頭皮が痛いと抜け毛が増える?原因や薄毛(AGA)との関係や治療法
頭皮の痛みが頭皮環境の悪化による場合抜け毛につながる可能性があります。しかしAGAが頭皮の痛みを引き起こすことはありません。抜け毛が気になる場合は早い段階でクリニックの受診を検討しましょう。
「頭皮が痛いと抜け毛が増えるの?」
「AGAと頭皮の痛みは関係があるの?」
これらの疑問は薄毛と頭皮の痛みが気になる方に多いものです。実際、頭皮の痛みの原因となる頭皮環境の悪化は薄毛につながり得る問題です。
一方、抜け毛とは関係がなく放っておくと治る痛みもあります。
今ある頭皮の痛みがどうして起きているのかを理解できれば、症状や不安を解消しやすくなるはずです。
そこで、今回は頭皮の痛みに考えられる原因や対処法、AGAとの関連性などを解説します。
■ 本記事のサマリ
- 頭皮の痛みは頭皮環境の悪化や病気が原因で起きる
- 頭皮の痛みを放置していると、薄毛に繋がる可能性もあるため注意
- 頭皮環境の改善方法として、生活習慣の見直しや頭皮マッサージ等が挙げられる
- 痛みの原因の特定は難しい場合があるため、皮膚科などクリニックへの相談を推奨
頭皮が痛いときに考えられる原因|日常生活
普段当たり前に続けている生活が実は頭皮にダメージを与えてしまっている場合、頭皮に痛みが生じることがあります。
ここでは、頭皮の痛みにつながりがちな事象や生活習慣を見ていきましょう。
頭皮環境が悪化している
頭皮環境の悪化は抜け毛や毛痩せの原因となる他、頭皮の痛みにつながることがあります。
特に頭皮への血流の低下は頭皮環境の悪化と同時に首周りの筋肉の酸欠を引き起こし、発痛物質を発生させるものです。
血液による酸素の運搬が滞った首周りの筋肉には、疲労物質である「乳酸」が蓄積します。
乳酸が筋膜にある痛覚神経に影響して生じるのが「ブラジキニン」などの発痛物質です。
発痛物質は頭皮表面にある末梢神経を刺激し、頭皮にピリピリとした痛みを与えます。
血行不良による頭皮の痛みは、肩こりや頭痛などの不調を併発するのが特徴です。
頭皮が乾燥している
頭皮も顔などの肌と同様、皮脂と汗が混じりあってできる皮脂膜によって外敵から守られます。
しかし過度の洗髪や刺激の強いシャンプーの使用などにより、皮脂膜が必要以上に除去されてしまうと、頭皮は乾燥しバリア機能が低下してしまいます。
バリア機能の低下は細菌や異物の侵入を容易にし、頭皮の炎症や痒みの引き金になるものです。
炎症の悪化や痒みから頭皮を掻きむしってしまったりすると、頭皮の痛みが発生します。
頭皮が炎症を起こしている
頭皮の痛みは炎症に起因する場合があります。
頭皮に炎症が起きる要因として生活習慣の悪化によるホルモンバランスの乱れや栄養状態の悪化、血流の低下などが挙げられます。
ホルモンバランスの乱れは皮脂の過剰な分泌を引き起こし、必要以上のターンオーバーや痒み、炎症の引き金となります。
また、栄養状態の悪化や血流の低下は頭皮のバリア機能を低下させ、アレルゲンや外的刺激に過敏な反応を生み出すものです。
睡眠不足や偏った食生活、ストレスや喫煙などの習慣は、頭皮の慢性的な炎症が起きやすい状態を作り、頭皮の痛みにつながる場合があります。
頭皮が日焼けしている
頭皮の日焼けは痛みを伴うことがあります。
そもそも、日焼けとは紫外線から体を保護するために分泌されるメラニン色素による反応です。
紫外線は体内に浸透し細胞に有害な活性酸素を発する作用があり、細胞を老化させたり癌の引き金になったりします。メラニン色素は紫外線を吸収することで体内の組織や細胞がダメージを被るのを防ぐためのものです。
紫外線から体を守ってくれるメラニン色素ですが、紫外線が強すぎる場合は防御反応が間に合わなくなってしまいます。
頭皮の表皮細胞が紫外線によるダメージを受け生じるのが、火照りや水ぶくれ、炎症などの痛みを伴う症状です。
頭皮に傷がある
頭皮に激しい痛みがある場合、打撲や掻きむしりなどの外傷が関係していることがあります。
外傷による頭皮の痛みは、患部に腫れや火照りを伴うのが特徴です。
傷が軽度であれば時間とともに回復しますが、強い打撲の場合は脳に悪影響を及ぼす恐れがあるため、脳神経外科への受診をおすすめします。
また掻きむしりによる傷がある場合、雑菌の侵入により傷口が炎症を起こす場合があります。
炎症により頭皮の痛みが強まったり長引いたりするケースも少なくありません。
頭皮が痛いときの対処方法|日常生活
生活習慣の乱れからくる頭皮の痛みに対処するには、頭皮にダメージを与える行動を変えていく必要があります。
ここでは、頭皮環境を整えるために有効な試みを紹介します。
生活習慣や食生活を見直す
過剰な皮脂による炎症やバリア機能の低下によって頭皮が痛む場合、良質な睡眠やバランスの良い栄養の摂取で回復する可能性があります。
