薄毛・抜け毛の原因はAGA以外にもある?脱毛症の種類や症状
髪の毛が薄くなったからといって必ずAGAだとは限りません。しかしAGA以外の薄毛は原因の特定が難しいでしょう。「あれ?」と思ったらAGA治療専門のクリニックに相談してみてください。
男性の薄毛の原因でもっとも多いのがAGA(男性型脱毛症)です。しかし、なかにはAGA以外の原因で薄毛になったり、抜け毛が増えたりする方もいます。そのため薄毛・抜け毛の治療や対策をするには、原因を特定しなくてはなりません。
そこでこの記事では、AGAの症状、原因、治療法を紹介したうえで、AGA以外の脱毛症についても詳しく解説していきます。
■ 本記事のサマリ
- AGAは、額や頭頂部から薄毛がゆっくりと進行していく
- 円形脱毛症は、頭髪の様々な場所で突然円形に毛髪が抜ける
- 脂漏性脱毛症は、皮膚の脂が多い部分の毛が薄毛になる
- 上記の他にも、薬の副作用や頭皮への強い圧力等が原因となり起こる薄毛もある
- 日本人の殆どの薄毛の要因はAGAと言われているが、ゆっくりと進行するため気付きにくい
- もしかして薄毛?と思った段階で、専門家のいるクリニックに相談することを推奨
薄毛の原因はAGA以外にも!主な脱毛症は3種類
男性が薄毛になる原因はさまざまですが、主な脱毛症としてあげられるのが以下の3種類です。
- AGA
- 円形脱毛症
- 脂漏性脱毛症
AGAと円形脱毛症は、多くの方が一度は耳にしたことがあるでしょう。脂漏性脱毛症はあまりなじみがない方もいるかもしれませんが、深刻な症状を引き起こすことがあるため知っておきたいところです。
ここからは、主な脱毛症である、「AGA」「円形脱毛症」「脂漏性脱毛症」それぞれの特徴や治療法などについて解説していきます。
AGA(男性型脱毛症)の症状・原因・治療法
はじめにAGA(男性型脱毛症)の症状や原因、治療法についてお伝えしていきます。
AGAは額や頭頂部からゆっくり進行する
AGAの主な症状の特徴は次のとおりです。
■AGAの症状の特徴
- 額(ひたい)の生え際が後退する
- 頭頂部が透けてくる
- 抜け毛の本数が増える
- 毛髪が細く短くなる
日本皮膚科学会は「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年度版」のなかで、AGAを思春期以降に始まり徐々に進行する脱毛症と定義しています。
そしてAGAは、外見上の印象を大きく左右してQOL(生活の質)に与える影響は大きいと指摘。この病気を治療する意義はまさに外見の印象を変えて、QOLを改善することにあるといえます。
また、思春期以降から始まるので、10代で兆候が出てもおかしくありません。若くても起こりうることも、AGAの重要な特徴です。
※AGAの見分け方についてはこちらの記事もご覧ください。
「AGA(男性型脱毛症)の6つの見分け方!薄毛・抜け毛の原因や原因」
AGAの原因は男性ホルモンや遺伝
AGAの原因は男性ホルモンと言われています。
男性ホルモンは骨や筋肉を発達させ髭や胸毛を濃くしますが、頭髪には悪い影響を与えることがあります。これは男性ホルモンによって、前頭部と頭頂部の男性ホルモン感受性の毛包に軟毛化現象が起きるからです。
毛包とは、髪の毛の根元の部分の毛根を包む皮膚の組織のことです。これが軟毛化現象を起こすと、髪は太く長くなることができなくなるので、細く短いうちに抜けてしまいます。
また遺伝は、AGAの絶対的な原因ではないとされていますが、大きな要因のひとつです。先ほどお伝えした症状があり、親族にAGAの方がいる場合は、AGAである確率が高くなります。
AGAの一般的な治療法は投薬治療
日本皮膚科学会が推奨するAGAの主な治療法は次の4種類です。
