筋トレするとハゲるのはデマ?噂の真相や薄毛との関係を徹底解説

筋トレをするとハゲるのか、それともただのデマなのかを解説。薄毛の原因や正しい対処方法などもわかりやすく解説しています。筋トレをしたいけど薄毛が心配な男性の悩みを解決する記事です。

目次

「筋トレするとハゲるらしい」と聞いたことがある方は多いでしょう。筋トレをして体作りをしたいと思ってはいても、「薄毛になるなら…」と思いとどまっている方もいるかもしれません。

筋トレでハゲるならボディビルダーはみんな薄毛のはずだと言われることもありますが、はたして本当に筋トレは薄毛の原因になるのでしょうか。

今回は筋トレと薄毛の関係、髪の毛のボリュームが気になり始めたときに効果的な対策方法などを紹介します。

■ 本記事のサマリ

  • 筋トレが原因でハゲるという医学的根拠はない
    • AGAの原因の男性ホルモンと、筋トレで増える男性ホルモンは異なる
  • 軽度な筋トレや大豆プロテインは、逆に薄毛予防に効果的な可能性もある
  • 薄毛に最も効果的な対策はクリニックの治療
  • 生活習慣見直しや市販薬はあくまで補助的な役割

筋トレが原因でハゲるという医学的根拠はない

結論から言うと、筋トレが原因でハゲることはありません。医学的な根拠はまったくなく、完全なデマと言ってもいいでしょう。

筋トレをするとハゲるという話がネット上を中心に出回ってしまったのは、おそらく筋トレと薄毛に「男性ホルモン」という共通点があるからでしょう。

筋トレをすると男性ホルモンの分泌量が増えることがわかっています。男性が薄毛になる原因のほとんどを占めるAGA(男性型脱毛症)は、男性ホルモンの影響で進行するため、筋トレをするとハゲるという噂が広まってしまったと思われます。

筋トレと薄毛(ハゲる)の関係について

筋トレをいくら行っても、薄毛が進行することはまずありません。運動を始めてから薄毛になったという方がいたとしたら、それは抜け毛が増えた時期と筋トレを始めた時期が偶然重なっただけだと考えられます。

では、筋トレで薄毛になるという噂の原因について、さらに詳しく確認していきましょう。

「筋トレでハゲる」の噂はテストステロンが発端

筋トレを行うことで、テストステロンの分泌量が増加することが分かっています。テストステロンは男性ホルモンの一種であるため、同じく男性ホルモンの影響で進行する薄毛を引き起こすと考えられたのではと推察します。

たしかにテストステロンは薄毛とまったく関係がないわけではないので、筋トレが薄毛を進行させるのではと考えてしまう人が多くいるのでしょう。

薄毛の原因はジヒドロテストステロン(DHT)

薄毛の原因となるのはテストステロンではなく、テストステロンに5αリダクターゼ(5α還元酵素)が働くことで作られるジヒドロテストステロンです。

ジヒドロテストステロンは、TGF-β や DKK1などの脱毛を促す物質の産生を誘導して毛母細胞の増殖を抑制する働きがあるため、悪玉ホルモンとも呼ばれています。

一方、筋トレを行うことで増えるテストステロンは、ジヒドロテストステロンとはまた別の男性ホルモンのため、薄毛を進行させることはありません。

しかし、「ジヒドロテストステロンの材料となるテストステロンが増えれば、ジヒドロテストステロンも作られやすくなるのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、テストステロンの量だけが増えても、5αリダクターゼの量が変化しなければジヒドロテストステロンは作られません。

また、ジヒドロテストステロンは男性ホルモンレセプターと呼ばれる受容体に結合しなければ脱毛を促進させないため、男性ホルモンレセプターの量も同時に増加しなければ薄毛の症状が進むことはないのです。

