AGA治療が妊活に与える影響を解説|副作用で不妊になるのは本当?

AGA治療中の妊活は、「不妊にならない?」「胎児になにか問題が出る?」と心配ごとがいろいろと出てくるものです。この記事では、AGA治療であるミノキシジルやフィナステリド、デュタステリドが妊活へどのような影響を与えるのかについて解説しています。

目次

「妊活するときはAGA治療をしないほうがいいって本当?」
「AGA治療薬を飲んでいると不妊になるって聞いたんだけど…」

妊活をするとなると、使用している薬が胎児に影響を与えないか、また薬の影響で不妊になるのではないかと心配になるかと思います。とはいえ、薄毛の治療を途中で止めたくないと感じている方も多いでしょう。

そこで今回は、AGA治療薬の定番であるミノキシジルとフィナステリド、デュタステリドと妊活の関係について詳しく解説します。

■ 本記事のサマリ

  • AGA治療薬で、妊活に影響を及ぼす可能性が高いのは「フィナステリド」と「デュタステリド」
  • 妊活の際には、フィナステリドとデュタステリドは1カ月前頃から服用を中止する
  • 胎児に影響が出る可能性があるため、女性(母体)が触れたり服用しないよう注意
  • 安心して妊活を進めたい場合はミノキシジルを使った治療を推奨

そもそもAGA治療薬とは

AGA(男性型脱毛症)は男性ホルモンの影響によってヘアサイクルが乱れることで起こる疾患です。植毛やメソセラピーなどの治療もありますが、一般的には内服薬や外用薬がよく使用されています。

主なAGA治療薬は3種類

AGA治療に主に使われているのは、ミノキシジルとフィナステリド、デュタステリドの3種類です。ミノキシジルには内服薬と外用薬の両方があり、フィナステリドとデュタステリドは内服薬のみがあります。

AGA治療薬の種類とその効果

髪の毛は成長期、退行期、休止期というヘアサイクルをくり返すことで生えたり抜けたりしています。髪の毛が太く長く伸びていく成長期は通常なら4~6年ほどありますが、AGAを発症している方ではわずか数ヶ月ほどしかありません。ミノキシジルは、この短くなった成長期を元に戻すことで発毛を促します。

フィナステリドとデュタステリドは、AGAを進行させるジヒドロテストステロン(DHT)が作られるのを阻害する薬です。ジヒドロテストステロンを作るのに必要な酵素である5αリダクターゼ(5α還元酵素)の働きを抑えてAGAの進行を食い止めます。

AGA治療薬の副作用について

AGA治療薬で表れる可能性のある副作用は次のようなものが挙げられます。

  • 頭皮のかぶれ・かゆみ
  • 性機能障害
  • むくみ
  • 動悸・息切れ
  • めまい・立ちくらみ
  • 肝機能の低下
  • 抑うつ
  • 多毛症

頭皮のかぶれやかゆみは、ミノキシジルの外用薬でよく見られます。動悸や息切れ、めまいや立ちくらみなどもミノキシジルで見られやすい副作用です。ミノキシジルには血管を拡張する働きがあるため、血圧が普段より下がりやすくなりこのような副作用が出やすくなります。

性欲減退や勃起不全など性機能に関する副作用はフィナステリドやデュタステリドで見られやすい副作用です。これらの副作用を見て「妊活に影響が出るのでは?」と思われた方もいるでしょう。

薬の種類によっては、妊活への影響がまったくないとは言い切れません。しかし、服用したすべての方で副作用が発症するわけではありません。どの治療薬でどの影響がどれくらいの確率で見られるのか、これから詳しく解説していきます。

フィナステリドの妊活(不妊)への影響

フィナステリドはプロペシアという商品名でもよく知られている薬です。確率は低いものの、妊活へ影響を及ぼす可能性があります。

フィナステリドによる性機能障害は1%前後

フィナステリドの副作用の中には、勃起機能不全(ED)や射精障害、性欲減退などの症状があります。

勃起機能不全(ED)や射精障害の症状は1%未満、性欲減退の副作用は1〜5%程度と言われています。

しかし、実際はこれらの副作用が起こる確率はとても低く、ヘアテクトで治療された2,452人の患者様のうち、性機能障害に関する副作用を訴えたのは6名(0.2%)という結果も出ているため、心配しすぎる必要もないでしょう。