- 外用薬(塗り薬)
- 内服薬(飲み薬)
- 植毛
- LED照射やレーザー照射
このなかで一般的な治療法であり、なおかつ有効性が高いと期待できるのは外用薬と内服薬です。AGA治療の外用薬ではミノキシジル、内服薬では、ミノキシジルタブレット、フィナステリド、デュタステリドなどが用いられるのが一般的であり、効果が期待できる方法です。
円形脱毛症の症状・原因・治療法
円形脱毛症は、頭髪の一部がゴッソリ抜けてしまう病気で、放置すると広がってしまいます。詳しい症状や原因、治療法について確認していきましょう。
円形脱毛症は頭髪のどこの部分でも起きる
円形脱毛症の症状は、500円玉くらいの大きさの円形に髪の毛が抜けてしまうものです。これを脱毛斑といい、頭髪のどこにでも起きる可能性があります。
AGAは額の生え際や頭頂部から徐々に抜けていくのに対し、円形脱毛症の方は、ある日突然脱毛斑に気がつきます。
そして脱毛斑は複数個できたり、1つが大きくなったりします。すべての頭髪が抜け落ちてしまったり、全身の毛髪まで抜けてしまうこともあるのです。
円形脱毛症の主な原因は免疫
円形脱毛症の原因は、髪の毛の元となる毛根が炎症によって破壊されてしまうことです。毛根に炎症が起きるのは、免疫のシステムに異常が生じるからと考えられています。
本来、免疫は体を守るもので、免疫の役割を担っているリンパ球は体内に細菌やウイルスが侵入するとそれを攻撃します。ところが免疫システムに異常が生じると、リンパ球が誤って毛根を包む毛包を攻撃してしまうのです。その結果、毛根に炎症が起きて抜け毛を引き起こします。
円形脱毛症の治療は難しい
皮膚科学会は「円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版」をつくっていますが、このなかにAレベル(行うよう強くすすめる)の治療法はありません。
ガイドラインは円形脱毛症の治療について「難渋する」「対処療法である」「エビデンス(医学的根拠)のある治療法はない」と指摘していて、治療が難しい病気であることがわかります。
Bレベル(行うようすすめる)の治療法には次のものがあります。
- ステロイド注射
- ステロイド外用
- 免疫療法
- かつらの使用
主な治療は、ステロイドを円形脱毛症が起きている部分に注射したり、塗ったりすることになります。
かつらの使用がBレベルの治療になっていることを意外に感じる方もいるでしょう。かつらが治療法になりうる理由について日本皮膚科学会は「かつらは円形脱毛症の病勢に対して悪影響がなく、紫外線や外傷防御の点で推奨できる」としています。
脂漏性脱毛症の症状・原因・治療法
脂漏性脱毛症は、皮膚の脂(あぶら)が原因で起きる抜け毛です。症状や原因、治療法について確認していきましょう。
脂漏性脱毛症は皮膚の脂が多い部分の毛が抜ける
脂漏性脱毛症は皮膚の脂が原因で起きるので、皮膚の脂が多い部分の毛が抜けます。そのため、高い確率で額の生え際か頭頂部から薄毛になっていくAGAとは、髪の毛の抜け方が異なります。
また脂漏性脱毛症では、円形脱毛症のようにくっきりと円形に抜け落ちることがないので、両者の違いは明らかです。
脂漏性脱毛症の主な原因は菌による炎症
皮脂には、体を外敵から守るバリアの役割があります。そのため、皮脂は体にとって重要なものなのですが、異常に分泌されてしまうと、皮膚にカビの一種であるマラセチアという菌が繁殖し、皮膚に炎症を起こします。
これを脂漏性皮膚炎といい、脂漏性脱毛症を引き起こす原因となるのです。
脂漏性脱毛症の主な治療法は食事療法
脂漏性脱毛症の治療では、皮脂の分泌を抑えることを目指します。脂っこい食べ物は皮脂の原料になってしまうので、食事療法が有効になります。