薄毛は筋トレではなく遺伝的要因が大きい

薄毛になるのは、遺伝的要因が大きいことも知られています。

血のつながりがある家族に薄毛の方がいる場合、自分も薄毛になる確率が高くなることがわかっているのです。

一説によると、母方の祖父が薄毛の場合は約75%、母方の祖父と曾祖父の両方が薄毛の場合は約90%の確率で自分も薄毛になると言われています。
薄毛の原因となる遺伝子の一部は母親から貰うX染色体上に存在するため、母方の祖父や曾祖父が薄毛だと遺伝しやすくなることが特徴です。

このように、実のところ薄毛の原因は遺伝的要因が多くを占めており、筋トレによる影響は限りなく小さいと考えられます。

筋トレ後のプロテインが薄毛(ハゲる)の原因になる?

筋肉の肥大を効率よく行うためにプロテインを飲まれている方も多いのではないでしょうか。プロテインはもはや筋トレの必需品ともいえるもの。飲まずに筋トレをするのはもったいないほどです。

しかし、このプロテインにも「薄毛が進行するのでは」といった疑問がもたれることがあります。

「プロテインが原因で薄毛になる」はデマ

プロテインで薄毛になるというのも、実のところ完全なる嘘です。副作用で薄毛になるという話に医学的根拠は一切ありません。

そもそも、プロテインとはタンパク質のことです。仮にプロテインで薄毛になることがあるのなら、肉や魚、卵や納豆、牛乳などタンパク質を豊富に含んでいる食事の摂り過ぎも薄毛につながってしまうでしょう。

しかし、肉や魚を摂ったからといって薄毛になったという話を聞くことはありません。肉や魚はほとんどの人が習慣的に毎日食べているものですが、薄毛を発症している男性の割合は20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%、50代以降では40数%です。

タンパク質の摂取割合と薄毛を発症している割合とに相関性がないことからも、プロテインが原因で薄毛になることはないと考えられます。

※プロテインと薄毛の関係についてはこちらの記事もご覧ください。
プロテインを飲むと薄毛になる?それとも育毛に効果的?頭髪との関係

大豆プロテインは薄毛対策になる可能性も

逆に、大豆プロテインであれば、原因薄毛対策につながる可能性があります。大豆プロテインは、イソフラボンを多く含んでおり、ジヒドロテストステロンが作られるのを抑制する働きがあると考えられているからです。

イソフラボンは女性ホルモンのひとつであるエストロゲンと似たような働きがあり、5αリダクターゼの働きを抑えたり薄毛予防に関係のあるIGF-1を増やしたりすると言われています。

クレアチンでジヒドロテストステロン(DHT)が増える?

クレアチンとは、運動時のパフォーマンス向上が期待できる成分です。筋トレを行う際にプロテインとあわせて飲んでいる方も多いでしょう。

しかしクレアチンは、薄毛を進行させる可能性のある成分です。アミノ酸の一種ではありますが、ジヒドロテストステロンを増加させると言われています。

アフリカで行われたある研究では、ラグビー選手にクレアチンを3週間にわたり補給してもらったところ、ジヒドロテストステロンの増加が確認されました。*

とはいえ、ジヒドロテストステロンの増加が必ずしも薄毛の進行に直結するわけではありません。薄毛はさまざまな原因が複合的にからみあって起こるため、クレアチンの摂取が薄毛の引き金となることは考えにくいでしょう。過剰な摂取でなければ、薄毛の発症を心配しすぎる必要はないと思われます。

*van der Merwe J, et al. Three weeks of creatine monohydrate supplementation affects dihydrotestosterone to testosterone ratio in college-aged rugby players. Clin J Sport Med 19(5):399-404, 2009.

