抜け毛が多いときに考えられる7つの原因|効果的な薄毛対策とは
抜け毛が多いと不安が募りますが、自然な抜け毛か異常な抜け毛かを正しく見分けたうえで、適切な対策を行うことが大切です。異常脱毛の見分け方と抜け毛のおもな7つの原因・対策を解説します。
「シャンプーで抜ける毛の量が多い気がする」
「枕や床に落ちている抜け毛が目立つ」
抜け毛が増えたと感じられる時に原因や対策が分からないままだと、このまま薄毛が進行してしまうのではと不安が募りますよね。
抜け毛自体は健康な人でも起こる現象のため、やみくもに心配せず、抜け毛が自然なものか異常なものかを見極めたうえで考えられる原因に対して適切な対策を行うことが大切です。
この記事では、はじめに異常な抜け毛の見分け方を紹介し、抜け毛を引き起こす主な7つの原因と対策方法を解説します。
■ 本記事のサマリ
- 異常脱毛は、抜け毛の増加や毛根/髪質の変化で発見できる
- 異常脱毛は生活習慣の乱れやストレス、誤ったヘアケア等で起こる
- また、AGA(男性型脱毛症)が原因の場合もあるため、薄毛が気になりだしたら要注意
- しかし、異常脱毛の原因がAGAの場合は上記では改善されないため、クリニック等への受診を推奨
自然脱毛と異常脱毛の見分け方
髪の毛には毛周期と呼ばれるサイクルがあり、このヘアサイクルの中で休止期に入った髪の毛は自然と抜けます。これが自然脱毛です。一方、ヘアサイクルの乱れにより早期に抜けてしまうのが異常脱毛です。
異常な抜け毛かどうかを判別するためには、いくつかのチェックポイントがあります。
抜け毛の量が増えたら要注意
髪は一定期間を経ると自然に抜け落ち、同じところからまた新しい髪が生えることを繰り返しています。
この周期を毛周期(ヘアサイクル)と呼びます。
毛周期では、毛母細胞の分裂により髪が成長する成長期、成長が弱まる退行期を経て、成長が完全に止まる休止期に入ったのち、新たに成長を始めた毛髪に押し出される形で自然と抜けていきます。
1サイクルの長さは一般的に、男性で3〜5年、女性で4〜6年といわれています。
ヘアサイクルは毛髪1本ごとに期間や時期が異なるため、一度にまとめて数百本の髪が抜けることは普通ありません。
自然脱毛による抜け毛は、1日あたり50本〜100本が目安とされています。
100本以上の抜け毛があったからといって必ずしも薄毛が進行しているとは限りませんが、明らかに抜け毛の量が増えている場合は注意が必要です。
例えば、枕に付く髪の毛の量が多くなったり、シャンプーをした際に髪の毛がごっそりと抜けたりする場合などは、気を付けた方が良いでしょう。
抜け毛の毛根の形も薄毛のサイン
抜け毛の毛根の状態から、自然脱毛かどうかを見分けることができます。見るべきポイントは色と形です。
自然脱毛で抜けた髪の毛根は、根元にいくにつれて白くなっていき、マッチ棒の先のように丸くふくらんでいます。
しかし、毛根全体が黒かったりあるいは濁った白色である場合や、先がふくらんでおらず尖った形をしたりしっぽのようなものが付いている場合は異常脱毛の可能性があります。
抜け毛が短かったり細い場合は異常な可能性
抜け毛の長さや太さからも、異常な抜け毛であるかどうかを見極めることができます。
自然脱毛の場合は毛髪が成長しきってから抜けるため、抜け毛に一定の太さや長さがあり、コシがあります。一方、異常脱毛においては成長の途中段階で毛が抜けてしまいます。
そのため、ヘアスタイルや髪質にもよりますが、細く短い抜け毛が多かったり、全体的な髪質と比べて柔らかく弱々しい毛であったりすると異常脱毛の疑いがあります。
抜け毛が多くなる原因7つ
ヘアサイクルが乱れ、早期に髪が抜けてしまう異常脱毛には複数の原因が考えられます。ここでは、抜け毛を引き起こすとされる主な原因のうち代表的な7つを紹介します。
偏った食生活
髪の成長には、毛の根元にある毛母細胞と毛乳頭細胞の働きが大きく関わっています。
毛母細胞が分裂を繰り返すことで髪の毛は成長していきます。この分裂は、毛乳頭細胞から受け取る栄養や指令をもとに行われているため、血液を通して十分な栄養素を頭皮に届ける必要があるのです。
髪の成長には、たんぱく質やミネラル、ビタミンが重要な役割を果たすとされています。
偏った食生活を送っているとこれらの栄養素が十分に毛髪へ届けられず、髪の成長が促されずに抜け毛が増える可能性があるのです。
また、脂質や糖質の高い食事にも注意が必要です。