ただし、とくに勃起機能不全は心理的な要因でも起こるため、「フィナステリドのせいでは?」と気にしやすい方はほかの治療薬を使うなど対策が必要になります。

※AGA治療薬と性機能障害に関する情報はこちらの記事もご覧ください。
AGA治療薬の副作用でED(勃起不全)に?性欲低下の確率や原因

フィナステリドは1%未満で精子への影響も

頻度は不明ですが、フィナステリドの服用により、精子濃度の減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常などの影響が報告されています。また、1%未満の方では精液量の減少も見られました。精液量の減少以外の副作用は、フィナステリドの服用を止めることで改善されたという報告があります。

頻度不明=起こる確率はかなり低い副作用ではありますが、妊活をされる方にとっては見過ごせない副作用でしょう。気にしすぎる必要はありませんが、妊活をしてもなかなか授からない場合は服用の継続を考えたほうがよいケースもあります。

女性が服用すると胎児に影響が出る危険が

もし誤って女性がフィナステリドを服用してしまった場合は、胎児が男の子の場合のみ生殖器官の発育に影響が出る可能性があることがわかっています。そもそもフィナステリドは女性が使うものではありません。

皮膚から吸収されることもわかっているため、妊活中はもちろん普段から女性がフィナステリドに触れることがないように注意しましょう。

妊活の際は1ヶ月前に服用中止を推奨

妊活を行なう場合は、性交を行なう1ヶ月前にはフィナステリドの服用を中止することが推奨されています。「性交を行なう当日のみ飲まなければよいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実はフィナステリドが血液や精液の中から完全になくなるまでには1ヶ月ほどかかるのです。

もともとフィナステリドが妊活へ影響を及ぼす可能性はそこまで高くありません。しかし、服用を中止した状態で行ったほうが精神的にも安定した状態で妊活を進められると考えられます。

デュタステリドの妊活(不妊)への影響

デュタステリドは、ザガーロという商品名でも知られているAGA治療薬です。こちらもフィナステリドと同様に、妊活への影響が出る可能性があります。

デュタステリドも性機能障害は1%前後

デュタステリドを服用した方の1%以上の方で、勃起機能不全や射精障害などの副作用が見られたと報告されています。性欲減退についても同様に1%以上の方で見られました。

デュタステリドの服用を中止した後も勃起機能不全や射精障害、性欲減退の副作用が続いたとの報告もあるため、人によってはしばらく症状が続いてしまうことがあるかもしれません。とはいえ、これらの副作用が起こることはまれですので、気にしすぎる心配はないでしょう。

デュタステリドの精子への影響は0.1%

デュタステリドの使用成績調査によると、服用した4,320名のうち68例(1.57%)でなんらかの副作用が見られています。そのうち精液量減少が3例(0.07%)、精子濃度減少が1例(0.02%)で見られました。

ごくわずかな確率ではありますが、デュタステリドの服用によって精子への影響が出る可能性があります。気にしすぎる心配はないと言われればそれまでですが、パートナーと安心して妊活を進めるためには服用を中止したほうがよい場合もあるでしょう。

デュタステリドも妊活中の女性の服用はNG

デュタステリドを服用している男性が妊活を行なった場合、胎児に影響を及ぼす可能性はほとんどないと考えられます。アカゲザルで行なった非臨床試験でも、デュタステリドが、精液を介して胎児の発達に影響を及ぼす可能性は低いと言われています。*
*ザガーロカプセル0.5mg 医薬品インタビューフォーム

ただし、女性が服用した場合は生殖器の異常が見られる可能性があるため、女性の服用は避けてください。デュタステリドは皮膚からも吸収されるため、女性が触れないように注意することも大切です。

妊活の際は1ヶ月前にデュタステリドの服用中止を推奨

動物実験の結果だけを見ると、デュタステリドを服用しながら妊活を行ってもとくに影響はないと考えられます。しかし、血液中や精液中のデュタステリドを極力減らした状態で妊活に挑みたいと考えている場合は、妊活を始める1ヶ月前には服用を中止しておくようにしましょう。

