男性ホルモン(テストステロン)がハゲる原因?AGAや薄毛との関係
「テストステロンがハゲの原因になるって本当?」「AGAとジヒドロテストステロンとはどのような関係があるの?」と疑問に思っている方に向けて、この記事ではテストステロンと薄毛の関係やAGAの原因について解説しています。
「テストステロンが多いとハゲやすいって本当?」
「テストステロンってそもそも何?」
男性ホルモンの一つであるテストステロンは、薄毛(ハゲ)と関係があることでも知られているホルモンです。
しかし、実はテストステロンそのものがハゲを直接引き起こしているわけではありません。
今回はテストステロンと薄毛にどのような関係があるのか、そもそもどのような働きをもつホルモンなのかについて解説します。
■ 本記事のサマリ
- テストステロンは薄毛の直接的な原因ではない
- テストステロンから産生されるジヒドロテストステロンがAGAの直接的な原因
- しかし、AGAの発症は遺伝で決まることが多く、テストステロンが増えたからといってAGAを発症するとは限らない
- 薄毛の原因がAGAの場合、クリニックでの治療が必須となる
- 早急に薄毛を改善したい場合は、まず医療機関等で薄毛の原因を特定することを推奨
テストステロンと薄毛(ハゲ)は直接的な関係はない
テストステロンとは、男性の体を男らしく作りあげたり体を発達させたりするのに必要な男性ホルモンのことです。
約95%が精巣で作られています。
「男性ホルモンが多い人はハゲやすい」と言われることがありますが、テストステロンはハゲを引き起こす直接的な原因にはなりません。
テストステロンは男性に欠かせないホルモン
男性の体のなかで、テストステロンは次のような働きをしています。
- 筋肉量を増やす
- 骨格を太くする
- ヒゲや体毛を生やす
- 生殖機能を作る
- 自信や活力の源になる
テストステロンは生まれる前から男性にとって必要不可欠な存在です。
胎児のころは生殖器や脳の発達、思春期以降にはヒゲや体毛、筋肉や骨格を太くするために必要になります。
分泌量は20〜30代でピークに達し、これくらいの年齢になるとテストステロンをどうにか増やして男性らしさをキープしようと励んでいる男性を見かけることも少なくありません。
薄毛(ハゲ)の直接的な原因ではない
男性ホルモンが多い人はハゲやすいと都市伝説のように言われることがありますが、テストステロンが薄毛を直接引き起こすことはないので安心してください。
後述しますが、ハゲを進行させる原因になるのは、テストステロンとは別の男性ホルモンであるジヒドロテストステロンというものです。
筋トレでハゲるというのは間違い
テストステロンを増やす方法として筋トレが効果的だと紹介されることがあります。
筋トレを行うと筋肉が刺激されてテストステロンの分泌量が増えるのは事実です。
しかし、テストステロンが薄毛を引き起こす原因とはならないため、筋トレを行ってもハゲることはありません。
むしろ筋トレは、筋肉や骨を強くしたり気持ちを前向きにさせたりする効果があるため、積極的に行っていきたいものです。
薄毛(AGA)の原因はジヒドロテストステロン
男性が薄毛になる原因のほとんどはAGA(男性型脱毛症)だといわれています。
このAGAの発症に関係しているのがジヒドロテストステロン(DHT)です。
AGAについて理解していくには、ジヒドロテストステロンの性質についても知っておく必要があります。
ジヒドロテストステロン(DHT)とは?