適度な筋トレや運動は薄毛対策になる

毛髪のボリュームが気になっている方にとって、「薄毛を進行させない方法」はもちろん、「薄毛の予防方法」も知りたいところでしょう。

実は、簡単にできる薄毛対策として有名なのが軽度の筋トレなどの運動です。運動といっても、ジムにこもってガッツリ行うようなものではなく、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動、ストレッチなど自宅でもできる簡単なもので薄毛対策が期待できます。

血流が促進される

筋トレや運動が薄毛対策に効果的なのは、体を動かすことによって血流が促進されるためです。

毛髪は、血液から栄養を貰うことで太く長く成長していきます。運動で血流が促進されると、全身に血液がいきわたりやすくなり、毛髪にしっかり栄養が届くようになるのです。

ストレッチを行うだけでも血流量は通常の3倍にも増えるため、薄毛対策にも体を動かす習慣作りを行いましょう。

ストレスの発散につながる

ストレスは薄毛を進行させる原因です。交感神経が常に緊張した状態になるため、血管が収縮して血流が悪くなってしまいます。

筋トレや運動は、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの分泌を増やす効果があるため、ストレス対策に効果的です。体を鍛えるためにガッツリと筋トレを行ってもよいですし、10分程度のウォーキングでも構いません。週に1度体を動かすだけでもストレス解消になります。

車ではなくバスや電車を使って通勤したり、エレベーターではなく階段を使ったりするだけでも1日の歩数が増えるのでおすすめです。

生活習慣を見直すきっかけになる

筋トレや運動が習慣化すると、不規則だった生活のリズムが良くなるケースが多いです。また、健康への意識も高くなり、食事の栄養バランスに気をつけたり、禁酒や喫煙を控えたりなど、生活習慣を見直すきっかけになります。

生活習慣の見直しが、薄毛や抜け毛の改善に直接つながるわけではありません。しかし、健康的な毎日を送ることで、頭皮の環境が良好になり髪にとっても良い状態を保てるのです。

筋トレや運動が薄毛の原因になるケース

筋トレや運動が薄毛を引き起こす医学的根拠はありません。むしろ薄毛対策に効果があることで知られています。

しかし、まれに筋トレや運動が原因で薄毛を引き起こしてしまうことがあるのも事実です。頻繁に起こることではありませんが、抜け毛を増やさないためにも原因について確認しておきましょう。

過度な筋トレや運動

体に過度な負荷をかける筋トレや運動は、かえって毛髪の環境を悪くする可能性があります。強度の高い運動を続けると、活性酸素の量が増えて毛母細胞がダメージを受けてしまうのです。毛母細胞は髪の毛を作り出す働きをしているため、ダメージを受けることで抜け毛が増えるだけでなく、白髪の増加にもつながります。

決して無理な筋トレや運動は行わないようにしましょう。活性酸素は、紫外線や喫煙、ストレスによっても増加します。活性酸素の影響のみで薄毛が進行することは考えにくいですが、原因のひとつとして覚えておいてください。

筋トレや運動後のケア不足

筋トレや運動を行った後は、必ず汗をしっかり拭いて皮膚(頭皮)を清潔に保つようにしましょう。運動後のケアを怠ると、雑菌が繁殖して皮膚トラブルを起こすことがあります。筋トレや運動を行う際は、こまめに汗を拭いて雑菌の繁殖を防ぐことが大切です。

また、汗は臭いやかゆみの原因にもなります。頭皮をかくことが刺激となり、抜け毛が増えてしまう可能性もゼロではありません。運動中はこまめに汗を拭き、終わったら早めにシャワーを浴びてすっきりさせるのが理想です。

薄毛・抜け毛が気になり出したときの対処法

薄毛や抜け毛が気になり始めたら、おそらく多くの方が「薄毛に効くサプリはどれだろう?」「人気の育毛剤を購入したほうがよいのかな?」と考えるかと思います。

しかし、本当に薄毛や抜け毛に効果がある対処法は限られているものです。間違った方法に手を出さず、正しい方法で対処することを心がけてください。

ストレスを溜めない

ストレスを溜めすぎると、自律神経のバランスが乱れて血管が収縮しやすくなり、血流が悪くなってしまいます。ストレスが溜まる前にこまめに発散するように心がけてください。そのためには、筋トレや運動が効果的です。