毛髪への栄養素の運搬は血液が行っているため、血液の状態がどろどろになり血行が悪くなると毛髪に十分な栄養が届けられなくなってしまいます。
不規則な生活
食生活のみならず、睡眠不足や運動不足も要注意です。
十分な睡眠がとれないと自律神経のバランスが乱れます。
交感神経優位の状態が続くことで身体の緊張や血管の収縮が起こり、血行が悪くなります。血行が悪化すれば毛髪に栄養が行き届きにくくなるのは先述のとおりです。
また、睡眠中に分泌される成長ホルモンの働きも重要です。
睡眠時間が短くなれば成長ホルモンの分泌が阻害され、毛髪のすこやかな成長に悪影響を及ぼします。
更に、運動不足も抜け毛の原因となることがあります。
運動を怠ると筋肉がしなやかさを失い、血行不良につながってしまうためです。
過度なストレス
強すぎるストレスも抜け毛を引き起こすことがあります。
自律神経の乱れにより心身が緊張を強いられる状態が続き、血管が収縮して血行が悪くなるためです。
ストレスによって発生する活性酸素の影響もあります。
活性酸素は体内のさまざまな老化現象を加速させており、髪の毛の成長を担う毛母細胞にも影響するとされています。
そのほかにもホルモンバランスの乱れを引き起こし、男性ホルモンが過剰に分泌された結果、余分な皮脂の分泌が生じ、頭皮環境の悪化を招く場合もあるのです。
喫煙
喫煙もまた、血行不良による頭皮への栄養不足を引き起こします。
タバコに含まれるニコチンに血管を収縮させる作用があるからです。
栄養素の運搬を阻害するだけでなく、毛髪や頭皮に必要な栄養素のひとつであるビタミンCそのものを破壊してしまう作用もあります。
ほかにも、喫煙によっても活性酸素が発生するといわれており、毛母細胞の老化を引き起こす恐れがあります。
紫外線
一般的にシミやシワの原因とされている紫外線は、頭皮や髪の毛にもダメージを与えます。
紫外線によるダメージが頭皮に蓄積すると、光老化と呼ばれる変化が肌に生じ、たんぱく質の合成が阻害されるといわれています。
毛髪はケラチンとよばれるたんぱく質からできているため、紫外線が毛髪の成長を妨げる可能性があるのです。
また、日焼けの炎症によるダメージが頭皮の硬化につながり、血行不良を生むともいわれています。
誤ったヘアケア
毛髪の土台となる頭皮はデリケートです。誤ったヘアケアが頭皮環境の悪化を引き起こし、抜け毛につながっている場合があります。
例えば、洗浄力の強いシャンプーは必要以上に頭皮の皮脂を洗い流してしまい、かえって皮脂の過剰分泌を招く恐れがあります。
1日に何度もシャンプーするなど、シャンプーの回数が多いのも同様です。
また、強すぎる頭皮マッサージやゴシゴシと強くこするような洗髪も、頭皮にダメージを与えます。
AGA(男性型脱毛症)
AGAとは「Androgenetic Alopecia」の略称で、おもに成人男性が発症する男性型脱毛症を指します。
額の生え際か頭頂部、または両方の毛髪が薄くなっていきます。
男性の薄毛の原因のほとんどを占めると言われており、約3人に1人が発症する疾患です。
AGA発症にはさまざまな原因がありますが、一般には遺伝や男性ホルモンの影響が主な原因と考えられています。
そのため、自然治癒や、生活習慣の改善のみでの治療は難しく、クリニック等での治療が必要とされています。
AGAは進行性の脱毛症であり、放置しておくと薄毛は段々と悪化していってしまいます。
抜け毛が増えただけでなく、髪の生え際の後退や、つむじ周りの薄毛が気になりだした方は要注意です。
不安な場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。
抜け毛が多いときの対策方法
抜け毛にはさまざまな要因が関係していますが、原因がAGA以外の場合であれば、適切な対策・予防を行うことで抜け毛を抑制させることも可能です。主な対策法を解説していきます。
バランスのとれた食事
毎日の食事から摂取する栄養素をもとにして毛髪は作られます。
栄養バランスのよい食事をとることは、抜け毛対策として効果が見込めます。
中でもたんぱく質、ミネラル、ビタミンが重要です。
たんぱく質は毛髪の主成分であるケラチンを構成します。肉類や魚介類、大豆製品や乳製品など、複数種の食材からバランスよく摂取しましょう。
細胞や臓器の働きを支えるミネラルのうち、亜鉛はケラチンの生成に関わるとされています。牡蠣や豚レバー、牛もも肉やうなぎに多く含まれます。