ジヒドロテストステロンとは、テストステロンから作られる男性ホルモンのことです。
テストステロンに5αリダクターゼ(5α還元酵素)が働きかけることで生成されます。
ジヒドロテストステロンも生殖器や体毛の発達などに関わるホルモンの一種です。
テストステロンとの大きな違いはその活性にあり、テストステロンの約10〜30倍もの活性を持っています。
テストステロンの量が増えたとしても、5αリダクターゼによってジヒドロテストステロンに変換されなければAGAの進行には影響しません。
5αリダクターゼの活性や量は遺伝で決まることが多いといわれています。
そのため、テストステロンの増加がそのままジヒドロテストステロンの増加につながることは考えにくいでしょう。
AGA(男性型脱毛症)発症のメカニズム
AGAは、5αリダクターゼによって作られたジヒドロテストステロンがアンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)に結合し、脱毛を促進させる因子であるTGF-βやDKK1を増やすことで発症します。
これらの脱毛因子は、毛母細胞の働きを抑えるため髪の毛の成長を阻害してしまうのです。
毛母細胞がうまく働かなくなると髪の毛が太く長く育っていく成長期の期間が短縮され、次第に細くて短い髪の毛が目立つようになっていきます。
薄毛が気になりだした人の中には「ストレスが原因でハゲた」と思われる方も多いですが、多くはこのようにジヒドロテストステロンの影響によるものなのです。
AGAは遺伝的な要因が大きい
「食生活が悪かったから」「頭皮の環境が悪かったから」など、薄毛になった方は過去の自分の行動に何か原因があったのではと探ろうとする方が多いでしょう。
しかし、AGAは生活習慣よりも遺伝による影響が大きく関係して発症するものです。
AGAの発症に関係のある遺伝子はX染色体と呼ばれる母親から受け継がれる染色体上に存在します。母方の祖父が薄毛だとAGAになりやすいといわれるのはこのためです。
AGA以外の薄毛の原因とは
男性が薄毛になる原因のほとんどはAGAですが、まれにほかの原因で薄毛になることもあります。代表的なのが次に紹介する4つの要因です。
偏った食生活
私たちの体は食べたものから作られています。そのため、食生活が乱れると健康な髪の毛は育ちません。
たとえば、髪の毛の80%を占めているたんぱく質の摂取量不足は髪の毛が細くなる原因となり、脂っこい食事の摂り過ぎは頭皮の皮脂量を増やしてベタつく原因となります。
野菜や果物に含まれるビタミンも髪の毛の成長に必要です。
栄養バランスの偏った食事によりビタミンが不足すると、髪の毛が健康に育つ妨げになる危険があります。
不規則な生活習慣
髪の毛をしっかり成長させるためには、睡眠時間の確保が大切です。
髪の毛の成長に関わっているホルモンの一つである成長ホルモンは、入眠中に分泌量が多くなります。
夜遅くまで起きていたり、睡眠の質が悪くなるような生活を続けていたりすると、髪の毛の成長にも影響が出てしまうことでしょう。
昼間に眠気を感じることが多い方は、睡眠時間がたりていない証拠です。
睡眠障害をもつ方は円形脱毛症になりやすいこともわかっているため、睡眠時間はしっかり確保するようにしましょう。
喫煙や過度な飲酒
タバコに含まれているニコチンには、血管を収縮させる働きがあります。
血液の通り道が狭くなって血流が悪くなり、髪の毛の成長に必要な栄養素が運ばれづらくなるため喫煙は控えたいものです。
また、お酒が分解されて作られるアセトアルデヒドには、ジヒドロテストステロンの量を増やす可能性があるといわれています。
たしなむ程度の飲酒であれば大きな問題はないと考えられますが、飲酒量が多い方は節酒を心がけましょう。
頭髪への外的要因
自分で髪の毛を抜いてしまう抜毛症、髪の毛を引っ張ることで起こる牽引性(けんいんせい)脱毛症などもハゲる原因です。
抜毛症は精神的な要因が大きいため、抗うつ薬を使ったり認知行動療法などを行って治療を進めます。
牽引性脱毛症は髪の毛を引っ張らないように工夫することで自然に治るため、とくに治療は必要ありません。
このほか、頭皮に湿疹ができて掻きむしることによる物理的な要因で薄毛になることもあります。
効果的な薄毛(ハゲ)対策・改善方法
薄毛が気になる場合や、これから薄毛にならないように対策をしたい場合は、まず日々の生活を見直すことから始めてみましょう。
