プロテインを飲むと薄毛になる?それとも育毛に効果的?頭髪との関係
プロテインが原因で薄毛にはなりません。むしろ効率的なタンパク質の摂取は育毛に有効です。ただし薄毛の要因がAGAの場合、治癒にはクリニックの受診が必要となります。
「プロテインを飲むと薄毛になる」
「プロテインは育毛に効果的だ」
巷ではプロテインと薄毛について相反する二つの噂がありますが、実際のところ何が真実なのでしょうか。
薄毛を栄養で改善したい方にとって、プロテインが育毛にもたらす影響は理解を深めておきたい課題のはずです。
薄毛とプロテインの関係を知るには、まずはプロテインとは何かを知る必要があります。
本記事ではプロテインの性質や毛髪への働き、AGAとの関係性などを解説します。
■ 本記事のサマリ
- プロテインが原因でハゲることはなく、むしろ育毛効果が期待できる
- 特に育毛におすすめなのは薄毛の原因にアプローチできるソイプロテイン
- ただし過剰摂取は臓器に負担を与えるため要注意
- また、プロテインは薄毛を劇的に改善する効果はない
- 特に男性の薄毛の原因の多くを占めるAGA(男性型脱毛症)を改善したい場合は、クリニックでのAGA治療が必要
プロテインで薄毛になるのはデマ
プロテインで薄毛になる説は本当なのでしょうか。
また、どうしてプロテインでハゲるという説があるのでしょうか。
ここではプロテインと薄毛の関係を解説します。
プロテイン(タンパク質)が原因で薄毛になることはない
結論から言いますとプロテインが原因で薄毛になることはありません。
そもそもプロテインとはタンパク質のことを指します。タンパク質は食物の三大栄養素の一つであり、人体の乾燥重量の4分の3を占める重要な成分です。
またプロテインの由来であるギリシャ語の“proteios”は日本語に訳すと「最も重要な」を意味します。
すなわち、タンパク質は昔から人体にとって最も大切であるとされてきた成分で、頭皮環境を悪化させるものではありません。
ではなぜ「プロテインが薄毛につながる」説が存在するのでしょうか。
この理由にはプロテインが筋トレを彷彿させ、男性ホルモンを増強させるイメージにつながりやすい点にあります。
しかし、薄毛の引き金となる男性ホルモン「DHT」とプロテインにはなんの関係もありません。
また、同様の理由で筋トレが薄毛につながるという噂も根拠がないといえます。
※筋トレと薄毛の関係についてはこちらの記事もご覧ください。
「筋トレするとハゲるのはデマ?噂の真相や薄毛との関係を徹底解説」
むしろタンパク質不足が薄毛を招く
プロテインが薄毛につながるという噂とは裏腹に、タンパク質の不足は薄毛の引き金になる場合があります。
なぜなら髪の主成分である「ケラチン」はタンパク質であり、ケラチンの合成に働く酵素や頭皮の主成分コラーゲンもタンパク質からできているためです。
原料となるタンパク質が不足すると、毛母細胞は髪を作れなくなり、頭皮環境も悪化してしまいます。
近年の調査では、18〜40歳までの脱毛症患者に必須アミノ酸や非必須アミノ酸の顕著な欠乏があることがわかっています。
パスタやパン、おにぎりなどの糖質単品メニューは手軽に取り入れられますが、タンパク質不足に陥りやすく薄毛につながる食生活といえます。
プロテインは育毛効果が期待できる
上記を踏まえると、プロテインは手軽にアミノ酸バランスの良いタンパク質を取り入れられるため、むしろ育毛や頭皮環境の改善に役立ちます。
プロテインのみでは劇的な薄毛の改善は期待できないですが、健康な髪の毛を育てる補助的な効果が期待できるのです。
育毛の効果を実感するには、プロテインを継続的に摂取しましょう。
先にお伝えしたように、タンパク質は人体にとって必要不可欠な栄養素です。
タンパク質の不足がある場合、体に取り入れたタンパク質は第一に生命活動の維持に必要な器官に優先的に届けられ、髪や爪などなくても生活に支障が出ない部位には供給が後回しになります。
プロテインから取り入れたアミノ酸が髪の形成に使われるには、根気よくプロテインの摂取を続けることが大切です。
プロテインの種類|育毛におすすめな種類はどれ?