炭水化物やたんぱく質、脂質の代謝を補助するビタミンも欠かせません。ビタミンの大部分が体内では生成できないため、毎日の食事から欠かさず摂取する必要があります。
生活習慣の見直し
ここまでお伝えしてきたとおり、睡眠不足や運動不足などの生活習慣の乱れはヘアサイクルの乱れにつながる恐れがあります。
十分な睡眠をとり、適度な運動を行うことがヘアサイクルの正常化を導きます。
適切な睡眠時間の長さは個人によって異なりますが、一般的には6時間以上睡眠することが推奨されています。
また睡眠時間が長くても、睡眠の質が悪ければ効果は半減します。覚醒につながるカフェインやアルコールの摂取を控え、睡眠前の入浴により体の深部体温を下げることで睡眠の質を改善できます。
運動不足の場合は、ウォーキングなどの軽い運動を定期的に行えるよう、習慣づくりを始めましょう。
外的刺激対策
毛髪を支える土台である頭皮環境には、可能な限り強い刺激を与えないようにするのが大切です。
洗浄力の強いシャンプーの使用を控え、ドライヤーの熱は長時間当てないように注意します。
薬剤によるダメージが懸念されるヘアカラーやパーマも、できる限り控えるのが安心です。
紫外線によるダメージを防ぐには、帽子や日傘が効果的。
使用が難しければ、自分の肌に合った日焼け止めスプレーもよいでしょう。
長髪の方はヘアスタイルにも注意が必要です。
きつめに髪を結ぶなど、髪の毛を引っ張るヘアスタイルを長時間続けていると、牽引性脱毛症と呼ばれる抜け毛を引き起こすことがあります。
AGA発症の場合は治療を行う
AGAを発症している場合、ここまで解説してきた対策法での改善は難しいとされています。
AGAは、治療薬の服用など、専門医による適切な治療が必要です。
重要なポイントとして、AGAの進行を抑えるには、早期に治療を開始することが重要とされています。
逆に、薄毛が大幅に進行してからの治療開始は、治療効果が出にくくなってしまうのです。
不安を感じる方は、まず一度クリニックに相談してみることをおすすめします。
抜け毛にまつわるQ&A
ここまで抜け毛の主な原因とその対策をお伝えしてきました。最後に、多くの方が持つ抜け毛にまつわる疑問について解説します。
女性の抜け毛の原因も男性と同じ?
男性と女性では、抜け毛の原因に違いがあるといわれています。
ここまで説明してきた原因のうち、食生活の偏りやストレスなどの生活習慣の乱れ、紫外線や誤ったヘアケアなどの外的刺激は、男性・女性ともに抜け毛の原因となりえます。
これらのほかに、女性の抜け毛の原因として多く挙げられるのが「びまん性脱毛症」です。
おもに、加齢によるホルモンバランスや自律神経の乱れによって発症するとされていますが、生活習慣の乱れや栄養不足により若い女性でも発症することがあります。
女性においてはホルモンバランスの変化が抜け毛の原因となることも多く、出産後に多量の抜け毛が起こる分娩後脱毛症の原因も同様とされています。
季節によって抜け毛の量は変わる?
季節の影響を受けて抜け毛の量が増えることがあります。
一般に秋は抜け毛が増えやすくなるとされており、通常期の2倍以上抜けるともいわれています。
夏に受けた紫外線ダメージの影響や、動物にとって秋が換毛期にあたることなど、根拠となる説は複数挙げられています。
春も同様に生え変わりの季節といわれているほか、新生活が始まりストレスを受けやすいことからも抜け毛が増えることがあるようです。
抜け毛が多いと不安になったらクリニックへ相談しよう
抜け毛の原因は個人によってさまざまですが、なかでも生活習慣の乱れは影響が大きいと考えられます。「食事・運動・睡眠」という生命活動の基本を正しく整えることで、抜け毛が改善されるケースが多くあります。まずは生活習慣を整えることがおすすめです。
一方で、AGAのように生活習慣の改善だけでは対応できない抜け毛もあります。薄毛の進行を食い止めるには早期発見・早期対応が重要であることが多いため、不安を感じたら早めにクリニックに相談するのがよいでしょう。
天野 方一 先生
ヘアテクト 顧問医師
日本抗加齢医学会専門医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
- 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
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