また、ビタミンB2やB6は皮脂の分泌に関与していることから、これらを多く含む食材を食べることも有効です。サプリメントで補給してもよいでしょう。
またストレスから皮脂の量が増えることがあるので、ストレス解消や良質な睡眠を取ることも治療になります。それでも脂漏性脱毛症が治まらない場合は、ステロイドを外用で使う(塗って使う)治療が行われます。
AGA以外の薄毛はまだある|さまざまな脱毛症
ここまで主な3つの脱毛症について詳しく解説してきました。しかし、これ以外にも脱毛症は存在します。ここでは、以下の5つの脱毛症についてお伝えしていきます。
- びまん性脱毛症
- トリコチロマニア
- 薬剤性脱毛症
- 圧迫性脱毛症
- 牽引性脱毛症
それぞれを詳しく解説していきましょう。
びまん性脱毛症
びまんとは広がる現象のことです。びまん性脱毛症では、頭髪全体のボリュームが減ったり、髪の毛のわけ目が目立つようになったりします。女性に多い症状ですが、男性にも起こることがわかっています。
びまん性脱毛症の原因は確実に特定されているわけではありませんが、ホルモンバランスの乱れ、頭皮への血流不足、食生活の悪化などが影響しているとみられています。
したがって、ホルモンバランスの異常、血流量不足、食生活の悪化がみられたら、それらを改善することが治療になります。医師によっては外用薬を処方することがあります。
トリコチロマニア
トリコチロマニアは抜毛症、抜毛癖と訳され、自分で髪の毛を抜いてしまう精神疾患です。強いストレスや強い心理的な葛藤が引き金になってそのような行動を起こします。
薬剤性脱毛症
薬剤性脱毛症は、別の病気を治すための薬によって生じる脱毛症です。薬の副作用と考えてよいでしょう。薬剤性脱毛症の原因で最もよく知られているのが抗がん剤です。
薬剤性脱毛症の多くは、それを引き起こしている薬の服用をやめることで治ります。抗がん剤の効果が出て治療が終わると、自然と髪の毛が生えてくることがあります。
圧迫性脱毛症
圧迫性脱毛症は、頭皮に強い圧力がかかって生じる脱毛現象のことです。工事現場で1日中ヘルメットを被っていたり、水泳で長時間水泳帽を被っていたりすると、圧迫性脱毛症を起こすことがあります。
これは圧迫によって頭皮に十分な血液が流れず、髪の毛の細胞に悪影響を与えているからと考えられます。
牽引性脱毛症
牽引性脱毛症は、髪の毛を強く引っ張りすぎて抜ける癖がついてしまう症状です。女性に多い症状で、髪の毛を強く引っ張って縛っていると起きることがあります。髪の毛に強いストレスを与えることで起きているので、引っ張らないようにすると改善します。
今すぐチェックすべき薄毛の前兆
薄毛や抜け毛治療は早いほどよいとされています。薄毛も抜け毛もみてわかる現象なので、その前兆はつかみやすいはずです。しかし実際には、ゆっくりと進行する脱毛症もあるため、専門家でないと判別しづらく、かなり進行してから気づく方も少なくありません。
そこで今すぐチェックすべき薄毛の前兆を紹介します。
◆今すぐチェックすべき薄毛の前兆
1つでもあってはまった方は「脱毛症の可能性がある」と警戒してください。そして複数個あてはまったら、まずは自己判断せずに、専門家のいるクリニックへ相談してみましょう。
今日からできるセルフ薄毛対策4選
「あれ?」と感じたら、クリニック受診と合わせてすぐにできる対策にもとりかかりましょう。薄毛の原因がAGAの場合、残念ながら下記の対策では根本的な改善は期待できませんが、治療の補助的な役割を果たしてくれます。ここでは次の4つの方法を紹介します。
- 食生活を改善する
- 生活習慣を見直す
- 適度にストレスを発散する
- 髪や頭皮を正しくケアする
いずれも今日からできるものばかりなので、参考にしてはじめてみてください。
薄毛対策①食生活を改善する