プロテインには複数の種類があり、初めて取り入れる方は何を選べば良いか迷ってしまうこともあるでしょう。
ここでは、一般的に流通しているプロテイン3種類と育毛におすすめのプロテインを紹介します。
ホエイプロテイン
ホエイプロテインとは原料を乳製品としたプロテインです。ホエイプロテインの特徴は吸収性のよさです。
また、筋肉に使われるアミノ酸の含有率が高いことから筋肉を鍛えるためのエネルギー補給やスポーツのパフォーマンス向上に有効とされています。
牛乳由来なので飲みやすく、コストパフォーマンスに優れているのもメリットです。
カゼインプロテイン
カゼインプロテインはホエイプロテインと同様、乳製品が原料のプロテインです。
カゼインは牛乳に含まれるタンパク質の8割程度を占めています。
カゼインプロテインの特徴は吸収が緩やかなところです。
ホエイプロテインに比べるとエネルギーに変換されにくい性質ですが、満腹感が得られるためダイエットや健康維持のための食事制限に用いると良いでしょう。
ソイプロテイン
ソイプロテインとは大豆由来のプロテインです。
ソイプロテインの特徴は長時間かけて体内に吸収されるところにあります。
また、美肌効果のあるグルタミン酸や成長ホルモンの分泌を促すアルギニンなどが豊富に含まれているのもソイプロテインの特徴です。
カゼインプロテインと同様、腹持ちが良いためダイエットに適しています。
育毛にはソイプロテインがおすすめ
プロテインの種類は先ほど紹介したもの以外にも複数ありますが、育毛におすすめなのはソイプロテインです。
ソイプロテインの原料である大豆には男性と女性の薄毛に効くポリフェノール「イソフラボン」を豊富に含んでいます。
イソフラボンはAGA(男性型脱毛症)の引き金になる体内の酸化酵素を抑制し、男性の薄毛改善をサポートします。
また、イソフラボンは女性ホルモン「エストロゲン」と分子構造が似ており、エストロゲン不足で起こる女性の薄毛に対してもエストロゲンの代替として作用することで脱毛の改善をサポートするものです。
そのほか、イソフラボンには体内の活性酸素を除去する抗酸化作用があり、頭皮環境の改善にも有効です。
薄毛の改善にプロテインを用いるなら、育毛にメリットの多いソイプロテインを選びましょう。
育毛効果アップも!プロテインの理想的な摂り方
育毛に効果のあるプロテインですが、効果的な飲み方はあるのでしょうか。
プロテインの飲むタイミングや取り入れ方を解説します。
最適な飲むタイミング
プロテインは飲む時間帯によって吸収率が変わります。タンパク質が吸収されやすいタイミングを知っておきましょう。
朝起きてすぐ
プロテインは朝起きてすぐに飲むと吸収率が上がります。
就寝中はタンパク質を原料とする成長ホルモンが全身の細胞の再生や修復を行う時間帯です。
またホルモン分泌の指令を出す脳へブドウ糖を輸送する際にもタンパク質が使われます。
朝起きた瞬間の体は血糖が下がりタンパク質も枯渇した、いわばガソリン不足の状態です。
タンパク質の吸収率を高めたい場合、体が栄養を欲する起床後の1時間以内にプロテインを取り入れると良いでしょう。
筋トレや運動の直後
筋トレや運動をした直後、体内ではダメージを受けた筋肉を修復するためにタンパク質の合成が盛んに行われます。
特に運動後30分以内は体がプロテインを効率的に吸収できるタイミングです。
プロテインの摂取に併せ、ビタミンやミネラルなども補うと効果が強まるでしょう。
空腹のとき
空腹時は取り入れた栄養を吸収しやすいタイミングです。
小腹が空いたとき、甘いおやつの代わりにプロテインを用いると健康的に育毛を目指せます。
また、プロテインでお腹が満たされると余計なカロリーを摂取せずに済むためダイエットにもおすすめです。
就寝前
就寝前のプロテイン摂取は、寝ている間の細胞の修復をサポートします。
先にお伝えしたように、細胞の修復を行う成長ホルモンの原料はタンパク質です。
したがって就寝前のタンパク質補給は成長ホルモンの合成に合理的といえます。
寝る30分から1時間前のプロテインの摂取は効率的にタンパク質を取り入れられるのでおすすめです。
おすすめの飲み方
プロテインだけでも育毛効果がありますが、さらに吸収を高めるためにおすすめな取り入れ方を紹介します。
髪に良い栄養素と一緒に摂取する
髪の形成はタンパク質が分解されたり再合成されたりして行われますが、一連の代謝にはビタミンやミネラルのサポートが不可欠です。
