが増えることはないため、射精でハゲが進行することはありません。
単なるイメージ
なんとなく、ハツラツとしていて性欲が強そうな俳優や海外のスターには、薄毛の方が多いという印象をおもちではありませんか?
とくに海外の映画やドラマなどを見ていると、ギラギラとした性格であるほど薄毛の方が多い印象があります。
漫画でも薄毛のキャラクターはなんとなく、ギラついたイメージがあるのではないでしょうか。
このようなイメージもあり、性欲が強いとハゲると思っている方が多くいるようです。
しかし、これは単なるイメージにすぎません。実際は性欲とハゲには関係がないため、気にしすぎる必要はないでしょう。
「性欲が強いと髪が早く伸びる」も根拠なし
性欲が強いと髪の毛が早く伸びる、という話もよく聞くことがあります。
早く伸びる男性が「性欲が強いのでは?」とからかわれている様子を見たことがある方は多いでしょう。
しかし、性欲と髪の毛が伸びる早さにも医学的な関係性はまったくありません。
髪の毛は、性欲の強さに関係なくほとんどの方は1ヶ月に1cmほど伸びていきます。
髪の毛は成長期、退行期、休止期というヘアサイクルを回りながら伸びたり抜けたりを繰り返していくことが特徴です。
髪の毛が伸びていく成長期には、毛母細胞が活発に細胞分裂を行っています。
毛母細胞の細胞分裂に性欲は影響しないため、性欲の強さが髪の毛が伸びるスピードに影響することもありません。
禁欲が薄毛予防や対策になることはない
禁欲、つまりオナ禁をすることで薄毛対策になると思われている方も非常に多くいます。
しかし、基本的に性欲とハゲやすさにはなんの関係性もありません。
射精で失われる亜鉛の量もごくわずかなものなので、髪の毛の成長に関係することはまずないでしょう。
また、自慰行為をしているときにテストステロンが増えるのを心配される方もいます。
勃起してから射精するまでの間は、普段よりテストステロンの量が増えていますが、ハゲの原因はそもそもテストステロンではありません。
そのため、禁欲によって薄毛予防や対策になることはないと考えておきましょう。
薄毛対策のために禁欲をしてもまったく意味はないのです。
本当に効果的な薄毛対策はクリニックでのAGA治療
性欲を抑えても禁欲をしても髪の毛の成長にはなんの変化もありません。薄毛が進行することもなければ、改善や予防につながることもないのです。
では、ハゲが気になる場合は、どのような対策を行うべきなのでしょうか。
AGA治療
まず行うべきは、AGAの治療です。
男性が薄毛になる原因の多くはAGAのため、AGA治療を行うことでハゲの改善が期待できます。
AGAはDHTの影響で起こるものです。そのため、AGA治療では基本的にDHTをターゲットとした治療薬を用います。
フィナステリドやデュタステリドは、DHTを作るために必要な5αリダクターゼを阻害する治療薬です。
このほか、ミノキシジルもAGAの治療によく用いられます。
ミノキシジルは血行をよくしたりヘアサイクルを整えたりすることで発毛を促す治療薬です。
フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルのようにAGA専用の治療薬を使うことで、ハゲを効率的に治療できます。
なお、AGA治療は開始が遅くなるほど効果が出にくくなる場合があります。
AGAは進行性の脱毛症のため、放置しておくと生えてくる髪の絶対量が減ってしまうためです。
もし今のヘアボリュームを維持したい・改善したいと考えている場合は、早めのクリニックへの受診をお勧めします。
食生活の改善
AGA治療を行うことがハゲを改善する基本中の基本ですが、AGA治療の効果を高める補助的な役割として食生活の改善も大切です。
まずは髪の毛のベースとなるタンパク質を積極的に摂りましょう。
髪の毛の約80~90%はタンパク質でできています。摂取量が不足すると髪の毛の成長に影響が出る可能性があるので気をつけましょう。
このほか、ケラチンを作るのに必要な亜鉛も積極的に摂りたい栄養素の一つです。
日常生活で亜鉛が不足することはほぼありませんが、髪の毛のためにも多めに摂るように心がけましょう。
タンパク質や肉や魚、卵に、亜鉛は牡蠣やかたくちいわし、うなぎなどに多く含まれています。
生活習慣の見直し