次に紹介する方法は今日からでもできるものばかりです。まずは続けられそうなものから始めてみてください。
食生活を見直す
健康な髪の毛を育てるのに役立つ栄養素としては、次のものが代表的です。
髪の毛に良い栄養素とその効果
これらの栄養素をしっかり摂れるように、日々の食生活を見直しましょう。
とはいえ、忙しかったり自分で調理するのが難しかったりする方も多いかと思います。そのような方はサプリメントやプロテインを活用することで負担を感じることなく栄養素の摂取を続けられるでしょう。
生活習慣を改善する
睡眠時間をうまく確保できていない方、睡眠の質が悪い方は次のことに気をつけてみましょう。
- 就寝3時間くらい前に軽いウォーキングやジョギングを行う
- 就寝2~3時間前に入浴する
- 朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びる
- 夜は蛍光灯の明かりを暖色系に変える
- 寝る直前の食事は控える
- 就寝の5~6時間前にはカフェインの摂取を控える
以上の方法は、快眠するために効果的な方法として厚生労働省が公表しているものです。
すべてを一気に始めるのは大変ですので、できそうなものからまず取り組んでみてください。
禁煙・禁酒する
喫煙や飲酒の習慣がある方は本数や量を控えるようにしましょう。
タバコに含まれているニコチンは交感神経を刺激して、眠りを妨げることもあります。
また、寝る前の飲酒は睡眠を浅くするため、快適な睡眠を取るためにも喫煙と飲酒は避けたいものです。本気で禁煙を行いたい場合は、禁煙外来に通ったり薬局やドラッグストアで購入できる禁煙パッチなども利用してみたりするとよいでしょう。
頭髪を正しくケアする
頭皮に詰まった皮脂を取り除こうと、何度もシャンプーしている方は要注意です。
過度な洗髪は頭皮の乾燥を招き、逆に湿疹や赤みなどが起こる原因となります。よほど髪の毛の汚れが気にならない限りは1日1回の洗髪で十分です。多くても2回までにとどめましょう。
洗髪するときはまずぬるま湯で髪の毛を予洗いし、頭皮をマッサージするようにシャンプーします。洗い残しがないようにしっかりすすいだら、タオルドライを行った後にドライヤーで乾かしてください。
自然乾燥だと頭皮が湿っている時間が長くなり、雑菌が繁殖しやすくなるため必ずドライヤーを使いましょう。
AGA(男性型脱毛症)は適切な治療が必要
ハゲが気になる場合は生活習慣の改善も大切ですが、まずはクリニックを受診することがもっとも重要です。
男性の薄毛の原因のほとんどはAGAといわれていますが、AGAによる薄毛は生活習慣の見直しだけでは改善されません。クリニック等での適切な治療が必要とされています。
なお、AGAの治療はミノキシジルやフィナステリド、デュタステリドなどの薬を使用して行っていきます。
ミノキシジルは血行をよくしたりヘアサイクルを整えたりする薬、フィナステリドやデュタステリドはジヒドロテストステロンの産生を阻害する薬です。
また、注意したいポイントとして、AGAの治療は早期に始めるほど効果が出やすいと言われています。
まずはクリニック等の医療機関で専門家にハゲの原因を特定してもらうことで、より早急に適切な対応を始めることが可能です。
実際に、クリニックで適切な治療を行った方の多くが発毛を実感しているので、本気で改善したい方は早めにクリニックを受診するようにしましょう。
AGAはすぐにでも治療を始める必要がある
テストステロンそのものがハゲの原因となることはありませんが、テストステロンから作られるジヒドロテストステロンはAGAを引き起こす原因となります。
AGAは発症してから時間が経つほど治療効果が出づらくなるため、薄毛や抜け毛が気になり始めたらできるだけ早く治療を受けることが大切です。
AGAかどうかわからないという方も、まずは気軽に医師に相談してみてください。原因に合わせた治療法を提案してもらえるので、きっと解決の糸口が見つかるはずです。
天野 方一 先生
ヘアテクト 顧問医師
日本抗加齢医学会専門医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
- 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
- 本記事の内容は公開日時点の情報となります。 情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。