そのため、プロテインによって体内のタンパク質が満たされると、プロテインを吸収して活用するためにビタミンやミネラルの消費量も必然的に上がります。
したがって、プロテインは他の栄養素と一緒に摂取すると効率的に体内に吸収されやすくなります。
育毛をサポートする栄養素として、プロテインと併せて摂りたいものは次のとおりです。
プロテインと併せて摂りたい栄養素
以上の栄養素を食事から取り入れることで、育毛効果の向上が期待できます。
食事からの摂取が難しい場合、サプリメントを活用してみても良いでしょう。
水やお湯に溶かして飲む
プロテインは水かお湯に溶かして飲むのがおすすめです。
プロテインの種類によっては80度前後で固まる場合がありますが、ぬるま湯程度のお湯で溶いたプロテインは冷水で溶いたものよりも体内への吸収が良くなります。
また、プロテインの味が苦手な方にはジュースやスポーツドリンク、牛乳などで割る場合がありますが、糖質や添加物の取り過ぎにつながるため注意が必要です。
特に牛乳は鉄や亜鉛などのミネラルが体内に吸収されるのを阻害して、ヘモグロビンの低下から生じる低タンパク血症を引き起こす恐れがあります。
タンパク質の吸収を阻害しないためにも、余分な成分が含まれていない水やお湯でプロテインを飲むようにしましょう。
プロテインに関する注意点
プロテインは効率的にタンパク質を摂取できるアイテムですが、プロテインによる効果を過信することも良くありません。
過剰な摂取や過度な食事制限はかえって健康を害する恐れがあります。プロテインに関する注意点を見ていきましょう。
過剰に摂取しない
プロテインは牛乳由来とはいえ、天然の食物ではありません。
栄養補給を目的に作られたプロテインには、他の食べ物と比べると高濃度のタンパク質が含まれています。
そのため、プロテインの過剰な摂取は、腎臓や肝臓などの器官に負担を与え、機能を低下させてしまう恐れがあるのです。
また、タンパク質が体に良いからと一度に大量に摂取しても、私たちの体が一度に吸収できるタンパク質量には限りがあります。
体質によって差異はありますが、20gから40g程度が一食におけるタンパク質の摂取目安量です。
体内に吸収されなかった余剰分のタンパク質は尿として体外に排泄される他、体内で脂肪に変換されてしまうものもあります。
プロテインを摂取する際は一度に摂りすぎず、少量ずつ小分けに摂取する方が体内に吸収されやすくなるため、おすすめです。
食事からもしっかり栄養を摂る
プロテインはあくまで栄養補助食品なので、第一に優先すべきは食事からの栄養摂取です。
ダイエット中の方にはプロテインを一食に置き換える場合がありますが、健康に悪影響を及ぼす恐れがあるためおすすめできません。
また、プロテインは種類に応じて含まれるアミノ酸が異なります。
例えば、ソイプロテインはタンパク質の含有量が高い一方、システインやメチオニンなどの含硫アミノ酸が少ない特徴があります。
食事からのタンパク質摂取を怠り特定のプロテインによるタンパク質摂取に偏ると、アミノ酸バランスが崩れてタンパク質の吸収が非効率になります。
飲んでいるプロテインの主原料とは違ったタンパク質を肉や魚、卵などから十分に取り入れる習慣が大切です。
プロテインでAGAが改善されることはない
ここまでプロテインによる育毛効果についてお伝えしてきましたが、前述の通りプロテインは薄毛を劇的に改善する効果は持ちません。
特に、男性の薄毛の原因のほとんどを占めるAGA(男性型脱毛症)はプロテインの摂取では改善されません。
なぜならAGAには遺伝的な要因があるためです。
AGAは主要な男性ホルモン「テストステロン」が体内の酸化酵素と結合して発症します。
テストステロンが酸化酵素と結合してできるのが、脱毛因子の前駆体となるジヒドロテストステロン(DHT)です。
このDHTは男性ホルモン受容体と結合して毛母細胞にダメージを与える脱毛因子を生成します。脱毛因子の影響で抜け毛や軟毛が進行するのがAGAの症状です。
AGAの発症率を左右する酸化酵素の活性度や男性ホルモン受容体の感受性は遺伝によって引き継がれます。
したがって、プロテインで栄養状態を整えてもAGAを根本的に治すことはできないのです。
AGAによる薄毛を改善したい場合、クリニック等でのAGA治療が必要となります。既に薄毛が気になりだしている方は、まずは無料相談等を受けてみることをおすすめします。
プロテインと髪にまつわるQ&A
ここで育毛のためにプロテインを取り入れたい方々によく挙がる疑問を紹介します。
プロテインとAGA治療薬の併用は問題ない?