睡眠中は性ホルモン分泌に指令を出す脳を休息させたり、成長ホルモンが頭皮の細胞を修復・再生したりする大切な時間帯です。
男性も女性も皮脂の分泌には性ホルモンの影響を受けるため、良質な睡眠で脳の機能が高まると皮脂の分泌も正常化します。
また、良質なタンパク質を中心としたバランスの良い栄養は、頭皮のコラーゲン合成や血による酸素運搬、頭皮のターンオーバーをサポートするものです。
タンパク質やビタミン、ミネラルなどを取り入れられる食事メニューを意識することで、健全な頭皮を目指せるでしょう。
頭皮マッサージをする
頭皮への血流の低下からくる痛みには、頭皮マッサージで血流を改善するのがおすすめです。
頭皮マッサージは次の方法で簡単に行えます。
- 両手の指の腹を使い、左右の耳周りの頭皮を掴む
- 指を固定した状態で、3回から5回程度丸を描くように頭皮を動かす
- 両サイドのマッサージを頭頂部まで行う
頭皮マッサージは入浴後の体が温まった状態で行うのがポイントです。
洗髪のついでに頭皮マッサージを行う方もいますが、シャンプーをつけたままの状態では頭皮の皮脂が必要以上に除去されてしまう恐れがあるので控えておきましょう。
シャンプーや整髪剤を見直す
頭皮の乾燥から痛みを感じる場合、今お使いのシャンプーや整髪剤を見直してみる必要があります。
多くのシャンプーに含まれる合成界面活性剤には、皮脂を過剰に除去しすぎたりタンパク質を変性させたりする作用があり、頭皮や髪に悪影響を与えるものです。
頭皮の痛みを改善するには、低刺激な製品を選びましょう。
例えば、アミノ酸系やベタイン系のシャンプーは肌と同じ弱酸性で、保湿性に優れた製品です。
また、シアバターやヒマシ油、ミツロウなどの天然成分を主原料とした整髪料は、髪や頭皮へのダメージを最小限に抑えられます。
その他、噴射の際に頭皮に付着しがちなヘアスプレーは避け、クリームやワックスなどを毛先だけに塗布する心がけも大切です。
頭皮を強く刺激しないように意識する
頭皮への外的刺激は痛みの原因になるので注意が必要です。以下の習慣は頭皮を傷つけてしまう恐れがあります。
- 爪を立てた洗髪
- 頭皮の掻きむしり
- シリコン製のシャンプーブラシによる摩擦
- 頭皮マッサージブラシの使いすぎ
髪や頭皮のために続けている習慣が頭皮を傷つけてしまっていては意味がありません。
常に頭皮に物理的な刺激が加わるのを避け、頭皮を労わるよう意識してみましょう。
紫外線対策をする
日焼けによる頭皮の痛みを防ぐには帽子や日傘、日陰の通行などで紫外線を避ける必要があります。
また、日焼け止めスプレーを頭皮に用いるのもおすすめです。
日焼け止めスプレーにはスプレータイプとミストタイプがあります。しっかりと紫外線対策をしたい場合はスプレータイプ、低刺激性を重視したい場合はミストタイプを選ぶと良いでしょう。
その他、紫外線による影響を受けにくくするためには頭皮の保湿ケアを行ったり頭皮用の冷却スプレーを用いたりすることも有効です。
頭皮が痛いときに考えられる原因|病気
ここまで頭皮の痛みを引き起こす生活習慣をお伝えしてきましたが、頭皮の痛みは生活習慣の他にも病気から起きている場合があります。
特に痛みが強かったり長引いたりする場合は注意が必要です。
ここでは、頭皮の痛みの原因として考えられる病気を解説します。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎とは過剰な皮脂の分泌によって常在菌のマラセチア菌が異常繁殖し、マラセチア菌の分解産物によってニキビや湿疹、痒みなどが生じる皮膚炎です。
脂漏性皮膚炎には黄色みがかったかさぶたがベタつきのあるフケとなり脱落する特徴があり、頭皮の他にも顔や体幹上部などの皮脂分泌の多い部位に生じる傾向があります。
接触皮膚炎
接触皮膚炎は俗に言う「かぶれ」の状態です。
何らかの成分が皮膚に触れた際、その刺激にアレルギー反応が起こり痒みや湿疹、紅斑などが現れます。
接触皮膚炎は重症化するとびらんや水疱につながる場合がありますが、アレルゲンとなる物質への接触を止めれば、炎症が静まることがほとんどです。
毛嚢炎(毛包炎)
毛根を包む毛包が細菌に感染し生じるのが毛嚢炎(もうのうえん)です。
毛嚢炎は毛包部に負った外傷や皮膚の不衛生、皮脂の蓄積などで患部に菌が繁殖することで起きます。
毛嚢炎の特徴は毛根部位に膿が溜まることで皮膚が盛り上がり、しこりのような膿疱が生じる点です。
膿疱には痛みや赤み、熱感を伴い、悪化すると複数の毛包に広まるケースもあります。
帯状疱疹
帯状疱疹とはヘルペスウイルスの一種である水痘・帯状疱疹ウイルスによって起こる病気です。
