市販の育毛剤は薄毛に効かない?本当に有効な成分やAGAへの効果とは

育毛剤は薄毛改善に効果的なのか?実は、育毛剤には新たに髪を生やす効果はありません。AGAは進行性の脱毛症であるため、育毛剤では改善できないのです。本記事では、育毛剤の有効的な活用方法などについて紹介していきます。

目次

「市販の育毛剤は効かないの?」
「育毛剤はAGAに効くの?」

薄毛が気になる方にこのような疑問は多いものです。

ドラッグストアなどで安く手軽に手に入る育毛剤で薄毛を改善できれば、多くの方が抱える不安は解消されるでしょう。

しかし、市販の育毛剤は薄毛に効かないという声があることも事実です。
薄毛の治癒に育毛剤を取り入れたい場合、まずは育毛剤の効果と役割を理解しておく必要があります。

そこで、今回は育毛剤の効果や配合される成分、AGA(男性型脱毛症)への効果などを解説します。

■ 本記事のサマリ

  • 市販の育毛剤では薄毛の改善はできない
  • 育毛剤は髪が育ちやすい環境を整える効果がある
  • 薄毛の原因の多くを占めるAGA(男性型脱毛症)の改善にはクリニックでの治療が必須
  • 育毛剤はあくまでAGA治療の補助的な役割として活用することを推奨

市販の育毛剤では薄毛の改善は難しい

結論から言うと、市販の育毛剤では薄毛の改善は目指せません

なぜなら、育毛剤には新たな髪を生やすほどの強い効果がないからです。

ここでは育毛剤に期待できる効果や発毛剤との違いについて触れていきます。

そもそも育毛剤で髪が生えるわけではない

育毛剤の効果は、あくまで今ある髪を育てたり頭皮環境を良くしたりする程度に留まります

育毛剤は「医薬部外品」に分類される商品です。育毛剤には「薬用」と表記されている製品が多くありますが、薬用とは医薬部外品であることを指します。

医薬部外品は薬機法上、『人体に対する作用が緩和なもの』と定められています。
*医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第二条

また、育毛剤に含まれる有効成分の濃度は厚生労働省が厳密に定めており、高すぎては医薬部外品の認可が得られません。

育毛剤は薄毛に対して劇的な効果を発揮するものではなく、薄毛の予防や現状の維持を目的とするものです。

育毛剤だけで薄毛を治療することは困難ですが、継続的に使用することで徐々に頭皮環境を整えたり今ある髪を育てたりする効果が期待できます。

育毛剤は「髪の健康維持」効果
発毛剤は「発毛促進」効果

育毛剤と混同しやすい製品に「発毛剤」がありますが、両者の作用は異なるものです。
発毛剤は医薬部外品の育毛剤とは異なり、症状の治療を目的とする「医薬品」に分類されます。

今ある髪の健康を保つのが育毛剤であれば、新たな髪を生やすのが発毛剤です。

また、発毛剤には血管拡張により発毛を促す成分「ミノキシジル」が配合されています。
ミノキシジルは医薬成分に該当するため、育毛剤には含まれません。

その他、育毛剤が市販で手軽に手に入る一方、発毛剤は医師や薬剤師を通す必要がある点も両者の明確な違いといえます。

※育毛剤と発毛剤の違いについては、こちらの記事もご覧ください。
育毛剤と発毛剤の違いとは?薄毛・抜け毛への効果や成分について

薄毛改善は市販の育毛剤ではなくAGA治療が適切

育毛剤は薄毛の改善に適しません。薄毛の原因のほとんどを占めると言われている進行性の脱毛症のAGA(男性型脱毛症)を治したい場合、クリニックの受診をおすすめします。ここからは、AGAの詳細と治療方法を見ていきましょう。

AGAは育毛剤では改善しない

AGAは育毛剤の使用だけでは改善できません。

そもそもAGAは男性ホルモンの影響を要因とするため、自力で治すのが困難な脱毛症です。

AGAは男性ホルモン「テストステロン」が体内の酸化酵素と結合する影響で生じます。

テストステロンと酸化酵素が結合してできるのが、脱毛因子の前駆体となる男性ホルモン「DHT」です。

DHTは髪が作られる毛乳頭内で男性ホルモン受容体と結合することで、毛母細胞を攻撃する脱毛因子を生み出します。
脱毛因子の影響で毛母細胞の活動が弱まり、髪の寿命が大幅に短くなったり今ある髪が弱々しくなったりするのがAGAの症状です。

AGAに育毛剤を使えば多少は頭皮環境を整えたり今ある髪を元気にしたりできるかもしれませんが、抜け毛を止めたり、発毛効果のない育毛剤では、薄毛改善には限界があります。