プロテインとAGA治療薬の併用には特に問題はありません。
むしろ、プロテインによって体内のタンパク質が満たされると、内服薬が適切な効果を発揮しやすくなります。
AGA治療薬に限らず薬剤が効き目を発揮するには、薬の有効成分がタンパク質「アルブミン」と結合して血中を移動したりあらゆる酵素や受容体に働きかけたりする過程が必要です。
タンパク質不足によりアルブミンが減少すれば薬剤の成分が遊離した状態となり、薬の効き目が強く出過ぎてしまう恐れがあります。
また酵素も受容体もタンパク質を主原料とするため、タンパク質の不足は薬の効果を阻害しかねません。
AGA治療を効率的に進めるためにもプロテインの摂取は有効です。
内服薬とプロテインの併用に不安や心配がある場合、プロテインの摂取方法や摂取量などを医師に相談してみると良いでしょう。
プロテインは白髪改善にも効果的?
プロテインの摂取が白髪の改善に有効であると一概には言えません。
なぜなら、白髪が増える要因にはタンパク質不足の他にも血行不良や加齢、遺伝などがあるからです。
白髪の要因にタンパク質不足がある場合、プロテインの摂取により改善を目指せます。
そもそも髪の毛の主成分であるケラチンは、18種類のアミノ酸から構成されており、髪を黒くするメラニンの原料となるチロシンもケラチンを構成するアミノ酸のひとつです。
チロシンは優先的にケラチン合成に使われ、残りがメラニンの合成に使われます。
したがって、十分なタンパク質の摂取は白髪を対策すると同時に健康的な髪を育てることにも役立ちます。
プロテインを飲むと髪質が良くなる?
プロテインで髪に必要なタンパク質を補うと、髪のツヤ・ハリの回復を目指せます。
ただしプロテインによる効果は即効性のあるものではなく、地道に摂取を続けていくことで徐々に髪質の変化が感じられるものです。
髪が伸びる速さは一般的にひと月に1cm程度といわれています。
タンパク質が満ち足りたことで頭皮環境が改善してもすでに髪の毛として生え出ている部分は変わりません。
タンパク質摂取による髪質の変化を感じるには、半年以上は継続して摂取すると良いでしょう。
プロテインは育毛効果が期待できる!AGAの場合はクリニックへ
プロテインは髪に必要なタンパク質を効率的に取り入れるのに役立ちます。
日頃の食生活を補完する栄養素として、日常的に取り入れることで育毛を目指せるでしょう。
ただし、AGAによる薄毛をプロテインで治すのは困難です。
AGAが気になる場合は専門のクリニックを受診することをおすすめします。
なお、AGA治療薬とプロテインの併用には問題がありません。
もしAGA治療薬とプロテインを同時に摂取することが不安な方は、医師に相談してみると良いでしょう。
天野 方一 先生
ヘアテクト 顧問医師
日本抗加齢医学会専門医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
- 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
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