趣味の時間を作ったり、しっかりと睡眠時間を確保したりするのもよいでしょう。またストレスは、AGAだけでなく円形脱毛症の原因になる可能性があることでも知られています。

円形脱毛症はAGAとは違い、コイン状に抜け毛が発生するものです。自己免疫疾患の可能性も指摘されていますが、ストレスが原因になることも否定できないためストレスは溜めないに越したことはありません。

生活習慣を見直してみる

偏った栄養バランスの食事を続けていると、健康な毛髪が育たずに抜け毛が増えることがあります。栄養バランスのチェックを行うには、農林水産省が公表している「食事バランスガイド」を参考にすると便利です。

また、十分な睡眠を取ることも薄毛や抜け毛対策に効果があります。睡眠中は毛髪の成長に必要な成長ホルモンが多く分泌されるため、質のよい睡眠を取るように心がけることが大切です。とくに夜10時から深夜の2時は、成長ホルモンの分泌が盛んになる時間として知られています。

育毛・発毛ケア用品を試してみる

「ストレスを溜めないように」「生活習慣の見直しを行おう」と言われても、いざ実行しようとすると難しいことが多いのではないでしょうか。また、ストレスケアや生活習慣の見直しはダイレクトな発毛効果がないため、行ったところで目に見える効果が出る保証もありません。

そのため、確実に薄毛や抜け毛の対策を行いたいのなら本格的なケアを始めることをおすすめします。頭皮を良好な状態に保ちたい方は育毛剤を、髪の毛の本数や太さを改善したい方は発毛剤を活用しましょう。

発毛剤は市販のリアップに代表されるミノキシジルという成分が有名です。ミノキシジルは毛髪サイクルを整えて本数や太さを改善する効果があり、4週間使い続けることで9割以上の方が毛髪の改善を実感しています。育毛剤にこのような効果はないため、抜けた髪の毛を復活させたい方は発毛剤を選びましょう。

AGA治療を検討する

市販の発毛剤を使うのもよいですが、気軽に手に入る分、効果はやや弱くなる他、発毛を促す効果のみで抜け毛を抑える効果がないため、薄毛の症状が進行してくると効果不十分になる場合があります。

更に効果的に、自分に合った治療を行うためにはクリニックでAGA治療を行うことがもっともおすすめです。

リアップと同じ成分であるミノキシジルの外用薬はもちろん、より効果の高いミノキシジルの内服薬や、ジヒドロテストステロンが作られるのを抑制し、抜け毛を抑えるプロペシア(フィナステリド)やザガーロ(デュタステリド)なども処方してもらえます。

フィナステリドやデュタステリドの内服薬、ミノキシジルの外用薬は日本皮膚科学会ガイドラインにおいてすべて推奨度A(行うよう強く勧める)に分類されている治療薬です。クリニックを受診することで、より確実に効果的な治療を行えます。

筋トレは薄毛(ハゲ)の原因にならない|気になる方はクリニックへ相談

筋トレが薄毛の原因になることはありません。筋トレと薄毛に「男性ホルモン」という共通点があるため、誤った情報が広まってしまったのだと考えられます。

過度な筋トレは活性酸素を増やす原因となりますが、活性酸素の働きのみで薄毛になることは考えにくいため、安心して筋トレに励んでください。

薄毛の原因は、ほとんどがジヒドロテストステロンの影響で起こるAGAです。AGAの治療は市販の発毛剤でも行えますが、確実で効果的な治療を行いたい場合はクリニックへ相談して適切な治療を始めましょう。

天野 方一 先生

ヘアテクト 顧問医師

日本抗加齢医学会専門医

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

  • 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
  • 本記事の内容は公開日時点の情報となります。 情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。

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