AGAを改善するにはAGAの原因に直接アプローチできるクリニックでの治療が必須です。

AGAの治療方法とは

AGAの治療方法は大きく分けて下記の3種類あります。

AGAの治療方法

このなかで費用対効果などの面から最もポピュラーなのは「投薬治療」です。

特に、内服薬ではAGAの要因となる酸化酵素を直接抑えて脱毛を抑えたり、血管拡張により発毛を促すことで、効率的に薄毛の改善を目指せます。
また、その他のメソセラピーや自毛植毛のようにメスや針を使った治療ではないため、ダウンタイムや傷跡が残ることもありません。

その他、症状や体調に合わせて服薬量を調整できたりオンラインクリニックを選ぶことで薬剤費を大幅に削減できたりするのも投薬治療のメリットです。

育毛剤はAGA治療の補助的な役割

育毛剤はAGAを根本から治療するものではありません。
しかし、育毛剤で頭皮環境を整えながらAGA治療を行えば効率的に薄毛の改善を目指せる場合があります。

注意すべき点として、育毛剤の配合成分によっては処方薬の外用剤との間に化学反応が起こり、頭皮の炎症を引き起こす可能性があります。

AGA治療の効果を十分に実感したい場合、自己判断で育毛剤との併用を進めず、まずは医師に相談してみましょう。

市販の育毛剤選びは配合成分をチェック

自分に合うタイプの育毛剤を選ぶには、配合成分の作用を理解しておくと良いです。

育毛剤の成分は大きく分けて育毛を促すものと頭皮環境を良くするものの2種類あります。

ここからは、それぞれの成分の詳細を確認していきましょう。

育毛成分をチェックする

育毛剤に含まれる育毛成分の作用は、血流の促進や栄養・成長因子の補給、毛母細胞の活性化などです。ここでは、代表的な育毛成分を紹介します。

育毛成分とその働き

頭皮ケア成分をチェックする

育毛剤に含まれる頭皮ケア成分には過剰な皮脂の抑制や保湿、抗酸化をサポートする働きがあります。次に挙げる成分は良好な頭皮環境を保持するものです。

頭皮ケア成分とその働き

市販の育毛剤を効果的に使うポイント

育毛剤を効果的に使うには、適切な用法・用量を守る必要があります。ここからは、育毛剤の効果が十分に得られる使い方を紹介します。

洗髪後の清潔な頭皮に使う

育毛剤を使用する際は頭皮を清潔な状態にしておきましょう。

頭皮に汚れが付着している状態で育毛剤を使用すれば、雑菌の繁殖や毛穴詰まりを加速させてしまう恐れがあります。

また、頭皮に汗や皮脂が残っていると、育毛剤の有効成分が頭皮に行き届きにくくなり、十分な効果が得られない場合もあるでしょう。

良好な頭皮環境を維持するために、育毛剤は洗髪後の清潔な頭皮に用いることをおすすめします。

継続して使用する

育毛剤の効果を得るには、最低でも3ヶ月から半年程度の継続的な使用が必要です。

そもそも、ヘアサイクル(髪が生まれてから自然に抜け落ちるまでの周期)には成長期・退行期・休止期の3段階あり、毛根ごとに違った周期を刻んでいます。

育毛剤の使用により頭皮環境が改善したとしても、元々退行期にある髪は休止期を経て抜け落ちるものです。
退行期の期間は2週間から3週間程度、休止期の期間は3〜4ヶ月程度あり、休止期が終わると毛根に新たな髪が生まれ、再び成長期に入ります。

したがって、育毛剤の効果が十分に実感できるまでには3〜6ヶ月程度の期間が必要と考慮しておきましょう。

適量を頭皮全体に使う

育毛剤は局所的に使用する発毛剤とは異なり、頭皮全体に使用するものです。

育毛剤には頭皮環境を良好に保持し抜け毛を予防する作用があります。

頭皮や頭皮の下を巡る毛細血管は全てつながっているため、頭皮の一部のみに育毛剤を使用しても十分な効果が得られません。
脱毛の有無に関係なく育毛剤を頭皮全体に使用することで、効率的に血流の改善や毛母細胞の活性、ターンオーバーの正常化を促せます。