水痘・帯状疱疹ウイルスは初めて感染した際には水ぼうそうとして全身に水疱を生じさせ、完治後も神経節に潜伏し続けます。
帯状疱疹は何らかの理由で免疫力が低下した際に水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性することで生じます。
帯状疱疹の症状はズキズキとした痛みや激しい熱感、水疱や発疹が帯状に現れることです。
水痘・帯状疱疹ウイルスが頭部の神経節に潜む場合、頭皮に帯状疱疹が現れる可能性があります。
頭部白癬(しらくも)
頭部白癬の原因となるのは真菌の一種である皮膚糸状菌の感染です。
頭部白癬になると、頭皮に楕円形の脱毛や角質の剥離、ウロコのような斑が生じ、炎症がひどくなると頭皮の痛みにつながることがあります。
また、まれに発熱やだるさなどの症状を伴うのも特徴です。
皮膚糸状菌は感染力が非常に強いため、格闘技などの密な接触がある競技を行う方に広まりやすい傾向にあります。
頭皮の痛みが病気の場合は医療機関へ
頭皮の痛みが長く続いたり強まったりする場合、何らかの病気が原因かもしれません。
症状に違和感がある場合、早急に医療機関への受診を検討しましょう。
頭皮に痛みがある場合の受診先は、基本的に皮膚科です。
ただし、外傷や炎症がないのに痛みがあったり頭全体が痛んだりする場合は脳や神経に異常をきたしている恐れがあるので、脳神経外科への受診が必要となります。
受診先の判断が難しければ、まずは皮膚科を受診して頭皮の状態を診てもらうと良いでしょう。
頭皮の痛みは抜け毛・薄毛につながる可能性がある
頭皮の痛みの原因によっては、薄毛や抜け毛につながる可能性があります。
頭皮の痛みの種類は単なる外的刺激によるものから乾燥によるもの、炎症によるものなどさまざまです。
例えば、頭皮をぶつけたり引っ掻いたりして起こる痛みには抜け毛のリスクがありませんが、頭皮環境の悪化が原因で起こる痛みには薄毛の前兆となる可能性があります。
頭皮環境の悪化は長引くと薄毛のリスクも高まります。
抜け毛も頭皮の痛みも初期の状態では治療で改善しやすいので、できるだけ早く対処しましょう。
頭皮の痛みとAGA(男性型脱毛症)の関係
なお、薄毛の要因の一つであるAGAは頭皮の痛みを引き起こすものなのでしょうか。
最後に、AGAのメカニズムや痛みとの関係を解説します。
AGAが頭皮の痛みを引き起こすことはない
AGAは男性ホルモンの影響で生じる脱毛症で、日本皮膚科学会のガイドラインによると、日本人男性の発症頻度は、全年齢平均で約30%とされています。
男性の薄毛に多く見られるAGAは頭皮の痛みとの直接的な関係がありません。
AGAは主要な男性ホルモン「テストステロン」が体内の酸化酵素と結合してできる男性ホルモン「DHT」の影響で起こる脱毛症です。
DHTは毛根にある毛乳頭内で男性ホルモン受容体と結合することで、脱毛因子を生み出します。
AGAの症状に抜け毛や軟毛化、短毛化が見られるのは、脱毛因子が髪を作る毛母細胞にダメージを与え、髪の毛の成長が阻害されてしまうからです。
DHTは過剰な皮脂の要因になるもので、炎症につながる可能性があります。
しかし、AGAが直接的に頭皮の痛みを引き起こす原因になることはありません。
抜け毛が多い場合はAGAの可能性がある
AGAは頭皮の痛みとは直接的な関係がありません。
しかし、頭皮の痛みとともに抜け毛の急激な増加や薄毛の進行がある場合、頭皮の痛みの原因とは別でAGAを発症している可能性があります。
AGAは自力での改善が困難な進行性の脱毛症であるため、早期からクリニックでの治療を行うことが重要です。
もしも薄毛を伴う頭皮の痛みがあるなら、薄毛の原因を頭皮の痛みと決めつけず、AGA治療を検討してみることをおすすめします。
頭皮が痛いときは早めの対処が必要!抜け毛が多い場合はAGA対策も
頭皮の痛みにはさまざまな原因があります。
頭皮環境の悪化や何らかの病気から痛みが生じている場合、放置しておくと抜け毛につながりかねません。
また、頭皮の痛みが脳や神経の異常から生じている場合にも早急な対処が必要です。「最近頭皮の様子がおかしいな」と感じたらすぐに医師による適切な診断を受けましょう。
なお、頭皮環境の悪化はAGAなどの脱毛症の進行を加速させます。頭皮の痛みとともに抜け毛の増加が目立つ場合、AGA対策も併行して行うことをおすすめします。
天野 方一 先生
ヘアテクト 顧問医師
日本抗加齢医学会専門医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
- 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
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