クリニックによっては6ヶ月前から中止するようにと指導しているところもあります。気になる方はデュタステリドを処方してもらったクリニックへ一度ご相談ください。

ミノキシジルの妊活(不妊)への影響

ミノキシジルは、外用薬であれば薬局やドラッグストアでも気軽に購入できる治療薬です。使っている方が非常に多い治療薬ですが、妊活への影響はあるのでしょうか。

ミノキシジルは妊活に影響を与える副作用はない

ミノキシジルには、妊活に影響を与えるような副作用はありません。勃起機能不全や精液量の減少などは報告されていないため、AGA治療薬のなかではもっとも妊活への影響が少ないといえるでしょう。

ただし、ミノキシジルを服用中の女性が妊娠した場合、胎児にどのような影響があるかはまだ明らかにされていません。男性の使用については問題ありませんが、女性の場合は安全性が十分に確立されていないため、妊活中の使用は避けるようにしてください。

妊活への影響が心配な場合はミノキシジルのみで治療

フィナステリドやデュタステリドには、勃起機能不全や射精障害、精液量の減少など妊活に影響を及ぼすような副作用があります。これらの副作用が起こる確率は決して高くはありません。

しかし、妊活を始めてから「もしかして薬のせいかも…」と後悔しないためにも、服用を控えたほうが無難だと考えられます。妊活中でも服用できないことはありませんが、リスクを最小限に抑えたい方はミノキシジルのみを使って治療するとよいでしょう。

AGA治療薬は女性(母体)への影響にも注意が必要

AGA治療薬のうち、ミノキシジルは女性でも使える薬です。フィナステリドやデュタステリドは女性が使うことはありませんが、パートナーが使用しているという方も多いでしょう。

フィナステリドの女性(母体)への影響

フィナステリドは、妊娠している方や妊娠の可能性がある方の服用は禁忌となっています。禁忌とは絶対に服用してはいけないという意味です。アカゲザルを使った非臨床試験では、妊娠20日から100日までフィナステリドを投与しても胎児に影響は見られませんでした。

しかし人間が服用した場合は、男の子の胎児に生殖器の異常が見られる可能性があります。また、薬の成分は皮膚からも吸収される可能性があるという点にも注意しましょう。母体そのものになんらかの影響が出るわけではありませんが、妊活中は女性が触れたり服用したりしないようにしてください。

デュタステリドの女性(母体)への影響

デュタステリドは、妊娠しているかどうかにかかわらず女性の使用は禁忌です。ウサギを使った非臨床試験では、デュタステリドを妊娠中に投与しても母体への影響はとくに見られませんでした。

しかし、オスの胎児で生殖器の異常が観察されています。母体への影響はないと考えられますが、胎児への影響が出る可能性があるため絶対に服用しないようにしてください。なお、デュタステリドも皮膚から吸収される性質があるため、触れないようにすることも大切です。

ミノキシジルの女性(母体)への影響

ミノキシジルを女性が使用してもとくに問題はありません。3種類あるAGA治療薬のうち、ミノキシジルは唯一、女性にも使用が認められている薬です。

ただし、妊娠中の方や妊娠の可能性がある方がミノキシジルを使用する安全性についてはまだ不明瞭な部分もあります。妊活中の女性がミノキシジルを使用する場合は、医師へ相談するのがおすすめです。

AGA治療中の方は妊活を始める前に医師に相談しよう

AGA治療によく用いられるミノキシジル、フィナステリド、デュタステリドのうち、フィナステリドとデュタステリドは妊活に影響を及ぼす可能性があります。確率としては1%前後のものが多いですが、勃起機能不全や射精障害などの副作用が出る恐れがあるのです。

ミノキシジルではこのような副作用は報告されていないため、安心して妊活を進めたい方はミノキシジルのみを使ってAGA治療を行っていくとよいでしょう。

すでにフィナステリドやデュタステリドの服用をしている場合は、妊活を始める1ヶ月前に服用を中止することが推奨されています。AGA治療を行いながらの妊活は可能ですので、医師と相談しながら進めていくようにしましょう。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

※本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。

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