また、育毛剤の説明書に記載されている使用量を守ることも大切です。

育毛剤は多く塗布したからといって効果が強まるわけではありません。適切な量を守ることが着実な効果につながるでしょう。

頭皮マッサージをしながら使う

育毛剤は頭皮マッサージで血行を促進させながら行うと頭皮への浸透が良くなります。

マッサージのポイントは指の腹で優しく行うことです。爪を立てたり強く擦りすぎたりすると頭皮に負担をかけてしまう恐れがあります。

また、薄毛に効くツボとして知られる百会や通天、天柱などを意識してマッサージを行うと、より血流が良くなるでしょう。

  • 百会:両耳をつないだ線の中央部分
  • 通天:百会から左右に指2本分離れた部分。
  • 天柱:うなじにある2本の太い筋肉の外側部分。

育毛剤を塗布しながら各ツボを5秒から10秒かけて押していくことをおすすめします。

市販の育毛剤の効果を高める心がけ

育毛剤の効果を高めるには、頭皮環境を良くするための生活習慣の改善も重要です。生活習慣の改善はAGA治療の効果を強める上でも大切な心がけとなります。

規則正しい生活習慣を送る

起床時間と就寝時間が定まった規則正しい生活は育毛剤の効果を強めるものです。

髪を作る細胞を含めたあらゆる細胞の修復や活性は、睡眠中に分泌される成長ホルモンが担います。

成長ホルモンが最も分泌される時間帯は深い眠りが訪れる入眠後の3時間です。したがって、髪の成長や頭皮の新陳代謝にはスムーズな入眠が欠かせません。

寝入りの睡眠の質を高めるには、1日を24時間とする体内時計のリズムに沿って生活することが大切です。
なぜなら、代表的な睡眠物質である「メラトニン」は体内時計に則って、起床してから14〜16時間後に分泌される規則性を持っているからです。

規則正しい生活は睡眠の質を高め、健全な髪と頭皮の維持につながります。

頭皮環境が整えば、育毛剤の効果がより得やすくなるでしょう。

栄養バランスの良い食事を摂る

育毛剤による効果が十分に得られる良好な頭皮環境に栄養の摂取は欠かせません。

毛母細胞の分裂や頭皮の新陳代謝は血液によって運ばれる栄養・酸素をもとに行われるものです。

特に、良質なタンパク質の摂取は最も重要といえます。

なぜなら髪の8〜9割を構成する「ケラチン」や頭皮の主成分である「コラーゲン」はタンパク質であるためです。
また、ケラチン・コラーゲンの合成にはビタミン類、血によって酸素が運ばれるには鉄分が必須となります。

アミノ酸バランスの良い良質なタンパク質やビタミン、ミネラルなどを効率良く摂取するには、主菜と副菜をしっかりと取り入れる必要があります。
おにぎりやパン、麺類などの糖質単品は避け、定食スタイルのメニューを心がけると良いでしょう。

頭皮を正しくケアする

育毛剤の効果を最大限に発揮するには適切な頭皮ケアを続け、バリア機能を高めておく必要があります。

頭皮を正しくケアするには、頭皮のダメージとなる習慣を改める意識が必要です。

例えば普段何気なく当たっている紫外線は細胞に有害な活性酸素を頭皮に発生させる引き金となり、毛母細胞や毛乳頭細胞にダメージを与えるものです。
また、シャンプーに含まれる石油由来の界面活性剤は頭皮の皮脂を過剰に洗い流し、乾燥を招きます。

健全な頭皮環境を保つために帽子や日傘などで紫外線対策を行ったり、低刺激のシャンプーを選んだりするように心がけましょう。

アミノ酸系やベタイン系のシャンプーは頭皮と同じ弱酸性の性質を持ち、保湿性に優れているためおすすめです。

市販の育毛剤に関するQ&A

ここで、市販の育毛剤を使用する上でよく上がる疑問を紹介します。

育毛剤に副作用のリスクはある?

医薬部外品である育毛剤は有効成分による劇的な効果がない分、発毛剤と比べて副作用リスクも低い傾向にあります。

育毛剤の副作用として考えられるのは、有効成分によるものではなく添加物によるものです。

多くの育毛剤には有効成分以外に防腐剤や乳化剤、香料や着色料などのさまざまな添加物が使われています。例えばエタノール(アルコール)やパラベン(香料)は刺激が強く赤みやかゆみなどの炎症を伴いやすい成分です。

敏感肌の方や特定の成分へのアレルギーがある方は育毛剤の原材料をよく確認したり体の目立たない部位でパッチテストを行ったりすると良いでしょう。

高い育毛剤のほうが効果が高い?

育毛剤は価格が高いほど効果が期待できるとは限りません。

なぜなら、育毛剤の価格には広告費も含まれているからです。価格の高い育毛剤の中には、費用に占める広告宣伝費の割合が高く原価率が低い製品もあるでしょう。

また先にお伝えしたように、育毛剤の効果を得るには継続的に使用する必要があります。

無理をして価格の高い育毛剤を買うよりは、将来の使用を見据えて長く続けられる価格のものを選ぶ姿勢が大切です。

市販の育毛剤はAGAには効かない!薄毛治療はクリニックへ

市販の育毛剤は新たな髪を生やすものではなく、あくまで今ある髪と頭皮の健康を保持するためのものです。

したがって、進行性の脱毛症であるAGAは育毛剤だけでは治せません。
AGAを本気で改善したいのであれば、クリニックで治療を受ける必要があります。

AGA治療の補助的な役割として育毛剤を使用すれば、効率的に薄毛の改善を目指せるでしょう。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

※本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。

最新記事

  • 薄毛・ハゲ
  • AGA治療
  • その他対策
  • ヘアテクト
もっと見る