ついつい夜更かしをしてしまう方は要注意です。
髪の毛を伸ばすために必要な成長ホルモンは、寝ている間に多く分泌されます。
睡眠不足が続くと、成長ホルモンの量が少なくなり髪の毛に影響が出てしまうかもしれません。
また、飲酒や喫煙にも気をつけましょう。
アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドには、ジヒドロテストステロンを増加させる働きがあるといわれています。
また、喫煙は血管を収縮させるため髪の毛に栄養素が行き渡りづらくなる原因です。
睡眠や飲酒、喫煙だけの影響でハゲが進行することはありませんが、髪の毛にとってよいものではありません。
ストレスを溜めない生活
ストレスが溜まると、自律神経のバランスが乱れて交感神経が優位に働きやすくなります。
交感神経には血管を収縮させる働きがあるため、過剰なストレスは血流を悪くする原因です。
できるだけストレスを溜め込まない生活を心がけましょう。
そのためには、ゆっくりお風呂に入ったり趣味の時間を作ったり、困ったことがあるときは早めに誰かに相談したりすることが大切です。
正しいヘアケアの実践
頭皮の汚れを取ろうとするあまり、洗浄力の強いシャンプーを使っている方を見かけることがあります。
汚れや皮脂は毛穴に詰まる原因となりますが、洗浄力が強すぎるシャンプーはかえって頭皮に負担をかける原因です。
頭皮の健康を守るために必要な皮脂も一緒に取り除き、バリア機能が低下して赤みやかゆみなどを引き起こしてしまいます。
もちろん、逆に洗浄力が弱すぎると、汚れや皮脂が残ったままとなり雑菌の繁殖を招くこともあるので要注意です。
シャンプーは自分の頭皮に合った低刺激のものを選び、1日1回程度の適切な回数で洗髪することがお勧めです。
頭皮に負担とならないような、正しいヘアケアを実践しましょう。
薄毛と性欲にまつわるQ&A
では、最後に薄毛と性欲に関してよく聞かれる質問にお答えします。薄毛と性欲の関係性については間違った知識をもっている方が多いので、ここで今一度確認しておきましょう。
AGA治療薬を服用すると性欲が低下する?
AGA治療薬で性欲が低下する可能性はあります。プロペシア(フィナステリド)では1~5%未満、ザガーロ(デュタステリド)では1%以上の方でリビドー減退が見られています。
リビドー減退とは、性欲が減少することです。
確率はごくわずかですが、妊活中の方やこれから妊活を始める予定の方で気になられる場合はプロペシアやザガーロは控えたほうがよいでしょう。
性欲減退について気になる方は、処方時に医師へご相談ください。影響が少ない治療を提案してくれます。
女性の薄毛も性欲とは関係がない?
女性の薄毛も性欲とは関係がありません。
女性が薄毛になるのは加齢や更年期、ストレスやホルモンバランスの乱れなどが原因です。性欲が高くても低くても、薄毛に影響することはないので安心してください。
なお、男性の薄毛とは違ってさまざまな要因が原因となるため、治療方法は男性と異なる方法で行われることもあります。
薄毛が気になる場合は、早めに医師にご相談ください。適切な治療を行うことで、薄毛を早く改善できます。
性欲が原因でハゲることはない!薄毛対策はクリニックへ
性欲が強くてもハゲることはありません。
これは男性も女性も同じです。
性欲が強いと男性ホルモンが多いのでハゲやすいと勘違いされていますが、性欲とハゲはそれぞれ別のホルモンが関係しています。性欲にはテストステロン、ハゲにはジヒドロテストステロンが関与しているため、性欲の強さとハゲには関係がないのです。
禁欲をしても薄毛対策にはならないため、抜け毛やボリュームが気になる方は、早めにクリニックを受診しましょう。
AGAは治療が遅れると十分な効果が出ないことがあるため、早めの受診が重要です。
天野 方一 先生
ヘアテクト 顧問医師
日本抗加齢医学会専門医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
- 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
- 本記事の内容は公開日時点の情報となります。 情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。