髪の毛も細胞でできています。そしてすべての細胞は、血液から栄養と酸素をもらって生きています。栄養は体外から摂るしかなく、つまり食事が重要です。
外食やコンビニの食事が続くなど食生活が乱れていると、髪の毛の発育に悪い影響を与えてしまいます。栄養バランスを考えたメニューを心がけたり、食べすぎたりしないように気をつけましょう。
薄毛対策②生活習慣を見直す
食生活以外の生活習慣も重要です。運動不足の方は適度な運動を習慣づけたり、慢性的な睡眠不足の方は、しっかり睡眠時間を確保したりなどを心がけましょう。
生活習慣の悪化は生活習慣病の原因になります。特に心臓や血管などの血液に関する病気を発症すると、髪の毛の細胞にも栄養や酸素が届きにくくなるので抜け毛を誘発する可能性があります。
薄毛対策③適度にストレスを発散する
強いストレスはホルモンバランスを崩します。そしてホルモンは、髪の毛の成長に深く関与しています。そのため過度なストレスは、薄毛や抜け毛の原因となってしまうのです。
「最近ストレスが溜まっているな」と感じたら、体をゆっくり休めたり、趣味の時間を作ったりなど、意識的にストレス発散の機会を設けてみてください。
薄毛対策④髪や頭皮を正しくケアする
髪や頭皮を日頃から正しくケアすることも重要です。刺激が強いシャンプーを使っていたり、髪の毛をセットするために大量の整髪剤を使ったりなどは、髪や頭皮に大きな負担をかけることになります。
また、紫外線も頭皮に悪影響を与えます。日差しが強い日は帽子を被るなど、頭皮に紫外線が当たらないように気をつけましょう。
男性の3割が発症!薄毛の原因9割がAGA
ここまで薄毛・抜け毛の原因として「AGA」と「AGA以外」を紹介してきました。
しかし実際のところ、男性を苦しめている原因の大半はAGAです。日本では、男性の3割がAGAを発症し、薄毛の原因の9割がAGAであるともいわれています。
先ほど紹介した「今すぐチェックすべき薄毛の前兆」を確認して、あてはまる項目が複数個あったら、まずは「AGAかもしれない」と疑ったほうがよいでしょう。
そして、AGAの場合、一度発症すると生涯進行し続け、生活習慣の改善では治癒できないという点にも注意しておきましょう。薄毛の原因がAGAである場合、クリニックでの治療が効果的です。少しでも不安を覚えるようであれば、まずはAGA治療専門クリニックに相談することをおすすめします。
薄毛の原因はAGA以外にも!まずは原因を知ろう
男性の薄毛の原因はAGA以外にもあり、その原因によって治療方法が異なります。そのため、まずは薄毛や抜け毛の原因を特定することが重要です。
どんな原因であっても、その状態で放置していると、薄毛や抜け毛はどんどん進行していきます。しばらくすれば治るだろうと油断するのではなく、薄毛や抜け毛が気になりはじめたら、まずはクリニックへ相談してみましょう。
クリニックへ相談すれば、医師が原因を特定して適切な治療方法を示してくれます。大切な髪を守るためにも、すぐに行動に移しましょう。
天野 方一 先生
ヘアテクト 顧問医師
日本抗加齢医学会専門医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2021年よりへアテクト顧問、2022年より理事長に就任。日本腎臓学会専門医・指導医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。
- 本記事はHAIRTECTスタッフが天野医師にインタビューを実施し、スタッフが内容をまとめたものとなります。
- 本記事の内容は公開日時点の情報となります。 情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。